- 不動産会社向け
知識・ノウハウ
貸店舗の賃料表示について解説!
公開日:2025年7月18日
貸店舗を募集する際に、賃料等の価格をどのように表示すればいいか迷う場面があるかもしれません。不動産広告における貸店舗の賃料表示については、賃貸住宅とルールや考え方に違いがあり、注意が必要です。そこで、今回は住宅用不動産との比較を通じて、貸店舗(事業用不動産)の賃料等の価格表示について解説していきます。
INDEX

賃貸住宅と貸店舗の賃料表示の根本的な違い
不動産広告における賃料表示は、その対象が「住宅用不動産」か「事業用不動産」かによって、ルールや考え方が異なります。この違いの根底には、消費者(借り手)保護の度合いが挙げられます。
| 項目 | 住宅用不動産(居住用) | 事業用不動産(店舗・事務所・倉庫など) |
|---|---|---|
| 対象者 | 一般消費者 | 法人・個人事業主 |
| 表示の目的 | 消費者保護、誤認防止 | 契約者の判断材料提示 |
| 賃料表示の単位 | 「月額」賃料 | 「月額」賃料(+「坪単価」を併記) |
まず、住宅用・事業用問わず、不動産広告は宅建業法と景品表示法で規制されており、住宅用不動産に関しては業界団体の自主的なルールとして不動産の表示に関する公正競争規約(以下、表示規約)が適用されます。そして、住宅用不動産は、一般消費者を守るため、わかりやすく・誤解のない価格表示が義務付けられており、「月額」賃料と専有面積(㎡)の表示が求められます。一方、事業用不動産は、契約者の判断材料として、「月額」賃料または「月額」賃料に「坪単価」を併記します。
共益費・管理費や敷金・礼金などの表示はどうか
| 項目 | 住宅用不動産(居住用) | 事業用不動産(店舗・事務所・倉庫など) |
|---|---|---|
|
共益費・管理費等 の表示 |
賃料と合算表示が望ましい | 賃料と別表示も可能 |
|
敷金・礼金等 の表示 |
具体的な金額を表示 | 月数表示または具体的な金額 |
①共益費・管理費等の表示
住宅用不動産は、総支払額の明確化や有利誤認回避の観点で、共益費・管理費は賃料と合算表示が望ましいです。別記載も可能ですが、その内訳が必要となります。一方、事業用不動産は、賃料と別表示でも問題はありません。
②敷金・礼金・保証金等の表示
住宅用不動産は、表示規約に基づき、敷金・礼金等を具体的な金額で示すことが義務付けられています。一方、事業用不動産は、敷金〇ヶ月といった月数表示か敷金300,000円など具体的な金額を表示します。
消費税の扱いについて
まず、住宅用不動産の賃料には消費税はかかりません(非課税)。一方で、事業用不動産の賃料には消費税(10%)がかかります(課税※)。表示については、税込/税別表示ともに可能ですが、税別の場合は必ず「税別」等を明記する必要があります。
※土地の貸付(地代)は非課税
表記例(賃料500,000円の場合)
550,000円(税込)または 500,000円(税別)
賃料等を明示せず「応相談」や「未定」と表示してもよいか
店舗などの事業用不動産において、賃料や売買価格を「相談」「応相談」「要問い合わせ」などと明示せずに掲載することは、例外的に許容されます。住宅用不動産では、表示規約により「価格を表示しない広告」は禁止されており、一般消費者保護の観点から曖昧な表示は認められません。しかし、事業用不動産では、法人や事業者の誤解等が生じない表示をすることを原則としつつ、例外的に価格を明示せず『応相談』としても違法ではありません。
ただし、以下の点には注意が必要です。
✓ 誇大広告等の禁止:価格を伏せていても、内容が過大・誤解を与える場合は宅建業法違反となる可能性があります
✓ 不当表示の禁止:「相場より安く貸せるかも」など根拠のない誘引は景品表示法で禁止されています
また、広告掲載媒体によっては、「価格非表示NG」など独自の規約がある場合があるので、ルールを確認する必要があります。
まとめ
貸店舗など事業用不動産における賃料等の表示は、住宅用と比べて柔軟性が高いものの、宅建業法や景品表示法、表示規約の精神に則り、取引の明確性と誤解の防止に努める必要があります。特に「賃料の『応相談』表示が可能」である点は、事業用不動産特有の重要なポイントであり、実務においてはこれらの点を理解し、適切に対応することが求められます。