損失も覚悟して若手に仕事を任せ、成長機会を与える

上野:深山さんは、本店の店長をしながら事業用不動産を担当しているそうですね。

深山:はい。入社してもう5~6年になるので、新しい事にチャレンジしたいと思って立候補したんです。それまでは、各店舗でバラバラにテナント仲介もしていたけど、ザイマックスインフォニスタさんの話を聞き、「テナントをひとりに集約しよう」となり、「ならば、自分が居住用賃貸の店長もしながら、テナントもやりたい!」と立候補したんです。新卒3年目で初めて店長になって、今年5年目で本店の店長をつとめています。

上野:早い!立派ですね。

中島:うちの店長はみんな社歴3~5年だけど、全員優秀でびっくりしますよ。この業界、労働として単に働いている人が沢山いる中、自分で戦略を持ってきますからね。若くたって頑張って成果出してくれれば良い、というのが僕の方針です。

上野:御社みたいに若手に権限譲渡できる会社は少ないと思うな。なぜ若手に重要なポストを任せるんです?

中島:そもそも若手育成に価値を見出さない人が多すぎると思います。とはいえ、かつて僕もそうでした。でも、ある時思ったんです。「これで僕が死んだらどうするのかな?」って。何も残らない。だったら、誰かに権限を渡さなきゃって。

上野:その渡され方すると身が引き締まりますね、深山さん。

深山:はい。最初は「なんで僕が店長?!」って驚きました。でも、やらなきゃと覚悟して、確かに成長できたと思います。

中島:あ、でも権限譲渡と言ったって、「キミが優秀だから、店長任せるんじゃないぞ。キミに可能性があるからやらせているんだぞ!」って釘は指しますけどね。頑張るといっても、夜遅くまで働くのは禁止していますし。

インフォニスタ担当者:確かに!この前も深山さんとのWEB会議が盛り上がってしまい19時になった途端、強制終了させられちゃいましたよね(笑)。

深山:すみません。総務におしりをたたかれてしまって…。

中島:そうです。残業させないし、プライベートを優先しなさい、と社員には言っていますから。頑張ってうまく行かなかったら、それはそれでしょうがない。それは諦めよう、って。

定期的な懇親でオーナーとの人脈を築く

上野:店長をしながらテナントの事も任されるとなると忙しいんじゃないですか?

深山:でも、毎週水曜日は休みですし、日曜日もシフト制なので、結構休みは取れています。

上野:そりゃあ、重説やネット掲載の入力作業は、営業の業務から外さないと回らないわけだ。

中島:そうですよ!営業するために雇ったのに、パソコン打ち込んでいたら意味ないでしょ。だから、入力作業系は全てシステム部に任せる仕組みにしています。

上野:営業が入力作業に掛かりきりになったら接客件数が減って売上にならないし、オーナー周りなんてできませんね。

中島:うちは毎週テナント会議をして、「オーナーさんのところへ行ってきなさい」と言っていますよ。

上野:でも、オーナー回りといったって、何を話すんです?

中島:訪問営業で邪険にされたら営業も嫌になるけど、うちは静岡で長いことやってきて知名度もあるからそこそこ話は聞いてくれる。そこで「今度うちで巨人戦のメインスポンサーやるんで、行きませんか?」とチラシを持っていかせる。これが効くんですよ!

上野:話のネタになるわけですね。

中島:春には静岡の球場でヤクルト対巨人戦のバックネット裏にオーナーさん達を招待して。喜んでくれましたね。花火なんかも豪華に打ち上げてくれて、良かったですよ。

上野:野球のバックネット裏なんてなかなか座れないから嬉しいだろうなぁ。

中島:と、こんな感じで営業担当にツールを持って行かせるから、それなりに話はできる。「管理料〇%にしますから、うちに頼んでください!」なんてやり方じゃ値下げ合戦になっちゃうでしょう?

上野:ええ。不動産会社とオーナーさんとの関係ってそういうものじゃないと思いますね。それじゃ疲弊してしまう。

優秀な若手なんていない

上野:深山さん、入社5年目になりますが、今後のキャリアの希望は?

深山:将来的には、賃貸営業だけでなくサブリースや土地活用提案の営業もしてみたいと思っています。

上野:おお、頼もしい!入社5年間で成長機会を沢山与えられて経験値を積んだから、こうやって挑戦的なマインドが持てるんだよなぁ。素晴らしいことだと思います。ベテラン数人だけでやっている不動産会社だと、将来のビジョンや街をどうしていくかって話にはなかなかならないじゃないですか?でも、清水エスパルスの公式スポンサーを担うような御社が地元のオーナーを抑えていた方が、テナント側にも安心感がありますよ。

中島:ありがとうございます。でも、そういう大きい会社は、元気のいい若手がいないっていう大問題がある。うちは若手にどんどん権限与えるけれど、他社は若手に権限を与える前に辞めてしまうと聞きます。毎年入って、毎年辞めていくんですよ。

上野:仕事が面白くないからでしょうね。

中島:ええ。会社だってベテラン店長に任せるのが一番効率いいですから。失敗しないでそこそこ売り上げてくれる。でも、それだと「(新入社員の)僕が居ても意味ない」と思って辞めてしまう。すると4、5人で回しているベテランだけの地場不動産会社と一緒になっちゃうんです。

