イベント開催で来街者増、商店街の回遊を促進

まずは、まちくる仙台について教えてください。

仙台市中心部には、JR仙台駅西口エリアに8つの商店街が連なっています。商都仙台の顔ともいえるエリアですが、郊外に大型ショッピングモールが相次いでオープンしたことで郊外が盛り上がりを見せ、問題意識を持つようになりました。それぞれ特徴も個性も異なる商店街ですが、抱える課題は同じ。そこで、8つの商店街組織が一丸となって、活性化協議会を結成、同時に“まちくる仙台”を設立し、商店街の活性化や情報発信に取り組むことになりました。
設立当初は行政のサポートも受けていましたが、数年前からは収益事業を行うことによって完全に自立した組織として運営しています。

8商店街のうちの一つ、仙台駅から歩いて5分のクリスロード商店街。150店舗以上が軒を連ね、休日には5万人を超える往来で賑わう。

実際にどんな取り組みをしているのですか?

例えば、商店街に人が集まるようなイベントを開催して街の魅力を高める取り組みを行っています。
コロナで一回リセットされてしまいましたが、最近になって復活したのが「まちくるパフォーマーズ仙台」という大道芸イベントです。
本来、アーケード商店街ではこういうイベントは難しいのですが、国家戦略特区の道路法の特例を活用して、我々の審査を通過した認定パフォーマー達が街なかで大道芸を披露できる仕組みを作りました。
コロナ前は、全国からパフォーマー達がたくさん集まる大きな大道芸イベントも開催していたんですよ。

「まちくるカーニバル」開催時の様子。普段、商店街に来ない人たちがイベントを目当てに訪れてくれることも。

イベントが呼び水になって来街者が増え、さらには商店街を回遊してくれると。

そうですね。「商店街に行けば、何か楽しそうな事をやっているぞ」というような雰囲気づくりができたら良いなと考えました。
この前の七夕まつりでは、商店街から一本入った裏路地で仙台の伝統芸「すずめ踊り」の演舞イベントを開催したのですが、特に外国人観光客の方が足を止めて見入ってくれていましたね。

インバウンド観光客も多いですか?

仙台はアジア系の観光客が多いです。仙台空港から台湾直行便が出ていますし、今後は香港便も就航する予定です。このような背景もあって、商店街の中にある老舗百貨店・藤崎の1階には免税カウンターと外国人観光案内所を設けています。まちくる仙台でも、レトロな横丁を巡る商店街ガイドツアーや英語対応の文化体験プログラムを行っています。

まちくる仙台はどこから収益を上げているのでしょうか?

例えば、商店街の空中に掲げている「アーケードフラッグ広告」や同じく商店街に設置した「大型LEDビジョン」で企業や団体の広告動画を放映することによって広告収入を得ています。
あとは、一昨年から不動産事業者登録をして、主に商店街の空き店舗を紹介する不動産事業をスタートしました。そして、そのあと詳しくお話ししますが、共通駐車サービス券事業からの収益がメインになっています。

マーブルロードおおまち商店街アーケードに設置された大型LEDビジョン。スポンサー広告や商店街情報、行政情報等を毎日放映している。近隣で開催されている祭りやイベントをライブ配信し誘客を促進するなど、街の回遊性向上に一も役買っている。

駐車場問題を解決する、“まちくるチケット”とは?

次に、共通駐車サービス券事業「まちくるチケット」について教えてください。

共通駐車サービス券事業「まちくるチケット」は、8つの商店街にある加盟店で一定額以上の買い物や食事をすると、約80ヶ所の駐車場で使用できる割引チケットがもらえるサービスです。1回の駐車場代精算で何枚でも使えて、有効期限もないのが特長です。

まちくるチケットの加盟駐車場。共通ののぼりが掲げられ、遠くからでもすぐに分かると好評。WEBでは加盟駐車場が一覧になったマップを公開し、駐車場探しの負担を軽減している。

なぜ、この事業を始めたのですか?

