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新しい不動産の使い手たち
多様な魅力を備えたまちへ、8つの目標像 / We Love天神協議会(後編)
公開日:2025年5月23日
天神の街が急発展する裏で、交通渋滞や違法駐輪などさまざまな問題を解決してきたWe Love天神協議会(以下、WLT)。近年は”天神ビッグバン”と呼ばれる大規模再開発をうけ、ふたたび街が大きく変わろうとしています。後編では、天神ならではの商業施設同士の連携施策とWLTが掲げる天神の将来像について伺います。
INDEX
商業施設同士の横の繋がりを重視
他にはどんな活動をされていますか。
例えば、コンシェルジュミーティングです。天神の商業施設や店舗、ホテル、観光案内所のインフォメーション係やフロントスタッフなどが一堂に会して、接客にまつわるお悩みを解決しあう会合です。
目の不自由な方への対応ひとつとっても施設によって対応が違いますが、共有することで気づきが生まれ、切磋琢磨することでエリア全体の接客レベルや来街者サービスの向上に繋がります。

施設の垣根を越えて、横の繋がりができるのは良いですね。
そうですね。他にも、ベビーカーの無料貸し出しサービスや、多目的トイレや授乳室などの情報を一元化したマップをデジタル化することでいつでも誰でも見ていただけるような取り組みも行っています。
また、来街者が安全に街ブラできるよう、交通問題の解消にも力を入れています。例えば、一時期は全国ワースト1位だった違法駐輪は現在ほぼゼロになりました。
それはすごい!具体的にどんなことをしたのですか?
福岡市とタッグを組んで、条例を制定していただき自転車から降りて歩く“押しチャリ区間”を定めました。今では、警備員さんがマナー違反する人がいないか取り締まりを毎日してくれています。
歩道に設置されていたサイクルポスト(駐輪エリア)も撤去が進み、かなり歩きやすくなりました。
商業施設の垣根を超えて協力しあう商習慣
ここまでお聞きしていると、施設や店舗の横の繋がりが強いのが天神の特長だと感じます。
そうですね。例えば、ミーナ天神が半年間の休業を経てリニューアルオープンするときには、周辺の商業施設がタッグを組んで“おかえりなさい、ミーナ企画”というキャンペーンをしました。
どんな企画だったのですか?
新装開店するミーナ天神に対して、お祝いメッセージを送りあう合同企画です。本来はライバル同士である施設同士が、こうやってエール交換するのは天神ならではの文化ではないでしょうか。

(中央)周辺商業施設からミーナに送られた“エール”の一例。街の至る所に掲示され、エリアに一体感が生まれた。
(右)天神で働くショップスタッフ総勢180名がおじぎでドミノする様子は圧巻! → Youtube動画はこちら
愛情を感じますね。
あとは、コロナ禍でお客様が激減した時には、天神にある商業施設のスタッフ総勢180名が登場する、来街促進動画をYouTubeにアップしました。
本当に様々な活動をされているんですね。
WLTはイベント屋さんと誤解されることがあるのですが、そうではなくて(苦笑)。施設の垣根を超えた横の連携を取りながら、天神エリア全体の集客が役目の一つです。何のためにしているのか、設立目的をはき違えないよう肝に銘じて活動しています。
エリアを盛り上げてみんなに来てもらえる場所にしたいと。それが天神に息づくDNAなんでしょうね。
もちろんポジティブな意見だけではないとは思うんですよ。例えば、2010年にPARCO開業の一報が入った時には、それこそ脅威ですよね。若者に絶大な支持を受けるおしゃれな施設が来たぞ!と危機感もあったと思います。
でも、「よくぞ来てくれました!ご近所さん同士、天神を盛り上げましょう!」とウェルカムなメッセージをこちらから発信しました。PARCOさんも「こんなに温かく迎えてもらった地域は初めてです」って驚いていましたね。
街として懐が深いんですね。
冒頭申し上げたように、“まずはエリア全体を盛り上げようよ”というマインドが根付いている。当然ながら、施設同士、売り上げの取りあいは絶対にあります。でも、そこは切り分けて、都心界やWLTの活動に協力してくれているのでありがたいです。
イベントや共通の販促活動だけではなく、合同の防災訓練もやっていますよ。
大型ビルが過密状態になる中、安心安全の確保は喫緊の課題です。福岡市の協定にのっとって、各施設が帰宅困難者の受け入れ態勢をとってはいますが、実際にうまく機能するか不安なのが正直なところです。
そこで、我々が間に入って、実際の地震発生を想定して、施設の安全確認から避難所開設、帰宅困難者をどうやって受け入れるかなど一連の流れを訓練する取り組みをしています。
集客して終わりではなく、安心してお客様が楽しめる街を作りたいと思っています。

