固定か歩合かは、“店舗の種類”によって変わる

歩合賃料について解説する前に、固定賃料と歩合賃料のどちらが採用されるかは、“店舗物件の種類”によって異なるという点をおさえておきましょう。

固定賃料

路面店やフリースタンディング店舗など、1つの土地に対して1つの店舗物件が建っている場合、住宅やオフィスと同じように毎月固定の賃料を支払う「固定賃料」のケースが多いです。

歩合賃料

ショッピングモールや商業施設などで営業する店舗(インショップ)の場合、月々の売上に応じて賃料が変動する「歩合賃料(売上歩合方式)」を採用するケースがあります。

歩合方式とは?

ざっくり言うと、月々の売上に比例して変動する賃料のことです。

ただし、ひとくちに歩合方式といっても固定と変動型を併用する方式や、売上が低かった月でも一定の賃料を支払う方式などいくつかの種類があり、どの方式を採用するかは施設によって異なります。

今回は最低限おぼえておきたい代表的な4種類をご紹介します。

①完全歩合方式
②併用型(固定賃料+歩合賃料)
③最低保証売上方式
④逓減(ていげん)型歩合方式

それでは、各々の特徴をおさえていきましょう。

代表的な4種類の歩合方式を覚えよう

①完全歩合方式

売上額に関わらず、その月の売上に歩合率を掛けて算出した賃料を支払います。

- 例 -

売上歩合率10%の契約だとすると、
1ヶ月の売上が600万円だった場合、

600万円×歩合率10%=60万円

その月の賃料は60万円となる。

売上と賃料が連動するので、テナントからしてみれば売上が悪い月は賃料も少なくて済むため賃料負担が軽く済むというメリットがあります。

一方、貸主にとっては、テナントの売上が良ければそれだけ多くの賃料が入ってきますが、当然、売上が低ければその分、支払われる賃料も少なくなってしまうリスクが伴います。

このリスクを回避できるのが、次から紹介する②~④です。

②併用型(固定+歩合方式)

固定賃料にプラスして、一定の売上額を超えた金額分に歩合率を掛けて算出した歩合賃料を支払います。

- 例 -

固定賃料+売上のうち500万円を超過する額の10%支払う、という契約だとすると、
一ヶ月の売上が800万円だった場合、

歩合賃料:(800万円―500万円)×歩合率10%=30万円

その月の賃料は、固定賃料+30万円 となる。

③最低保証売上方式

この方式では、施設側とテナントで最低限の売上(最低保証売上)を設定します。

テナントは売上が極端に悪い月でも、最低保証売上はあったものとみなして、その額に歩合率をかけた賃料を支払います。

ただし、最低保証売上を上回った場合は、①のような歩合賃料を支払います。

- 例 -

歩合率10%、最低保証売上 500万円 という契約だとすると、

【ケース1:最低保証売上を下回った場合】

売上300万円で最低保証売上に達しなかった場合でも、
500万円は売上があったものとみなす。

最低保証売上500万円×歩合率10%=50万円

その月の賃料は50万円となる。

【ケース2:最低保証売上を上回った場合】

最低保証売上を上回る800万円だった場合、

売上800万円×歩合率10%=80万円

その月の賃料は80万円となる。

この方式ならば、テナントの売上が極端に悪くても最低限の賃料が支払われるため、貸主は安心して施設を運営することができます。

一方、テナントにとっては、どんなに売上が悪くても最低保証賃料を支払わなければならない上、努力して売上がアップしてもその分賃料も多く支払わなければなりません。

④逓減(ていげん)型歩合方式

その月の売上に歩合率を掛けて算出します。

ただし、売上に応じて歩合率を何段階か設けるのが特徴的で、その段階が上がる程、歩合率は下がります。

売上比例制家賃や変動制歩合などともいわれることもあります。

- 例 -

売上0~500万円未満なら 歩合率10%、
500万円~800万円未満なら 歩合率 6%、
800 万円以上なら  歩合率3% という契約だとすると、
1ヶ月の売上が600万円だった場合、

600万円×歩合率6%=36万円

その月の賃料は36万円となる。

②や③では歩合率が一定なのに対して、逓減型では売上が増えるほど歩合率が低くなるため、テナントの賃料負担感が軽減され、テナントにとってはモチベーションにもなります。

なお、逓減型とは逆の“逓増型歩合方式”もあります。

まとめ

ショッピングモールや商業施設などインショップでは歩合賃料が採用されるケースがあり、それぞれの物件によってその条件も様々です。まずは今回紹介した4種類の賃料形態をよく理解しておきましょう。