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新しい不動産の使い手たち ― インタビュー
治療から未病対策へ パルコが手掛ける新しい医療モール / パルコ
公開日:2024年11月8日
2024年2月、埼玉県の浦和PARCOに株式会社パルコが自ら運営する医療モール「Welpa(ウェルパ)浦和」がオープンしました。パルコといえば、若い世代に支持される先進的なファッションビルのイメージがありますが、なぜ医療モール分野に進出したのでしょうか?
誰もが健康で快適に、心豊かな生活を送れることを目指し、未病対策やセルフケアにも力を入れる全く新しいコンセプトの医療ウェルネスモールWelpaについて、株式会社パルコ ソーシャルビジネス開発部 ウェルネス事業担当の浅原那木子様にお話を伺いました。
“ウェルビーイングな状態”だからこそ心豊かな生活が送れる
早速ですが、Welpaについて教えてください。
パルコが運営するWelpaは、これまでの医療モールのように“病気になった時にだけ行く場所”というよりも、病気にかかる前、予防段階での利用を想定した新しいコンセプトの医療モールです。
未病、つまり病気ではないけれど健康でもない段階で早めに対策を打ったり、気軽に検診を受けたりできるのが特徴です。
ファッションビルのイメージが強いパルコが、医療モールの運営に進出した背景は?
パルコは創業以来、ファッションやアート&カルチャーを通して、“都市生活者の心豊かな生活に貢献すること”を理念に掲げてきました。しかし、生き方や働き方が多様化し、さらにコロナ禍によって価値観が急激に変化した今、人々が求める心豊かな生活とは何だろうかと問いなおしてみたのです。
その結果、一人一人が自分らしく健やかな人生を創造したり、心豊かに暮らしたりするためには、心と身体が健康なであることが大事だろう、と考えました。
社会の変化が背景にあったのですね。
はい。医療費の増大が社会課題になったことで、未病対策がより重要視されてきていますよね。
そこで、Welpaでは、自覚症状があってもなくても医療を活用したセルフケアによって、健康だけでなくより快適に過ごすことができる、“ウェルビーイングな状態”を目指しています。
特に女性はライフステージによって心身が大きく変化し、そのたびに多くの選択を迫られます。そういう場面であっても、心と身体に向き合い、自分自身の変容を楽しめる環境を作りたいと思っています。
そのためには未病や病気の早期発見が大事なのですが、世界的にみても、日本は女性の婦人科検診の受診率が低いんです。
検診を習慣化させるには、手軽に検診が受けられる環境や文化が大事です。
Welpaがセルフケアを普及させることによって、ウェルビーイング向上という社会課題解決に貢献したいと考えています。
ちなみに、メインターゲットは?
主要ターゲットは20~40代の女性ですが、もちろん男性もご利用いただけます。
初出店した心斎橋では、立地環境もあり20~30代の女性比率が高く、会社帰りの女性も多いです。
2店舗目の浦和ではマーケット特性にあわせて、より幅広い客層を対象にしています。三世代ビルといわれるくらい年齢層が広い施設なので、20~50代くらいまでまんべんなく来館していただいています。受診科目にもよりますが、4割くらいは男性のご利用となっています。
どちらも仕事終わりや土日に来院される方が多いですね。
浦和は、どのようなテナント構成ですか?
浦和は、内科クリニックや乳腺外科、カウンセリングに力を入れている調剤薬局や、メンテナンスに強い歯科などが入っています。
治療だけではなくメンテナンスにも力を入れているテナントが多いんですね。
人間ドックやがん検診なども行うクリニックさんが入っているので、検診目的で来院される方も多いです。
商業施設に検診センターが入っているのは珍しいと思いますが。
そうですね。検診前って、やっぱり緊張したりネガティブになったりしがちですが、その前後にPARCOで買い物や映画、食事などしてもらえたら、その嫌な気持ちも少しはやわらげることができるのかな、と。
検診の場合、朝食抜きでいらっしゃる方も多いので、終わった後にレストランフロアに行くなど、少しでも館内で楽しみを見つけてもらえたらという気持ちもあります。
買い回りの面では、施設側にもメリットがあるんですね。
うまく相互送客ができればいいなと思っています。
直契約によって、クリニックとの連携が円滑に
これまで行ってきたテナントビジネスとは違って、医療モールを自社運営するのは思い切った決断だったのでは?
