女性やファミリー客を取り込む、明るくスタイリッシュな店

まずは御社の事業についてお聞かせください。

2016年の創業以来、 Baluko Laundry Place(バルコランドリープレイス)というブランド名のコインランドリーを全国約230ヶ所に出店しています。

従来のコインランドリーのイメージを覆す、明るく開放感のある店舗。待合スペースが広く、居心地が良いと好評だ。

コインランドリー事業を始めたきっかけは?

弊社の創業者がコインランドリー機器メーカーの出身で、コインランドリーの便利さ、使用した際の仕上がりの気持ちよさをもっと世に広めたい、もっと普及させて人々の生活を便利で豊かにしたいという思いをずっと抱いていました。

ビジネス的な観点でいえば、洗濯は人の一生になくてはならない生活インフラですから、ニーズが普遍的でパイが大きく、他社と差別化できるのも理由のひとつでした。創業当時は、暗い、汚いといったイメージのコインランドリーがまだまだ多く、今ほど広く受け入れられてはいなかったので、やり方次第で利用者を増やせるはずだと。

昔は、独身男性が主な客層でしたが、御社の場合は女性客が多くて驚きました。

店舗によっては子連れ男性の利用も多いですよ。平日忙しくて休日にまとめて家事をこなす共働きのご夫婦からは、「バルコは洗濯が終わるまでの間、カフェで夫婦でゆっくり過ごせて本当にありがたい」という感想をいただいています。

あらためて御社ならではの特色とは?

1つめはデザインです。見た目がスタイリッシュなだけでなく、女性でも入りやすい明るく清潔な店であること。そして、操作が分かりやすいこと。それと、待ち時間を心地よく過ごせる空間設計が大きな特徴だと思っています。

2つめは洗濯乾燥のクオリティです。コインランドリーの本質は洗濯ですから、上質な洗いあがりを実感していただけるよう水量や回転数など、何度も実験を繰り返して最適な洗い方を常に研究しています。例えば、洗濯前のドラム洗浄は、コストを削るため3秒くらいで終わらせてしまう所もありますが、弊社では2分間しっかり洗浄することを創業当初から続けています。

また、洗剤にもこだわっていて、肌にも環境にも優しい自社開発のオリジナル洗剤と、大阪の老舗石鹸メーカーが製造する天然成分由来の洗濯石けんの2種類から選ぶことができます。

3つめは情報発信です。弊社ならではのこだわりやコインランドリー活用術、セール情報などをWEBやアプリで発信しています。

公式アプリでは空き状況の確認や洗濯完了通知の他、クーポン配布など販促活動も行う。また、客層や来店頻度を集計しサービス改善に繋げている。

コインランドリー×地域コミュニティ 併設型店舗で差別化

カフェを併設している店舗もありますが、どのような狙いがあるのですか?

1つめは、洗濯が終わるまでの時間を快適に過すごしていただくため。2つめは、同じく待ち時間中に有意義なサービスを提供してシナジーを生むためです。カフェを併設している店もあれば、コインランドリーと親和性の高いクリーニングショップを併設している店もあります。

確かに、御社の店舗は待ち合いスペースが広いですよね。

ええ。それは、お客様にコインランドリーでどんな体験をして欲しいか社内で議論するときに、”コミュニティ”というキーワードが頻繁に挙がるからなんです。

要は、コインランドリーは昔で言う井戸。井戸端会議という言葉がありますが、水場で街の情報交流が行われていたように、その役目をコインランドリーが担えるのではないかと。洗濯が終わるまでのんびりしたり雑談したり、何かしら交流が生まれてほしいという意図があります。

実際にコミュニティ機能を重視した店舗にはどんなものがありますか?

例えば、北海道・小清水町にある「Baluko Laundry Place 小清水町ワタシノ」です。

オホーツク海に面した人口約4,500人の町で、全国有数のジャガイモの名産地ですが、過疎化の問題を抱えています。そんな時、町役場の建て替えに合わせて生まれたのが、役場とコインランドリー、カフェ、ジムが一緒になった「小清水町ワタシノ」という複合施設です。

役場にコインランドリーを併設しているのですか?

