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調査・マーケティング ― マーケティングのヒミツキチ Vol. 3
お客様の「アタマの中」を知って勝率を高める
公開日:2024年11月22日
長曽 雅彦
株式会社コネクト 代表取締役
勝率を高めるバリュープロポジションの考え方(前回の振り返り)
前回は「バリュープロポジション(提供価値)」をつくることが勝率を高めますよ、というお話でした。その中で「バリュープロポジションを作るための優先順位がとても重要」ということもお伝えしました。
そのためには「まずあなたのお客様が望んでいる価値を考える」
次に「自社自店が提供できる価値を考える」
最後に「競合他社が提供できない価値を考える」という順番でしたね。
ありがちなパターンとしては、まず自社の強みや提供価値を考えてしまって、お客様の望む価値が2番目になってしまうケースです。これは「顧客視点ファースト」ではないので、高い比率で<ありがちな施策>になってしまいます、というお話でした。
(ここまでのお話は、マーケティングで最も重要なことのひとつですので、ご覧になっていない方は是非VOL.2を御覧下さい)
「うん、ここまではわかったよ。じゃあ実際に勝率を高めるために、具体的に顧客視点ファーストを実現するための、お客様のアタマの中を知る方法を教えてくれよ」と思われた貴方。お待たせしました、参りましょう。
「お客様の頭の中」を知る方法
顧客視点ファーストを実現するために、お客様のアタマの中を知る方法は、大きく分けて3つの方法があります。
①お客様が実際に行動した情報を分析して「アタマの中」を知る
②お客様に対して様々なマーケティング調査手法で調査して「アタマの中」を知る
③お客様と一緒に行動したり働いたり観察して「アタマの中」を知る
①②③に優劣はありません。
状況に応じて最適な方法を選んでいくことが肝となります。
じゃあその「肝」を知りたくなりませんか。ここで①②③の具体例や肝、最近のトレンドなどをお伝えします。
1. お客様が実際に行動した情報を分析して「アタマの中」を知る
・「人流調査」で、お客様の商圏や顧客属性、購買行動など、考え方や動き方を見える化
・「ライフスタイル分析」で、所有/嗜好ブランドデータからお客様の人となりやペルソナを見える化、など
★特に「人流調査」は最近のトレンドとして多く活用されています
2. お客様に対して様々なマーケティング調査を実施して「アタマの中」を知る
・「来店者アンケート調査」で、居住エリアから購買行動、施設への評価・御意向までを見える化
・「非来店者対象WEB調査」で、まだ来店していないけどポテンシャルの高いお客様の御意向を見える化、など
★いわゆるマーケティング調査と呼ばれるものですが、相変わらず多く採用されています
3. お客様と一緒に行動したり働いたり観察して「アタマの中」を知る
・出店検討エリアのお客様宅で冷蔵庫を見せて頂きながら、スーパーのご利用状況を雑談形式で傾聴する
・日本橋名店の店主(旦那衆)お一人お一人に、過去から現在のお話をお聞きしながら、未来の日本橋を語り合う、など。
★時間も労力もかかるので、本当に必要な時に採用される手法です
お客様の「あたまの中」を知る方法って、意外といろいろあるものですよね。
マーケティング屋としては、「今、このお客様の課題を最適な形で解決するには”これだな”」と調査分析の手法を定めたり、組み合わせて採用して、課題解決を行っています。
「人流調査」の活用シーンが広がっている
今日はお客様の「アタマの中」を知る方法のうち、もっともホットな「人流調査」に触れてみましょう。
ご存知の方も多いかもしれませんが、「人流調査」は人流データを収集することで、特定の場所での人々の行動や移動パターンを理解し、どの時間帯にどのような属性の方々がどのくらい集まるかを把握できる調査手法です。商業施設でのマーケティング戦略最適化はもちろん、都市計画や防災対策、観光、公共交通機関の運営改善など、様々な分野で活用されています。
人流データを収集するためには「スマートフォンやGPSデバイスから得られる位置情報」や「携帯電話基地局データ」「Wi-Fiアクセスポイントのデータ」「セキュリティカメラの映像解析」「Bluetoothとビーコンを用いたデータ」など、様々なデータ収集方法があります。
これらの方法はそれぞれ異なる特性と利点がありますが、商業施設のマーケティングでは、「スマートフォンやGPSデバイスから得られる位置情報」が主流となっています。
スマホのアプリをインストールする際に、「アプリの利用には、GPSのアクセスが必要です。許可しますか?」といったメッセージがよく出てきますよね。ここでGPSをオンにすることで、個人情報に抵触しない形でひとりひとりの位置情報が一定の間隔で取得されることとなります。
また、「スマートフォンやGPSデバイスから得られる位置情報」データは過去の一定期間から現在まで蓄積していますので、あるスーパーマーケットの来店者数について、<今年度の1年間分>と<過去の1年間分>のデータを比較分析する、といったことも可能です。
なんとまぁ、便利な時代になったもんですよね。昔は調査員が特定の地点でカチカチと人や車の数をカウントする「カウント調査(通行量調査)」をよく行っていました。でも、「カウント調査」は、性別や年代など限られたデータしか取得できないのに、やたらコスパの悪い調査手法でした。それに比べて「人流調査」では実に様々なデータを指定の期間分、複数の施設・店舗にまたがって取得して、比較分析することができます。これを使わない理由は、最早見当たらないというのが、2024年時点でのマーケティング業界のセオリーとなっています。
顧客インサイトを理解することが「具体的なマーケティング戦略」に繋がる
人の行動の約90%は無意識に行われると言います。人間の脳は省エネを好むため、過去の経験から学習した行動パターンをとりやすく、全ての行動には何らかのポジティブな目的が隠されているそうです。この深層心理が具体的な行動パターンとなり、これを見える化するツールとして「人流調査」が開発され、重宝されているのも納得がいきます。
店舗の周りで生活している人々の多くが、なぜこの店を好んでリピート来店しているのか。「人流調査」では、こうしたお客様のインサイトも推察することができます。企業がお客様の潜在的な欲求や、背後にある本質的な心理を理解することは、マーケティング戦略策定や施策実行に繋がる大変重要な要素です。
それでは、「人流調査」で顧客インサイトを理解することが「具体的なマーケティング戦略」に繋がる実例を見てみましょう。
●商圏や来店経路がわかります
⇒プロモーションの最適化に役立ちます
●滞留時間、来館頻度、一定期間の来店者数などがわかります
⇒店舗のレイアウトや商品陳列、メニューづくりなどの最適化に役立ちます
●ピーク時刻と混雑度がわかります
⇒スタッフ配置や顧客サービス向上施策に役立ちます
●競合店舗の人流データが手に取るように把握できます
⇒競合店舗と自店舗をデータ比較することで、マーケティング戦略の見直しに有効です
「人流調査」、ちょっと使ってみたくなりましたか?
もっと具体的な活用事例がたくさんあるのでお伝えしたいのですが、今回はここでお時間が来てしまいました。
ここから先は、次回以降をお楽しみに!