商業事業者へのアンケート・ヒアリングより

ザイマックス不動産総合研究所(以下、ザイマックス総研)は、2016年から早稲田大学建築学科石田航星研究室と共同で、商業事業者に対する各種アンケート調査を継続的に行っている(*1)。

第4回目となる今回は2020年9月~11月にかけて実施し、新型コロナウイルス感染症拡大により商業事業者を取り巻く環境が大きく変化しているなか、不動産戦略の中核である出店・改装・退店などの店舗戦略に関する方針がコロナ前と比較してどのように変化したのか、アンケートおよびヒアリングにより調査した。調査対象は小売業・飲食業・娯楽業・サービス業のうち、多店舗を運営・統括する年商30億円以上の商業事業者約5,600社(*2)である。アンケートの有効回答数は515社(回答率9.3%)、ヒアリングは14社に実施した。

本レポートは、事業者が行う店舗戦略の内容とその変化、今後の方向性などについてとりまとめたものである。今回の調査結果がwith/afterコロナ時代における有効な店舗戦略策定の一助となれば幸いである。

*1 商業事業者に対する各種アンケート調査(2016~2019 年は小松幸夫研究室と実施)
  第1回調査 2016年11月29日公表「商業店舗の修繕に関する実態調査2016」 
  第2回調査 2017年9月29日公表「商業店舗の出退店に関する実態調査2017」 
  第3回調査 2018年11月29日公表「商業店舗の不動産戦略に関する実態調査2018」 
  第3回調査 2018年11月29日公表「商業店舗の情報管理に関する実態調査2018」 
*2 調査対象:調査概要は研究調査末尾参照

主な調査結果

・ 出店意欲の程度についてbeforeコロナ(2019年)とwith/afterコロナ(現在~来年)でみると、「優良物件に絞って出店」の割合がともに高く、コロナ禍においても事業者は優良物件の取得意欲が旺盛である。

・ 新規出店の方針は、before・with/afterともに「従来の出店地域または施設形態を重視した出店」が最も多いが、コロナ禍を経験して、郊外・住宅地立地より都市・観光地立地の店舗売上が鈍い傾向が続いており、今後の「出店地域または施設形態を見直していく」とする事業者も一定数いる。

・ 不採算店舗の方針は、新型コロナの影響度合いによって、業種・業態、あるいは同一業態でも事業者ごとにまだら模様の状況にある。

・ 売上高が好調な店舗については、before・after/withで方針に大きな変化はない。なお、不採算店舗と比較すると、店舗改装を方針として掲げている事業者の割合が多い。

・ 事業戦略については、「(ある程度)あてはまる」の割合が全体的に高く、かつ全ての項目について、beforeよりもwith/afterのほうが高くなっている。

・ 社会情勢の変化が店舗戦略に与える影響については、「新型コロナウイルス感染症の影響の長期化」が最も高く、消費者行動や価値観の変化については、「巣ごもり消費の増加傾向が続く」、「テレワーク(在宅勤務など)が今後も拡大する」が上位となっている。

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