2026年の店舗市場状況と「物件枯渇」の背景

空室率は低下し、賃料は上昇

現在はコロナ直後よりも店舗物件の空きは減少しており、物件不足の状態にあります。2020年〜2022年頃のコロナ禍で一気に上昇した東京都心の空室率も、現在は2%〜3%台まで低下したと言われています。インバウンド(訪日外国人客)の爆発的な増加と国内消費の回復により、主要駅前や繁華街での出店意欲が非常に強まっており、成約賃料が2019年のコロナ前水準を上回るエリアも増加しています。

なぜ「空き店舗物件」が増えないのか?

「原材料費や燃料・光熱費、人件費の高騰で経営が苦しいはずなのに、なぜ店舗は空かないのか」という疑問の背景には、既存店の経営努力があります。コロナ禍を乗り越えた店舗は、効率的な経営にシフトして存続を図っています。また、閉店するにしても多額の原状回復費がかかるため、「閉めたくても閉められない」状況もあります。さらに、建築資材や人件費の高騰で新築ビルや店舗物件の着工が遅れたり、新規供給される大型ビルの賃料が高止まりしていること、資金力のある大手チェーンが好立地の物件を抑えてしまうことも、中小チェーンや個人店が手を出せる物件を減少させています。つまり、「優良物件の枯渇」状態と言えます。

なぜ「居抜き」が主役となるのか?

建築コストの「天井知らず」な上昇

出店できる貸店舗物件をを探す企業や個人が溢れる中、立ちはだかる最大の障壁がコストの上昇です。業種・業態にもよりますが、店舗内装費は、ウッドショックや鋼材・設備機器・物流コストの増大に加え、建設業界の「2024年問題」による職人不足と工期の長期化により、今や30~50%上昇しているケースも珍しくありません。この状況下でのスケルトン物件での出店は、「予算が足りず出店を断念する」「内装費回収に想定以上の年月がかかりキャッシュフローが圧迫される」といった極めて高いリスクを伴います。そのため、既存設備を最大限活用できる居抜き物件が、テナントにとって「現実的な解」となってきます。

水面下で進む「居抜き物件」の圧倒的な争奪戦

新品の厨房機器の価格や内装工事費用が以前より値上がりしている現在、出店者は初期投資を抑えるため「居抜き」物件を希望します。その結果、解約予告が出た瞬間にあらかじめリストアップしていた希望者に情報が回り、一般公開される前に申し込みが入る「水面下での成約」が当たり前の光景となっています。

居抜き物件が仲介会社にもたらす「3つの価値」

このような「水面下物件」を掘り起こし、居抜き物件を重視することは、仲介会社自身にも大きなメリットをもたらします。

1. 成約スピードの圧倒的な速さ

スケルトン物件は内装業者の選定や相見積もり、設計、着工とオープンまでに最低数ヶ月を要しますが、居抜き物件は「設備がそのまま使える」ことが最大の武器です。「この厨房レイアウトならすぐにでも営業できる」と判断されれば、申込から契約、引き渡しまでのスピードが劇的に上がり、回転率を重視する仲介会社にとって非常に効率の良い商材となります。

2. 「三方良し」によるリピート顧客の獲得

解体費用を浮かせ造作譲渡料を得たい「前テナント」、安く早く開きたい「新テナント」、ダウンタイムを最小限に抑えたい「貸主(オーナー)」。この三者の利害パズルを解き明かすことで顧客から絶大な信頼を寄せられ、次の出店の際も声がかかるようになります。

3. 専門性による「他社との差別化」

居抜き物件の仲介は、給排水の容量やダクトの吸排気、リース物件の混入など、目に見えないリスクを見抜く力も必要です。これらをプロとして正確に診断できれば、価格競争に巻き込まれない「選ばれる仲介会社」になれるでしょう。

さいごに

ウェブの普及により、「物件情報を右から左へ流す」だけ、あるいは「サイトに載っている物件を提案する」だけの仲介は価値が低下しており、それだけでは他社に勝てません。 これからの時代に真に求められるのは、いわば「店舗物件のポテンシャルを再定義する力」と言えます。例えば、一見使いにくそうな居酒屋の居抜き物件をデリバリー専門店や別業態のテナントに提案したり、老朽化した設備をリニューアルするためのコストを算出して造作譲渡価格の適正化を交渉したりする柔軟な発想が必要です。同時に、「解約予定の情報をいかに早く掴むか(前テナントとの接点)」や、「居抜きでの造作譲渡交渉」をセットで行う提案力が問われています。

工事費高騰などの逆風を嘆くのではなく、むしろ「居抜き物件という付加価値」を提供する最大のチャンスと捉え直すとよいかもしれません。