常識をくつがえす、客が入れない店舗“ダークストア”とは?

はじめに御社の事業内容を教えていただけますか。

当社はフードデリバリー事業「foodpanda(フードパンダ)」と、食品や日用品などを“ダークストア”と呼ばれる配達専用ストアから30分以内にご自宅まで即時配達する「pandamart(パンダマート)」という事業を行っています。

“ダークストア”とは何ですか?

注文を受けた配達員(ライダー)が立ち寄って商品をピックアップする、いわゆる倉庫のような店舗のことです。日持ちする食品や冷凍食品、日用品、文房具など、一店舗当たり約1,500種類を取り揃えています。
一般のお客様はアプリから注文するだけで、入店はしません。

“ピッカー“と呼ばれるスタッフが、ストア内で注文品をカゴ詰めする様子。一般客が来店しないので特別な造作は不要。通路を狭くできる分、コンビニやスーパーより多くの商品数を取り扱うことができる。

注文から30分以内に届くというのはかなり画期的ですよね。

ありがとうございます。当社では「今すぐ便」と呼んでいますが、eコマースから更に進化した“クイックコマース”と呼ばれる分野で、外国ではかなり浸透しているサービスです。
pandamartは、アジアでは8地域、200エリア以上で展開しています。特にクイックコマースが浸透しているシンガポールでは、国内ほぼ全域に即時配達できる状態になっています。

欲しいものがすぐ届く“クイックコマース”が日本に本格上陸

外国ではクイックコマースやデリバリーが当たり前なんですね。確かに、タイでは食事は屋台で買うのが一般的で、キッチンのない家さえあるとか。

そうらしいですね。食事を作るという概念があまりないようで、私の韓国の友人も、食事は頼むのが当たり前だといいます。
そういう文化圏ではデリバリーが馴染みやすいのかもしれません。

日本はある意味遅れている?

この分野はそうですね。コンビニがどこにでもあるので、デリバリーの必要性がそこまでなかったのかもしれません。それに、日本人特有の「手に取って目で見て買いたい」という消費者心理もあると思います。
現在、日本では、グロッサリーだけで50兆円の市場規模がありますが、その中でデジタル化が進んでいるのはたったの7%と言われており、大きな伸びしろのある市場だと捉えています。

※グロッサリーとは、乾物や缶詰など、生鮮食料品以外の食品や日用雑貨を指す。

今後、競合が増えていきそうですね。

はい。しかし、プレイヤーが増えないことには、今の7%から飛躍的には伸びません。
まずは、今まで日常的に実店舗で買っていたものをpandamartで買う習慣を作るのが第一歩だと考えています。お客様に「コンビニやスーパーとあまり変わらない価格感で、たった200円(税別)の手数料で買えるんだ!」と体感してもらう。そして、各社のサービスの違いを使い比べてもらって、商圏を広げていくのがここ数年の動きだと思います。

脱「買い溜め」、自宅からスマホ注文がトレンドに

やはりコロナ禍が追い風になっていますか?

そうですね。外出自粛で通勤・通学の生活動線がガラッと変わってしまい、コンビニが苦戦した一方、スーパーの業績が伸びました。家で料理する事が増えて、どうせ食材を買うならコンビニよりも安いスーパーに行こうという消費動向に変わってきたことが影響していると思います。

在宅勤務になってから食材を冷蔵庫にため込むようになってしまいました。

特に一人暮らしだと冷蔵庫が小さいのに、冷凍食品なんかがスペースを取ってしまいますね。かといって、毎日同じ食べ物はイヤ。となると、今、冷蔵庫に何があるか見ながらスマホで商品を注文できるのは、クイックコマースならではの強みだと思います。

確かにそうですね。

それに、外国と違って日本の一般的な家にはガレージや広い納戸がないので、物をあまり買い溜めできません。注文してすぐ届けてもらう習慣が定着すれば、大きな商機になると思います。

取り扱う商品は、コンビニやドラッグストアで売っているようなグロッサリーがメインですか?

そうですね。ただ、どんな商材が動くかまだ見えないので、今は、広く浅く網を張ってセレクションしています。
例えば「お酒のメーカーや銘柄にはこだわるけれど、お茶は日本茶やウーロン茶など種類のなかで選んで購入する」などの消費傾向もあると思います。今はそういうデータを集めて、次に種類を増やしたり幅を広げたりする段階に進むでしょう。

新規事業開発本部 本部長・執行役員 佐藤丈彦様。写真は2021年8月にオープンしたpandamart大宮。“ダーク”ストアと聞くと一瞬驚くが、配送センターのようなもので見た目は普通の事務所や店舗と何ら変わりがない。

国内では5都市でサービスが始まりましたが、今後の展開は?

まずはフードデリバリーを提供している国内約30都市で順次出店する予定です。
出店には人口密度の高いエリアと商圏を見定めて、的確な立地に店舗を配置する必要があります。物流アクセスの良さだけでなく、30分以内という制約があるので商圏の中心に店舗が立地することが重要です。その他、面積や予算など条件をすべてクリアする物件が、欲しい場所に必ずしもあると限らないのが難しいところです。

人口密度も重要なんですね。 

はい。人口密度が高いとライダーも集まりやすいからです。本来なら地方の買物難民が多い地域も対象にしたいですが、ライダーが集まらないことには即時配送できないのです。

ライダーさんは、フードデリバリーと同時にパンダマートの配送もするのですか? 

基本的にはそうですね。ライダーからすると、配達頻度が増えればアイドリングタイムが減って効率的に働けるし、配達件数が増えれば一日の収入も増える。そういう意味でのエコシステムを同時に目指しています。

確かに、注文の時間帯が被らないのは大きな魅力ですね。

フードは昼食や夕食時間帯に注文が集中しますが、pandamartの注文はそれらの前後に注文が入りますから、ピークタイムをずらして、一日中、波がなく常に配達依頼が入る仕組みを確立できると思います。
今後、ライダーの数が増えたり、オペレーション効率が上がったりすれば、今は1.5km圏内に配達地域を限定していますが、もう少し範囲を広げられると思います。

foodpandaのHPより

利用者はどういう層が中心ですか?

若い方が多いですね。立ち上げ期の今は、25~34歳くらいの女性をメインターゲットにしています。

若い女性層をターゲットにする理由とは?

その方々を中心に旦那さんやお子さん、友人など、様々な層に広がりが見込めるからです。まずは、そこがリピーターになってくれれば商圏が一気に広がると考えています。

買物が大変なご老人にも便利なサービスですよね。

そうですね。お子さんが代わりに注文して、ご本人は玄関先で受け取るだけ、という使い方ができるのもデリバリーの長所です。

なるほど。コアユーザーが橋渡しすれば、高齢者にも行き届くと。将来の超高齢化社会を考えるとすごく心強い!

他にも、帰宅中に日用品をサクッと注文したり、奥さんの誕生日を忘れていた旦那さんが外出先から、家にいる奥さんに花束をサプライズで注文したり、とか。今までになかった消費者行動を起こすことができると思います。

そうなると、クイックであることの価値がより重要になってくるわけですね。

そうですね。そうなった時に、あらゆるユーザーに応えられる商品セレクションをしていくのが今後重要になってくると思います。

今回、取材に応じていただいた企業様

Delivery Hero Japan株式会社(Delivery Hero Japan Co.,Ltd)

Delivery Hero Japan株式会社(Delivery Hero Japan Co.,Ltd)

設立
2020年5月
本社所在地
東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー
事業内容
食料品及びその他物品の宅配業務等
Webサイト
https://www.foodpanda.co.jp/