ええ。珍しいですよね。役場の窓口のすぐ横にコインランドリーとカフェ、ジムが繋がった空間があり、にぎわいひろばとして活用されています。雑談したり寛いだりしながら洗濯が終わるのを待っていられます。ちなみに、カフェでは地元メーカーと協力して、名産品のジャガイモを使ったフライドポテトやコロッケ、アイスクリーム、クラムチャウダーを提供しています。とても美味しいんですよ!

(左)小清水町ワタシノ(右)小清水町ワタシノ内のコミュニティスペース「にぎわいひろば」

コインランドリーが担う、防災的役割

この「ワタシノ」は町の防災拠点も兼ねているとか。

そうなんです。普段はコインランドリーとして営業していますが、災害時は被災者の洗濯に活用されます。ちなみにジムには温泉熱床暖房が敷かれていて、トレーニング機器を移動させれば暖かく避難生活を送れるし、カフェは炊き出しの厨房に早変わりします。

このように日常的に使っているモノやサービスが災害時にも役立てられるという考え方を「フェーズフリー」といって、全国的にも注目されているんですよ。

確かに避難生活が長引くと困ることの一つが洗濯です。

先日の能登半島地震では断水が長期化して、弊社の金沢店にもお客様が殺到しました。洗濯は生活のクオリティを維持する上で絶対に必要です。災害時でもタンクに水さえあれば使えるので、防災的観点からもコインランドリーは地域に必要な施設だと考えています。

更に、常に電気と空調が付いていることも非常に価値のあることだと思います。同じ震災時、新潟の海沿いの店舗に30~40人の方が避難してこられました。元日でお店も役場も閉まっている中、安全な場所で暖を取りたいという人々が選んだ場所が弊社のコインランドリーでした。

それは非常に大きな地域貢献ですね。

ええ。コンビニも少ない過疎地ならば、なおさら一年中電気と空調が付いている施設は貴重ですよね。平常時はコインランドリーを営業して、非常時は一時避難の場所として提供できれば社会貢献としてすごく価値があると思います。そういった側面も自治体にPRしながら、店舗数を増やしていければと。

コインランドリーに避難するなんて、昔じゃ考えられなかったですよね 。

コインランドリーが安心できる場所とは思えませんでしたし、地方の過疎地域では収支が成り立たないからといって出店数も少なかった。でも、実は過疎地域でも利用者は結構いらっしゃるんですよ。

私は地方出身ですが、車に洗濯物を詰め込んでコインランドリーに行くことがよくありました。

そうですよね。例えば、農家さんは一家総出で働く家庭が多いので、コインランドリーで一気に終わらせた方が早上がりなんですよね。

都心でも家族全員分のシーツや毛布を洗っても干す場所がないし、高速道路の近くだと外干しで洗濯物が汚れてしまう。家庭用乾燥機も市販されていますが、業務用に比べると、仕上がりと所要時間にかなり差があるかと思います。

お話を伺った麗狗二美(レイクナオミ)様

キャッシュレス決済ができるようになって、さらに使い勝手が良くなったと感じます。

現金だと集金作業や両替機の改修、新貨幣対応問題などメンテナンスコストが掛かるので、弊社としてもキャッシュレスの方が経営的なメリットも大きいんです。お客様の利便性も踏まえ、UI/UXを重視したアプリを開発することを決めました。

昔は銭湯の横に古い洗濯機が並んでいるイメージだったのが、ここまで進化しているとは驚きでした。

暗くて危険という昔ながらのイメージを払拭しようとチャレンジしている面もあります。でも、入浴中に洗濯を終えられるという意味では、銭湯横への出店は非常に合理的です。最近は銭湯ブームやサウナ人気もありますから、そことうまくコラボできるようなビジネスモデルが復活しないか期待もしています。

今回、取材に応じていただいた企業様

株式会社OKULAB

株式会社OKULAB

本社所在地
東京都渋谷区元代々木町4ー5
設立
2016年8月19日
事業内容
ランドリーサービスFC展開、ランドリーサービスの海外展開、洗濯ソリューションサービスの企画・開発・提供、企業アライアンスなどに関するコンサルティング
Webサイト
https://okulab.co.jp/