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新しい不動産の使い手たち ― 事例
減築工事でリニューアル!~持続可能な商業施設へ~/長野電鉄
公開日:2023年3月10日
長野県長野市、国宝 善光寺のお膝元と呼ばれる権堂(ごんどう)地区に、2022年9月「綿半スーパーセンター 権堂店」がオープンしました。食品スーパーをメインに、日用品や100円ショップなどのテナントが入った地下1階地上2階建ての商業施設です。
実はこの建物、以前は地下1階地上5階建てのイトーヨーカドー長野店として営業していましたが、閉店後、地上3フロア分を撤去する“減築工事”を経て生まれ変わった施設なのです。
全国でも商業施設の減築事例は数えるほどしかありませんが、サステナビリティがより重視され、人口減少が急激に進む近い将来には珍しいことではなくなるかもしれません。
減築を決断した経緯や、計画実行にあたってのハードルについて、当時のプロジェクト担当、長野電鉄株式会社 福村公博様に取材しました。
INDEX
プロジェクトの概要
鉄道・バス事業を主力事業とする長野電鉄株式会社(1920年設立、本社:長野県長野市)が所有する「長電権堂駅前ビル」は、1978年に地下1階地上5階建ての商業施設として開業しました。以来、総合スーパー「イトーヨーカドー長野店(以下、IY長野店)」が営業を続けていましたが、2020年6月に閉店。その後、地上5階建てのうち3階~5階までを撤去して地上2階建てへと減築する大規模リニューアルを実施し、2022年9月末に「綿半スーパーセンター権堂店」を核テナントとする商業施設として生まれ変わりました。 商業施設の減築事例は国内でも数えるほどしかなく、非常に珍しい取り組みといえます。
減築に至るまでの背景
JR長野駅から徒歩15分ほどの場所にある権堂地区において、1978年、地区の再開発として、長野電鉄(以下、長電)が所有する長電権堂駅前ビルが長野大通り沿いに完成し、住民待望の総合スーパーIY長野店がオープンしました。
しかし、40年以上もの間存続したこのIY長野店も郊外の超大型店やネット通販の台頭により売上が年々減少し、2020年6月、IY長野店は近隣住民に惜しまれつつも閉店を迎えます。
IY撤退に伴い、跡地にどのようなテナントを誘致すべきかを地域住民や社内を中心とする関係者へヒアリングしたところ、食品スーパー誘致への期待が高く、地元企業を中心とした事業者へアプローチすることになりました。
減築を検討した理由とは?
しかし、食品スーパー誘致には、「利用客の利便性を高める駐車場の確保」が必須条件でした。
IY時代には店舗から通りを渡った先の立体駐車場を利用してもらっていましたが、建物に付属した駐車場がなければ、利便性において競合施設に見劣りしてしまいます。
なおかつ、老朽化した建物の維持管理についても考える必要がありました。
需要に見合う床面積にするために、建物を全解体し建て替える選択肢も検討しましたが、コスト面もさることながら、地盤の強度・暗渠などの物理的な理由により難工事となることも予想されました。
上記の理由により、「今ある建物を活用し、今の権堂の街に適合した形にリノベーションする」ために、屋上駐車場の新設も含めた減築工事を本格検討することになったわけです。
減築計画を本格的に検討してみると、以下のようなメリットがあることもわかってきました。
・建物規模が縮小により、建築・消防関係の各種要件が緩和され、建物利用効率が高まる
・荷重負担の軽減により耐震性能が向上する
・固定資産税負担の低減
これら各種メリットも計画決定の後押しとなりました。
減築工事にあたってのハードル
減築工事を進めるにあたり、様々なハードルがありました。
①工事面でのハードル
減築の施工事例が少ない
長電およびグループの施工会社に減築工事の施工実績はなく、国内でも事例自体が少なかったため、工事費を想定概算見積りで、事業の意思決定をする必要がありました。
工期中に、当初想定していなかった工事が必要になり、予算管理の難易度は非常に高いプロジェクトになりました。
不確定要素も多い中、投資回収に相当の年数が想定される事業計画であったため、慎重な判断を要しましたが、権堂駅前の活性化という地域貢献面も重視し、計画実行に踏み切る事になりました。
これは、長電が掲げる「お客様のため 地域のため 従業員のため」という長期経営ビジョンを体現した経営判断ともいえるでしょう。
②工事面以外のハードル
工事以外にも以下のような対応を行いました。
近隣住民の理解
屋上駐車場新設にあたり、元々非常階段だった部分にスロープを新設しましたが、裏手にある神社や地元住民との対話を経て、近隣に配慮した建築計画をたてました。
また、大店立地法に関連する手続きとして、近隣住民の意見を取り入れながら、道路の拡幅や、自転車や歩行者が安全に通行できるよう樹木の撤去、夜間照明の設置なども行っています。
さいごに
2022年9月30日、地下1階には食品スーパー、1階にホームセンターやカフェ、ペットショップ、2階は100円ショップや英語で預かる学童保育などのテナントが入居し、無事満室稼働の状態でリニューアルオープンを迎えることができ、
連日多くのお客様で賑わっています。 地域の声に背中を押されて綿半スーパーセンター権堂店として生まれ変わった施設は、地域活性化や中心市街地が再び活気を取り戻す起爆剤としても期待されています。
施設概要
- 施設名称
- 綿半スーパーセンター 権堂店
- 住所
- 長野県長野市権堂町2196番地1
- 営業時間
- 8:00~22:00
※テナントにより営業時間が異なります - 開業
- 2022年9月30日
- アクセス
- 長野電鉄長野線「権堂」駅直結
- 公式HP
- https://watahan.jp/shops/nagano-prefecture/gondo/126678fce488935fa3beaed05f52968324aeee39.html
今回、取材に応じていただいた企業様
長野電鉄株式会社
- 設立
- 大正9年(1920年)5月30日
- 本社所在地
- 長野県長野市権堂町2201
- 事業内容
- 鉄道事業、不動産事業、旅行業、広告業、保険代理店業、関連事業
- Webサイト
- https://www.nagaden-net.co.jp/