上野:人を採用できても育てる力がない会社が多い、と。失敗を責めたり罰したりする会社は、かならず不幸な雰囲気になりますからね。

中島:そう。若い社員が失敗するのは、一つや二つじゃないですよ(苦笑)?でも、若手に言うんです。「これはうちで掛けてる保険と一緒だ」って。損失は出るもんだと思ってやっていますから。

上野:そう言ってくれればのびのびチャレンジングに働けますね。だって「チャンスはないけど頑張れ」と言われたって頑張れませんから。

中島:かわいそうだなと思いますね。そこさえクリアすれば、良くなる会社は沢山ある。若い子に権限を与えないからずっと一兵卒のまま。それで「うちの会社は伸びない」と嘆いたって当たり前。
だって従順な人を採用して、チャンスを与えないから。失敗を恐れるあまりに、成功する事じゃなくて“失敗しない事”が目標になってしまう。お役所仕事になっちゃうんですよね。

上野:失敗して怒られるのが怖いから嘘をつく。まさに悪循環です。

中島:そうしないようにするには、若い子に権限を与えること。ベテラン店長に任せる方が楽ですけどね。
若い人を雇うのは未来を作りたいから。若手を育てるのにどれだけお金を投資して失敗経験させないといけないか身に染みて分かっていますからね。

上野:良い会社ですね。中島さん、自分の会社のことを楽しそうに話しますよね。

中島:だってストレスがないんだもの。全国で講演会をすると経営者から悩みを打ち明けられるんですよ。みんな深刻な悩みばかり。結局、人材がいなくて悩んでいるんです。

上野:僕も色々な不動産会社のコンサルをするのでよくわかります。

中島:人を作らず金を作っておいて「良い人材が採れない」と言ったって当たり前。

上野:最初から優秀な人材なんて、探したっていないですからね!

中島:そう。良い人材になってもらうしかない。3年前の深山くんなんて使えないですからね(笑)。自分でも分かるよね?

深山:そうですね(笑)。よく笑ってごまかそうとしていました。

中島:「笑ってごまかすな!」ってよく言ってたよな。でも、今は本当に成長して頑張ってくれています。

上野:中島社長とは長い付き合いですが、良い会社になりましたね。若い方がイキイキ働いている。

中島:彼らを育てるのに5年計画でやってきました。父親から会社を継いだ時はベテラン社員ばかりだったから、急に若い人を入れてうまく行くわけがないのは分かっていました。だから、少しずつ若手を採用して、じっくりシフトチェンジしていった。ようやく6年目に入りますね。
深山くんだって忙しくても時間作って自分からお客さんのところ回っているもんね。彼は自発的に動きますよ。自分で考えて動いたことで成果が出るから達成感があるし、能力も上がる。

インフォニスタ担当者:よくわかります。戦略から何から自分で考えなきゃいけないような仕事を任せてもらって、色んな失敗もするんだけど、でも、これが成長のきっかけになる。一歩先行ったな、みたいな実感が持てますよね。

中島:うまく行くか行かないかは半分運だと思って、場だけは与えるんです。
でも、社長になって最初の10年間はうまく行きませんでしたよ。こんなに頑張って教育して、コンサル入れても全然伸びない。ならば若い人を入れてゼロから育てよう、と。今の店長陣はみんな新卒から僕が育てた世代です。

上野:素晴らしい。

中島:失敗してもいいよ、と。ずっとその方針でやってきました。

上野:20人新卒が入っても、1年で半分辞めちゃう会社だってありますからね。でも、面白くやるかどうかはマネジメント側の問題じゃないですか。

中島:もちろん。経営者も眉間にしわ寄せながらじゃダメですよ?気合と根性と努力じゃなくて、仕組みを考えること。なにより楽しくないと。社長が朝から、しかめっ面している会社なんて楽しくないでしょ?

上野:そうですね。中島さんとは長い付き合いになりますけど、いますごく楽しそうに感じます。

中島:父親から経営継いだ時はストレスの塊でしたが(苦笑)。
でも、これじゃだめだなと思って。若い社員を入れて、社員旅行で海外にもよく行きましたね。頑張ったら楽しいこと一杯あるぞ!って。そうやって楽しくやっていると、もっともっと頑張って成果上げてくれるんですよね。今は社員旅行なんて行けないけど、楽しかったなぁ。

上野:そういう若くして活躍している先輩社員がいると、採用上でもプラスになるのでは?

中島:そうですね。翌年からの採用基準にもなるし、彼らを見て「こんなにすごいの?!」って新入社員の目標になりますからね。賃貸仲介で2400万円売り上げる。すごいですよね。

上野:5年間でそのシフトチェンジは実にすごい。他にもまだお聞きしたいところですが、今日はこのあたりで。貴重なお話をどうもありがとうございました

中島:こちらこそありがとうございました。

今回、取材に応じていただいた企業様

株式会社第一不動産

株式会社第一不動産

設立
1983年10月
本社所在地
静岡県静岡市葵区田町5丁目10番地の1
事業内容
不動産売買・賃貸の媒介、不動産管理業、不動産コンサルタント業等
Webサイト
https://www.daiichi-fu.co.jp/