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知識・ノウハウ
店舗仲介で知っておくべき「用途地域」3つのポイント
公開日:2022年2月8日
店舗と住宅の賃貸仲介を比べた時、大きく違うことの一つに用途地域(用途制限)が挙げられます。「う~ん、よく分からないけど、やっぱり店舗仲介って面倒そう」なんて思いこみで店舗仲介を避けるのはもったいない!今回は、店舗を仲介する時に気を付けたい用途地域の知識を基礎から分かりやすく解説します。
INDEX
はじめに
とある街の不動産会社。いつもは住宅の賃貸や売買が専門。ところが、ある日こんな問合せが舞い込んできました。
「このマンションの1階区画を内見したいんですけど。猫カフェなのですが大丈夫ですか?」
「はい!ありがとうございます!では、えーと…」 (あれ?このエリア、用途地域は何だっけ?そもそも“猫カフェ”って喫茶店だけど、動物を扱うわけだから、この用途地域ではNGなのかな?)
色々と疑問が浮かびますよね。場合によっては業種や面積に制限がかかる場合があることから、店舗仲介において用途地域は重要な情報といえます。
用途地域とは?
用途地域とは、市街地の健全で計画的な街づくりを目的として都市計画法で定められた制度です。市街化区域内では、各地域の特性に合わせて全部で13種類ある用途地域のうちのいずれかが割り振られ、地図上で線引きされています。 用途地域の種類に応じて建物の用途や規模、出店できる店舗の業種、面積、営業時間などに制限がかかります(=用途制限)。日本全国全ての土地に用途地域が定められているわけではなく、市街化調整区域など用途地域の決められていない地域もあります。なお、社会経済情勢に応じた変化等に対応するため、約5年に一度、全国一斉に用途地域の見直しがなされます。
(参考)「土地の使い方と建物の建て方のルールの話」/国土交通省
ポイント1 店舗の用途制限とは?
店舗の場合、用途地域によって、営業できない業種や提供できないサービス、店舗面積、営業時間などの定めがあります。
さて、冒頭の猫カフェのケースに話を戻しましょう。
営利目的で動物を扱い、かつ飲み物や軽食を提供するお店ですから、第一種動物取扱業(※)に該当する「喫茶店」となります。
※ただし、非営利目的の場合は、第二種動物取扱業にあたる。
「喫茶店」だけなら第二種低層住居専用地域でも営業可能です。ただし、店舗等の床面積が150㎡以下でなければなりません。
しかし、用途地域によって動物取扱業を営むことができない、又は、一定の広さを超える飼養施設(※)や畜舎を設置できない用途地域があります。この制限は自治体によって異なる上、ネットでは公開されていないことも多いので、自治体の窓口で確認しなければなりません。
※飼養施設とは動物を飼養する場所だけでなく餌の保管場所や洗浄設備等、動物の保管に関わる全てのスペースのことです。営業目的の動物カフェを開業する際に必須となる第一種動物取扱業を登録申請する際、基準に適合する飼養施設を設置しているか確認が入ります。
猫カフェの場合には用途制限だけでなく、猫を飼養する適切な広さの確保、逃走防止対策、臭気防止のための清掃、換気の徹底なども必要になります。
ポイント2 誰がどのタイミングで確認するの?
内見前に調べておくのが良いでしょう。大手チェーンの店舗開発担当など慣れている方は既に自ら調べている可能性がありますが、店舗探しの経験があまりない方も多くいます。
不動産会社側でも用途制限を把握しておかないと、商談が進んでから「実は用途制限に引っかかってしまい、今回の話はなかったことに…」なんてことにもなりかねません。用途地域を事前に確認しておけば、このような事態を未然に防ぐことができます。
ポイント3 用途地域はどうやって確認すればいいの?
1. インターネットで検索する
「(物件所在地の自治体名)+用途地域」で検索すると、その自治体で公開している用途地域マップを確認することができます。制限内容を調べる場合は、「(物件所在地の自治体名)+用途地域+制限」で検索するのがおすすめです。
ただし、用途地域の見直しは5年に一度行われ、タイミングによってはネットの情報が最新版に更新されていないこともあります。そのため、面倒でも自治体窓口で確認するのが確実でしょう。
2. 自治体の都市計画課に問い合わせる
自治体の都市計画担当課(※)の窓口で教えてもらえます。物件が複数の用途地域にまたがるケースもありますので、開業後のトラブルを避けるためにも窓口でしっかり確認しておきましょう。
※自治体により名称が異なる場合があります。
まとめ
基本的にはオーナー側が用途地域についてご存知のことが多く、テナント側も検討段階で用途制限および業種確認する流れが一般的です。ただ、不動産会社側でも用途の確認を事前にしておけば、安心して仲介業務を進めていくことができるでしょう。また、用途地域の知識をうまく活用すれば、その地域の環境特性や客層想定等、リーシングにも役立つはずですから、今後用途地域や用途制限にも是非着目してみてください。