仙台市民を対象に行ったアンケート調査から、商店街に対する不満として、駐車場が使いづらい、わかりづらいという声が多く挙がりました。来街者を増やすためには駐車場問題の解決が不可欠であり、また駐車料金が少しでも軽減できれば来街者が増えるのではという狙いがありました。

たしかに、街なかは駐車場が点在していて不便な印象があるかもしれません。

ええ。駐車料金がかからない郊外の大型ショッピングモールに対抗するためにも、駐車場問題の解決は重要です。
昔ながらの紙のサービス券を独自で運用していた商店街もありましたが、無人精算機が主流の現代では使い勝手が悪い。そこで、まちくるチケットでは磁気式の駐車サービス券を採用しました。

ショッピングや飲食の金額に応じて、買い物客は店から100円か400円分の駐車割引チケットがもらえる。

仙台市中心部すべての駐車場で使えるのでしょうか?

現在は80ヶ所の加盟駐車場で使うことができます。少しでも多くの駐車場で使えるようになるために、我々も事業者に加盟を働き掛けているところです。

事業者によって導入している精算機が違いますし、共通化は大変だったのでは?

そうですね。すべてのメーカーの精算機で磁気券を読み込めるわけではないので、市内の駐車場で導入されている精算機のうち、最大限利用が可能なものを採用しました。

加盟駐車場の拡大が課題

まちくるチケットが始まって数年、変化は感じますか?

おかげさまで利用者数は伸びていますが、加盟駐車場の減少は懸念のひとつです。

減ってしまった理由は?

コロナ禍の外出自粛を受けて収益が落ち込んだり、大規模修繕費が捻出できなかったりして廃業に追い込まれる駐車場が出始めたのが原因のひとつです。

配布する側のお店の話ですが、商店街のすべての店舗が加入しているのですか?

すべてではありませんが、まちくる仙台が各商店街の振興組合にまちくるチケットを卸して、各店舗がそこから自由に購入できる仕組みになっています。もちろん組合に入ってない店舗は購入できないわけではなく、まちくる仙台から直接購入することもできます。

コロナ収束後、人出が戻って駐車サービス券事業も回復してきたのでは?

そうですね。コロナの時は外出自粛を受けてまちくるチケットの販売数が落ち込みましたが、昨年あたりから改善してきましたし、新たにオープンしたお店が採用してくれるケースも増えてきました。

まちくるチケットの大きな魅力は8つの商店街共通で使えることですよね。一方で、使い勝手を良くするには、加盟駐車場を増やすことも大事ですね。

駐車場側からすると売り上げに占めるまちくるチケットの割合は決して多くはないので、商店街が抱える問題意識をいかに共有していくかは課題です。

駐車場問題は解決したと感じますか?

正直に言えば、完全に解決できたとはいいがたいです。そもそも、大きな原因は、視認性の良い大通り沿いに広い駐車場がないこと。仙台は街の規模に対して広い駐車場が少ない感じがします。例えば、盛岡は駅周辺に200~300台収容できる駐車場が数か所あったり、高崎には新幹線駅周辺に広い駐車場がたくさんあったりします。
仙台の場合、商店街と反対側の東口にある商業施設には約1600台収容できる広い駐車場がありますが、土日は満車になることも多いそうです。特に、東口では、球場で野球の試合があるとどこも満車になってしまいます。

駐車場の数自体が足りていないんですね。

ええ。公共交通機関の利用を促進している仙台市としては、街なかへの車の乗り入れは積極的ではないのかもしれません。例えば、主要幹線道路も車線を減らす構想があるようです。

駐車場事業者や行政とも足並みを揃えて取り組めるのが理想ですね。それでは最後に今後の展望をお聞かせください。

将来的には、まちくるチケットをより使いやすくするためにチケットレス化を考えています。駐車場業界は意外とキャッシュレス化が遅く、使いづらさの原因になっていると思います。8つもある商店街でどうやって共通システムを導入するかは課題ですが、もっと使いやすい仕組みができるように改善を進めていきたいです。

本日は貴重なお話をありがとうございました。

こちらこそありがとうございました。

今回、取材に応じていただいた企業様

一般社団法人まちくる仙台

一般社団法人まちくる仙台

本社所在地
宮城県仙台市青葉区一番町3-2-1 株式会社藤崎 事務館III 2階
設立
平成29年2月16日
事業内容
「仙台市中心部商店街将来ビジョン」の実現に向けた、まちづくり活動の推進。 また、「仙台市中心部商店街活性化協議会」(以下、協議会という)が定めたエリアマネジメント事業(にぎわい創出や来街環境整備など)に 寄与することを目的とし、その活動における実働機関となってこれを支援する。
Webサイト
https://machi-kuru.com/