商業事業者へのアンケート・ヒアリングより

ザイマックス不動産総合研究所(以下、ザイマックス総研)は早稲田大学建築学科石田航星研究室と共同で、多店舗を運営・統括する商業事業者を対象に、2016年より定期的にアンケートおよびヒアリング調査を行っている。本レポートは2021年のアンケート調査について、飲食業者だけを対象に取り出してその結果をまとめたものである。

本年は2021年6月~8月にかけて、昨年と同様のテーマでアンケートおよびヒアリング調査を実施した。調査対象は小売業・飲食業・娯楽業・サービス業のうち、多店舗を運営・統括する売上高30億円以上(飲食業は5億円以上)の商業事業者7,430社(*1)である。アンケートの有効回答数は357社(回答率4.8%)、ヒアリングは8社に実施した。

昨年発表したレポート「コロナ禍における店舗戦略に関する実態調査2020」(*2)では、商業事業者(小売業・飲食業・娯楽業・サービス業)の中で、特に飲食業に大きな影響が出ていることが確認された。そこで、本レポートでは、飲食業の事業者(有効回答数:96社)について、売上高30億円以上と売上高5億円以上30億円未満の事業者に分類し、売上規模による店舗戦略の違いやその変化、今後の方向性などについて深堀をしている。今回の調査結果が今後の有効な店舗戦略策定の一助となれば幸いである。

なお、昨年同様の売上高30億円以上の事業者については、同日に発表した「コロナ禍における店舗戦略に関する実態調査2021(本編)」(*3)にて結果をとりまとめているのでご参照頂きたい。

*1 調査対象:調査概要は末尾参照
*2 2020年12月18日公表「コロナ禍における店舗戦略に関する実態調査2020
*3 2021年10月12日公表「コロナ禍における店舗戦略に関する実態調査2021(本編)

主な調査結果

1. 飲食業者の属性・業況について

  • 国内店舗数の増減(2019年度末比)は30億円以上・30億円未満の事業者で大きな差異はみられない。
  • 出店エリアについては30億円以上の事業者は60%超が2つ以上のエリアで出店しており、30億円未満の事業者は70%超が1つのエリア内に出店している。
  • 既存店舗売上高(2019年度比)では、30億円以上の事業者のほうが「非常に増加している」「増加している」の割合が若干高い。

2. 店舗戦略について

  • 出店意欲の程度については30億円以上の事業者のほうが「優良物件に絞って出店」とする割合が高い。
  • 重視する出店立地では、30億円以上・30億円未満ともにコロナ前(2019年)と比較して「駅前・駅周辺」「繁華街・商店街」「駅ビル・駅ナカ」などが減少し「住宅地」「原則として出店せず」が増加している。
  • 新規出店では30億円以上・30億円未満ともに「労働力確保を重視した出店」を重視する事業者が最も多い。
  • 不採算店舗では、「賃料減額交渉を実施」「退店(自社保有、賃借店舗の中途解約・契約満了問わず)」を重視する事業者の割合は30億円以上のほうが30億円未満よりも30ポイント近く高い。
  • 売上高が好調な店舗では、「自営売場を全面(部分)改装」「手狭な店舗は面積拡大(移転・増床・増築)」を重視する事業者の割合は30億円未満のほうが低い。
  • 事業戦略では、30億円未満と30億円以上の事業者で大きな差異はみられない。
  • 新型コロナに起因して実施した施策としては、30億円以上・30億円未満ともに「賃料減額の申し入れ」「国や自治体による事業者に対する各種支援策への申請」「金融機関などに融資の申し入れ」が多い。
  • Eコマース売上高比率(2020年度比)は上昇した事業者が多い。
  • テイクアウト・デリバリーの実施率は、30億円以上・30億円未満ともにコロナ前(2019年)と比較して増加している。
  • リアル店舗の機能・設備・サービスは「イートイン店舗に、テイクアウト・デリバリー機能を付加」を「実施済み」「実施を検討中」と回答した事業者が30億円以上・30億円未満ともに最も多かった。

3. 社会情勢・消費者行動や価値観の変化について

  • 社会情勢の変化が店舗戦略に与える影響については、「新型コロナウイルス感染症の影響の長期化」が30億円以上・30億円未満ともに最も高い。
  • 消費者行動や価値観の変化については、30億円以上は「都市部郊外の店舗利用が増える」が最も高く、30億円未満は「ドライブスルー型の店舗ニーズが増える」が最も高い。

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