そうですね。通常はクリニックとの間にマスターリース事業者を挟む場合が多いですが、Welpaに関しては社会課題解決型のソーシャルビジネスとして考えていたので、クリニックとは直接契約を結んでいます。
直接契約にはどんなメリットがありますか?
クリニックのテナント運営や宣伝方法に関して、PARCOならではのノウハウを生かして直接支援ができていますし、コミュニケーションがとりやすいおかげで、スムーズに連携することもできます。
例えば、今年の秋は、乳がんの早期発見・治療を目指すピンクリボン運動の一環として、女性が検診や人間ドックを受ける間、お子さんをお預かりする一時保育のキャンペーンを開催しました。また、入居している薬局さんともコラボして、薬剤師の仕事を体験できる体験型保育も期間限定ですが提供しました。
これらは、仕事や育児で自分のケアを後回しにしがちな女性に、検診を受ける機会を提供しようと、Welpaが他社と一緒に企画したものです。
ヘルスリテラシー向上のため、情報発信にも注力
治療だけではなくて、セルフケアに関する情報発信を積極的にしていますね。
はい。実際に、心斎橋の受診者専用ラウンジでは、産婦人科医を招いて相談会を行ったり、イベント、今の時期だと例えば女性ホルモン変化に寄り添うデリケートゾーンケアに関して学ぶことができる展示をアンファー株式会社様主催で開催いただいています。(11月18日までWelpa心斎橋ギャラリー)。
リアルイベントだけではなく、オンラインでの情報発信にも力を入れていて、ホームページでは美容や身体に関する情報、例えば、著名人のセルフメンテナンス法や、検診にまつわるあれこれ、お悩み相談などをコラムにして定期的に発信しています。
立地が良くリピーターが多いことも決め手に
PARCOという商業施設の中に医療モールがあるメリットは?
顧客視点としては、まず、駅近でアクセスしやすい場所に医療施設があるのはかなり利便性が高いと思います。しかも、買い物や食事のついでに気軽に利用できるのはPARCOならではの特長です。
商業施設側の視点としては、今までPARCOではできなかった体験やサービスを提供できること。あとは、顧客や患者さんのリピート率が高い点もポイントでした。
医療モールの場合、リピーターが多いですよね。
そうですね。来院をきっかけとして、他フロアのご利用も期待しています。
こういうヘルスケア関連の情報発信が商業施設でされることって、あまりないですもんね。
ええ。これまでは、クローズな場所でしかされてこなかったかなと。
PARCOのような不特定多数が来る場所にあることで、自然と健康に関する情報が入ってくるし、アクセスも良いから来院ハードルが下がるんですね。
浦和に関しては、上層階に市の公共施設が入っているので、図書館などに来たついでにWelpaの存在を知ってもらえるケースもあると思います。それがきっかけで検診や未病対策に関心を持ってくれたら良いなと思いますし、こういう事が身近な商業施設でできるのが良さだと思っています。
今後の出店予定は?
おかげさまで2拠点とも共に好調に推移していますし、買い物や食事との相互送客もうまくできているので、3拠点目以降の出店も検討している段階です。いずれはPARCOの施設外へ出店する可能性もあります。
最後に、これからの展望をお聞かせください。
既存拠点については、今後もセミナーやイベントの開催、オンラインコンテンツの充実化など情報発信に注力して、新規の顧客獲得や、既存顧客の来店促進につなげていきたいです。
ここ数年で、ようやく女性の健康課題やフェムテックが世の中に認知され、重要視されるようになってきました。今後、さらに多くの方にセルフケアや検診を受けることの重要性をお伝えして、未病対策の啓蒙と文化醸成、ヘルスリテラシーの向上に貢献したいと思います。
今回、取材に応じていただいた企業様
株式会社パルコ
- 本社所在地
- 東京都渋谷区神泉町8-16 渋谷ファーストプレイス
- 設立
- 1953年(昭和28年)2月13日
- 事業内容
- ショッピングセンター事業、エンタテインメント事業
- 従業員数
- 社員数 666名(2024年2月末日現在)
- Webサイト
- https://www.parco.co.jp/