移動できるホテル「コンテナホテル」

コンテナホテル「ザ・ヤード」シリーズ。
全客室が独立していて、駐車場が目の前にあるのが特徴。配管を繋げば浴室やトイレもコンテナ内に設置できる。

コンテナ建築の用途はトランクルームだけにとどまりません。

2018年には親会社のデベロップがコンテナホテル事業をスタート。コンテナホテルとは、その名の通りコンテナ1棟を1客室として使用する“動くホテル”です。短工期、低コスト、防音性の高さなどコンテナならではの特性を活かし、全国で28拠点932室を営業しています。

クールな雰囲気の外観からは想像できない程、部屋の中は快適そのもの。室内にはマッサージチェアや冷凍冷蔵庫、電子レンジ、空気清浄機など、ビジネスホテルと同等の設備と機能を完備。各地でリピーターを増やしています。

通常のビジネスホテルの客室数が1ヶ所辺り100~150室なのに対して、コンテナホテルでは平均40室と通常の半分以下の規模です。これくらいの規模に抑えると稼働率が上がりやすくなり、需要が上下しても競合より宿泊料金を安く設定できるそうです。出店地域は観光地だけでなく工業エリアに出店することもあり、ビジネス客の需要も取り込んでいます。

コンテナホテルの特長

①【短工期、低コスト】

すべて同じモジュールで設計するので、工場で大量生産が可能。現地に牽引して移設するだけなので工期が短く、通常のホテルより低いコストで出店できる。万が一閉店になっても建物の解体が不要で、他の場所に移設して再利用できる。

②【駐車場が目の前】

客室内でデスクワークするビジネス利用の宿泊者も少なくない。客室の目の前に駐車場があると、図面やPCなど仕事道具をすぐに車に取りに行ける。

③【高い防音性】

工業団地に立地する場合、工場へ出張に来た技術者の連泊利用も多い。技術者が夜間に工場のライン組み作業等をして昼間ホテルに帰って寝るとなると、普通のホテルでは清掃音が気になって休めないが、防音性の高いコンテナホテルならば、隣室の音が響かないので静かに休むことができる。

④【感染リスク低減】

コンテナホテルには朝食会場や大浴場など大勢が集まる場所がなく、食事も自室でとるスタイル。共用廊下も屋外にあるので人との接触がほぼなく、新型コロナウイルス感染リスクが限りなく下げられる。

ロードサイド型の宿泊特化ホテル、HOTEL R9 佐野藤岡

上の写真は東日本大震災発生時に宮城県石巻市で復興従事者用の宿泊施設として使われたコンテナを再利用した、HOTEL R9 佐野藤岡店です。

コンテナ建築とは思えない程、スタイリッシュな見た目に驚かされます。このような全室地面固定タイプのコンテナホテルも全国に出店しており、今年の3月には、同様の固定タイプを宮古島に開業。在来建築工法の工賃が高い離島でも、コンテナならば建築コストが低く抑えられる上に、台風の多い宮古島では木造建築よりも強風に耐えられるというメリットもあるそうです。

被災地に出動「レスキューホテル」、コンテナ建築の広がる可能性

左)レスキューホテルが栃木県足利市から東京都千代田区へ出動する様子
右)即日設置し、PCR検査専用の仮設診療所として使用された

コンテナホテル最大の特長は、平時はホテルとして営業している客室を、災害発生時すぐに被災地に移設し、仮設宿泊所などとして使えること。各客室のコンテナの下には牽引用の車両が付いており、電気や給排水等のインフラ設備も工具無しでソケットの脱着のみですぐに出動できるのです。

実際に2020年春、長崎に停泊中だったクルーズ船内の新型コロナウイルス感染拡大防止を目的に、栃木から50室分のコンテナホテルを現地に移送。要請から3日後には移設が完了し、医療従事者の休憩室として活用されました。

この様子がニュースで取り上げられたのをきっかけに全国から問合せが相次ぎ、今では国土交通省や44の地方自治体がレスキューホテル出動要請のための協定を締結しています(2021年3月現在)。

「栃木から長崎に運ぶのには3日掛かってしまったが、各地に点在していればもっと早く被災地に設置できるはず。ゆくゆくは拠点数を増やして、全国どこでも一日で持っていけるよう社会貢献したい」と荒川氏は最後に語りました。

今回、取材に応じていただいた企業様

株式会社ストレージ王

株式会社ストレージ王

設立
2008年
本社所在地
千葉県市川市市川南1丁目9番23号
事業内容
トランクルーム、コンテナ式倉庫に関する企画、開発、運営、管理等
Webサイト
https://www.storageoh.jp/