リサーチやデータ分析にお金を掛けずに競争力を失った日本企業

アメリカは8兆2,358億円
イギリスは1兆4,557億円
日本は2,774億円

これ、何の数字か分かりますか?  これって、2022年に各国の企業がマーケティングリサーチやデータ分析に費やした費用の総額を比べた数字なんです。(ドル円年平均レートは、131.50円で計算)
更に広告費に対するマーケティングリサーチ費の比率を見ると、アメリカ23.1%、イギリス26.1%に対して、日本は4.7%と断トツで低くなっています。

出典: グローバルのマーケティングリサーチ業界団体ESOMAR(エソマ)の年次報告書「Global Market Research2022」

昔からそうなのですが、日本企業は広告費についてはドンッと巨額投下するものの、マーケティング調査とかデータ分析などにはあまりお金をかけない傾向があるのですね。
なぜ、そうなるのでしょうか? 
それは、「リサーチなんかにお金をかけるより、広告をバンバン打った方が単純に売上が上がるだろ~」と多くの経営者が未だに考えていることによります。でも、リサーチやデータ分析ってそんなに役に立たないのでしょうか?

私の答えは「NO」です。

昨今の日本企業は世界での競争力を低下させています。
スイスのビジネススクール(国際経営開発研究所/IMD)が毎年公表している世界競争力ランキングで、1992年に1位だった日本は、2024年には38位まで順位を落としています。
ここまで日本企業の競争力が低下してしまった要因としては、中国やアメリカの台頭をはじめ、技術革新の遅れ、イノベーションや新規ビジネスモデルの導入遅延、デジタル化の遅れ、DX化の遅れ、グローバル人材の不足、企業の変化対応力の欠如など、様々な要因が囁かれています。

マーケティングの視点で特に着目したいのは、イノベーション(改革)が得意な海外勢とリノベーション(更新)が得意な日本国内企業という違いです。このイノベーションとリノベーション、どちらにも必須となるのが「リサーチやデータ分析」です。ただ、日本では前述の通り「広告」に比べて「リサーチ」が軽視されている状況がずっと続いており、これが日本の停滞の一因だと個人的には感じております。
なぜならば、今勝っている原因や、今負けている原因、これから新しい市場をつくっていくヒントなどなど。すべてはマーケットやお客様のキモチの中に答えが隠されていて、リサーチはこれを知る最善の方法だからです。
海外企業は勝つためのデータ分析が上手い、という印象がとても強いです。

店舗開発業務で、あなたに頭一つ抜きんでてもらうために

ここまでいろいろとお話ししてきましたが。このコラムでは、「リサーチやデータ分析などのマーケティングの力」を通じて、店舗開発御担当者の”お悩み”や”課題”を解決できればと考えております。
マーケティングのチカラを少しだけ店舗開発のお仕事に導入いただくことで、あなたのお仕事力が<頭ひとつ抜きん出る>状態になることを目的としています。

ここまで、少し硬い話が続いてしまいましたが、ここからはどうぞリラックスしてお読みください。


私は普段、ショッピングセンターや百貨店、小売業などに特化した「売上向上コンサルティング」を生業としております。ただ、コンサルティング業といってもしっかりと”結果”を残さないことにはすぐに淘汰されてしまう、厳しい業界でもあります。

結果を残すためには最適な答えを見つけることが大切ですが、最適解の根拠・エビデンスを取ることも大切です。私が行っている調査や分析では顧客視点から見たものが多いのですが、戦略を提案する際は、客観性を高めたり説得力を持たせたり、今後の予測や推測をする際に根拠・エビデンスを材料とします。どんなに素晴らしい戦略や戦術を立てても、それを実行するのは”人”ですから、目の前の人を説得して動いてもらうには、それなりの根拠がないと難しい、というのが30数年で学んだことです。
また、私が関わった多くの企業では、リサーチやデータ分析を通じて大きな成果を上げております。

そのようなことを日々行っている中で、
「店舗開発御担当者の”お悩み”や”課題”を、マーケティング的なアプローチで解決するコラムを書いて欲しい」というオーダーをいただきました。

私が相対してきたお客様は大型商業施設のディベロッパーやオペレーター、小売店の運営ご担当者などが多く、店舗開発御担当者の方々とガッツリお仕事をした経験は、それほど多くはありません。「お役に立てるのかなぁ」とも思いましたが、そんなことも言っていられないので、まずは店舗開発を生業とされている方々の”お悩み”とか”課題”をお聞きしてみました。以下はその時にお聞きした内容の一部です。

出店の意義とかロジカルな社内説明を求められるけど、信頼を得るのに時間と労力がかかる

他のチェーン店と同じ立地を狙う場合、どのように差別化していくかが難しくなっている

良い立地で売上を最大化したいけど、予算コントロールが難しくなっている

賃貸契約や土地取得の場面で、不動産オーナーとの交渉スキルがより必要になっている

以前と同じ方法では希望する立地への出店機会を獲得できなくなっていると感じる

適切な立地を見つけたいが、情報入手先が限られている

などなど。

店舗開発御担当者のお悩みや課題解決に向けて

「う~ん、こんなお悩みゴトがあるのね・・・」 結構長い時間、ひたすら文字面を追っていました。
すると、なんとなくですが文字の裏側に「情報収集」「説得力」「エビデンス」という言葉が浮かんできました。
これらは比較的マーケティングの得意分野だったりします。

現在の日本の店舗開発業務において、「リサーチやデータ分析などのマーケティング」は、十分に活用されているとは言い難い状況です。でも、人があまりやっていない分野だからこそ、このスキルを店舗開発業務に活かしていくことで”頭ひとつ抜きんでる”きっかけになり得る、と感じています。あまり人がやっていないことって、それだけで目立ちますので。

つきましては次回から、具体的な店舗開発御担当の方々の課題を解決するためのマーケティングスキルを、「すぐに使える」「明日から活用できる形で」ご提供し、頭一つ抜きん出ていただこうと考えております。私にとってはチャレンジングな試みですが、実際に皆様のお役に立てるコラムにできればと思っております。どうぞ引き続き、よろしくお願いします。