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新しい不動産の使い手たち ― インタビュー
株式会社ザイマックス
公開日:2022年4月21日
今までにない方法で不動産の新たな価値を見出す企業とそのサービスの裏側に迫るシリーズ。今回取り上げるのは、法人向けサテライトオフィス(※)サービス「ZXY(ジザイ)」を運営する株式会社ザイマックス ジザイワーク事業部です。リモートワークが普及した今、“オフィスでも自宅でもない、第三のワークプレイス”としてサテライトオフィスを導入する企業が増えていますが、ZXY(ジザイ)は、サービス開始6年で首都圏を中心に227店舗を展開、会員数は50万人(店舗数、会員数ともに2022年4月20日時点)を突破。コロナをきっかけに都心一極集中を疑問視し、郊外へオフィスを分散させる企業が増えるなか、これまでオフィス立地として想定されなかった場所、例えば、住宅街や銀行の店舗、駅ナカなどにサテライトオフィスを積極的に出店しています。インタビューではその背景や出店戦略について伺いました。
※サテライトオフィスとは、本社から離れた場所に設置される中小規模のオフィスのこと。
リモートワーク需要を見込み、営業マン向けワークスペースとして誕生
サテライトオフィス事業を立ち上げたきっかけとは?
事業のアイデアが生まれたのは、今から7年ほど前。当時は、働く場所といえばオフィスだけに限定されていて、パソコンも社外に持ち出せず、朝本社に来て夜に帰宅するのが当たり前の時代でした。そこで「いつでもどこでも働けるような場所を作れないだろうか?」とグループ社員がビジネスアイデアコンテストで提案したのが始まりで、その案を元に2016年「ちょくちょく...」という名称で事業化にこぎつけました。
「ちょくちょく...」ですか?ユニークな名前ですね。
この名前は社内公募で決まったのですが、「ちょくちょく使ってほしい」とか「(本社に戻らず外出先で働ければ)直行直帰しやすくなる」という期待が込められています。事業がスタートした当初は、営業マンがアポの間にタッチダウン的に利用するのを想定して、新宿や渋谷、池袋など都心6ヶ所に出店しました。でも、この先働き方がより柔軟になっていけばリモートワークのニーズが高まるのではと思ったんです。
都心よりも郊外の方がニーズが大きいのではないか、と。
ええ。家の近くで働けるようなサテライトオフィスが郊外にあれば、事務職や企画職でもリモートワークがしやすくなるだろうと考えたんです。それで、都心以外の23区外や神奈川、千葉、埼玉など郊外へも出店を積極的に進めていきました。
当時、お客さまの反応はいかがでしたか?
その頃はリモートワーク自体が普及していなかったので苦戦しましたね。フットワークが軽くて新しいサービスに前向きな企業にしか話を聞いてもらえなかった記憶があります。
今でこそ問合せがかなり増えましたが、当時は多くの企業が制度の面でもIT環境の面でも、本社以外の場所で働く環境が整っておらず、ニーズが顕在化していなかったと感じます。
風向きが変わったのは、やはり働き方改革の影響も大きい?
そうですね。昔は、リモートワークするのは外出の多い営業マンくらいに限られていましたが、徐々に働き方改革の気運が高まるにつれて、予想通りいろいろな職種がリモートワークをするようになっていきました。会員数の増加と共に郊外への出店も加速し、ちょくちょく...をリブランディングしてZXY(ジザイ)へとサービス名称を変更したのも、ちょうどその頃でした。
働き方改革が追い風になったわけですね。
たしかに、働き方改革やコロナがきっかけで多くの企業がリモートワークや在宅勤務をするようになり、ZXY(ジザイ)の利用者が増えた側面もあるとは思います。実際、コロナ禍で外出自粛が呼びかけられるようになってから、都心よりも郊外にある店舗の方が利用率が高くなっていますし、一回当たりの利用時間もかなり伸びました。
ただ、コロナだけが引き金になったわけではなく、当初から思い描いていた社会全体のワークスタイルの変化や働く場所の分散がコロナによって何年か前倒しにやってきたのだと捉えています。
会員が約50万人ということですが、業種による利用者の偏りはありますか?