最近、特に注力しているのはどんな事ですか?
公共空間を有効活用する取り組みに力を入れています。
商業施設の中だけ賑わっていても、街自体に活気がないといけません。そこで、公共空間を利活用することで街全体に賑わいを取り戻そうと。公共空間の使用には、意外に制度や規制のハードルがあるのですが、2023年5月に公開空地利活用に関する規制緩和が始まったのをうけて、自由度が格段に上がりました。公開空地を舞台にしたダンスや大道芸のイベントなども行っています。そこでは、子供や学生など市民から参加者を募ることを重視しました。天神での思い出ができて街に愛着を持ってくれれば、大人になってからも天神に足を運んでくれると思います。

(右)街なかを舞台にした市民参加型のイベント
今後、再開発の影響で公開空地がさらに増えます。ただの空き地にしておくか、利活用するかによって、街の雰囲気は大きく変わります。
公開空地を利活用しやすいように、ビルの事業者にも公開空地活用の理解を今後も求めていくつもりです。
進める中でご苦労もあるのでは?
やはり関係者の理解を得るのが大変ですね。主催者はWLTでも、関連する店舗や商店街、商業施設などにその都度、了解を取らないといけないので、その調整はどうしても大変です。「なんで敷地を貸さないといけないんだ」「管理の手間が増えるから協力はちょっと…」などネガティブな意見が出ることもあります。
そこは、どうやって折り合いをつけるのですか?
粘り強く話すのはもちろんですが、うまくいかなければ別のところで検討しなおすこともあります。WLTが先陣を切って変えようとしている姿を見せることで、少しずつ理解してもらえたらいいなと。
最後に、将来的な目標や目指す像について教えてください。
はい。天神ビッグバンやコロナ禍など街が大きく変わる中、昨年、15年ぶりに街づくりのガイドラインを改訂し、新たな目標像として8つの目標像を掲げました。

例えば、「歩きたくなるまち」。これは、街が回遊しやすくアクセスがよいことや、店舗や施設の低層部が通りに開かれている状態などを指しています。あとは、「強靭なまち」、「交ざりあうまち」など。
これらはすべて、会員の皆さんと膝をつきあわせ1年間かけて議論を重ねて作り上げたもの。最終的に誰もがイメージしやすいようイラストに落とし込みました。

賑やかで楽しげな雰囲気が伝わりますね。
ありがとうございます。「天神っていつも何かやっていて面白いね」「ワクワクするね」という魅力向上はもちろんですが、それだけではなく、渡辺通りは車の乗り入れをなくして車いすや盲導犬を連れた方でも歩きやすい環境にしようとか、オープンカフェのような憩いの空間を増やそうとか、そういった街の安全性も重視しているのもポイントです。
WLTで策定した街づくりガイドラインと、行政のマスタープランとはどうやって折り合いをつけているのでしょうか。
当然、行政のプランに沿わないといけないので、WLT側のガイドラインもその方針に合うように作り直すことはあります。でも、大枠は合致しているので、今後も行政や周辺の施設や店舗とも足並みを揃えて実証実験を重ね、目標像の実現に向かっていきたいと思います。
本日は貴重なお話をありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。
今回、取材に応じていただいた企業様
We Love 天神協議会事務局
- 本社所在地
- 福岡県福岡市中央区天神1-15-5 天神明治通りビル1F
- 設立
- 平成18年4月
- 趣意
- 福岡天神エリアの企業、団体、住民、行政など多様な活動主体で構成するエリアマネジメント団体。
安全安心で快適な環境の形成、地区の価値集客力の向上、地方経済の活性化、及び生活文化の創造などを目的として“まちづくり”を推進。 - Webサイト
- https://welovetenjin.com/