業種はあまり関係なくて、どちらかといえば、社風やトップの考え方によって導入に前向きかどうか分かれると感じています。
2016年のサービス開始当初は、IT系やサービス業など、いわゆる”柔軟“な会社が多かったですが、働き方改革の風潮が強くなってからは金融業やメーカーなど、大企業の利用も増えました。
銀行の空きスペースに出店。ZXY(ジザイ)で遊休不動産を収益化
オフィス街ではない意外な場所への出店も増えていますよね。銀行の中に出店した時には驚きました。
三井住友銀行さんの支店内への出店ですね。それは、もともと先方の支店にある余剰スペースを上手く活用できないか、ザイマックスグループの別会社が相談を受けていたんです。
そこで、三井住友銀行の従業員専用サテライトオフィスを開設することなったものの、それだけでは広くて使いきれないので、一部をザイマックスが賃借して銀行内にZXY(ジザイ)を開設することになったんです。
(参考)「銀行店舗の遊休スペースを活用したサテライトオフィスの開設について
金融業界としては、かなり先進的な取り組みですよね。
そうですね。かなり進んでいると思います。先方からも高い評価をいただいて、三井住友銀行さんでは多くのサテライトオフィスを開設しています。こういう前例ができると同業他社が「あそこがやるなら、うちもやってみるか」と動くんですよね。一方で、最近になって、大手銀行さん数社からZXY(ジザイ)の利用企業としても申し込みを頂きました。
金融機関でいうと、川崎信用金庫さんの支店にも出店されていますね。
はい。川崎信金さんの場合は、登戸支店にある約90坪の余剰スペースを有効活用できないか相談を受けたのが発端でした。何かよい活用法がないか困っていたそうです。そこで、90坪をザイマックスが賃借してそのうち60坪は1名個室を中心としたZXY(ジザイ)を開設することにしました。
(参考)「川崎信用金庫 登戸支店内にサテライトオフィスサービス「ZXY(ジザイ)」を設置」
残りの30坪はどうしようか、と。
ちょうどその時に、法人営業部門がやり取りしていていた、とある一般企業さんが「登戸付近に自社専用のサテライトオフィスを開設したい」と考えていることが分かり、ZXY Monthlyという形で利用することになりました。
遊休不動産の活用と、柔軟な働き方を可能にするサービスの提供、両方のマッチングがうまく行った事例かなと思います。
地域住民のためになるテナントを誘致できたことも、信金さんにとっては大きなポイントだったのでは?
おっしゃる通り、テナントとして入居するのが、地域住民にメリットを還元できる事業者かどうかは重視されたと思います。ZXY(ジザイ)を利用するのはその地域に住む会員ですから、周辺住民の働く場所の選択肢の拡大、ひいては柔軟な働き方にもつながるというメリットがあります。社会貢献もできてまさに三方よし、と思っていただけたのではないでしょうか。
金融機関に出店する際、ハードルはありませんでしたか?
利用者が金融機関のバックヤードへと立ち入らないよう導線を確保するのが一番苦労しました。あとは、金融機関側がザイマックスに貸し出す際、オフィス化工事の費用を先方が負担するわけですから、その初期投資を賃料で回収できるかどうかもポイントになります。
その点、ザイマックスは工事部門、設計部門、賃貸仲介部門を自社で抱えているので、工事費用や期間、賃貸マーケットを詳しくお伝えすることができます。先方との協議の中でその辺りをご納得いただけるのは、当社ならではの組織体制の特長が寄与していると思います。
たしかに総合不動産業ならではのメリットですね。
ただ、最近は、金融機関側もZXY(ジザイ)がうまく行ってノウハウが溜まってきたからか、他のサテライトオフィスサービスや塾などに余剰スペースを貸しだす事例が増えています。
なるほど。今後は、金融機関の余剰スペースの貸し方も変わるかもしれない、と。
金融機関ならではの規制がありますから、金融機関がビルの賃貸業をどこまで柔軟にできるか分かりませんが、規制が緩和されれば金融機関が外部テナントを入れるのも当たり前になっていくかもしれませんね。
今回、取材に応じていただいた企業様
株式会社ザイマックス
- 設立
- 1990年3月1日(平成2年) 株式会社リクルートより分社独立
- 本社所在地
- 東京都港区赤坂一丁目1番1号
- 事業内容
- 不動産マネジメント業、サテライトオフィスサービスZXY(ジザイ)の運営等
- Webサイト
- https://www.xymax.co.jp/
- サービスサイト
- https://zxy.work/