大掛かりな準備がいらないので、最短2ヶ月で開園可能

御社ではどんな体制で用地確保をしているのですか?

速水:現在は、5名体制で営業から商談まで担当していて、用地確保は土地所有者からの問い合わせがメインです。全国から月間100件ほど問い合わせを頂いて、そのうち検討に進むのが10件ほど。そして毎月2~3ヶ所くらいのペースで開園しています。

かなり早いペースですね。どういうルートで問い合わせが来るのでしょうか。

速水:1つめはHP問い合わせです。農地活用や生産緑地を貸したい方が、インターネットから検索流入するケースが多いです。
2つめはチラシを見た土地所有者様から直接問い合わせがくるケースです。土地・農地の維持管理に、苦慮されている事例も多く、いわゆる大地主のような方から利用者向けのチラシを見て問い合わせが来ることもあります。
3つめは不動産会社や金融機関、税理士法人が、遊休地や未活用地を持っているオーナーさんを紹介していただけるケースです。
あとは、お葉書やFAXを送ったり、YouTubeを開設したりして地道な営業活動もしています。

(左)農地活用事業本部 事業開発部 部長 速水将平様(右)菜園アドバイザー 竹内様。
取材地は、物流施設内に開園した「シェア畑garden南船橋」にて。

あっ!そういえば、うちのポストにもチラシが入っていたことがあります。

速水:ありがとうございます。利用者さんは半径2~3km程がターゲットなので、チラシ訴求が大きいですね。用地確保の方は、どちらかというと紹介や問い合わせがメインです。

問い合わせが来て検討開始から開園までどれくらい期間がかかりますか?

速水:おおむね2ヶ月ですが、行政関係の協議に時間がかかって半年かかる場合もあります。そこが一番時間の掛かる原因ですね。必要に応じて木の伐採や除草、耕作をしますが、大掛かりな土木工事はいりませんから開園準備自体はスムーズです。そもそも元が農地だったケースが大半ですから、整備工事には1ヶ月も掛かりませんよ。

SDGsにも貢献するとして、法人からの引き合いも増加

出店エリアの立地イメージや希望面積は?

速水:ふだん農業とは縁のない方がターゲットということもあって、都心のニーズは高いです。ただ、都心といっても駅から離れた場所や住宅立地でも成立するのがシェア畑の特徴です。駅から10~25分離れていて、200坪以上もあってコインパーキングにするには広すぎて活用しきれない、そういう場所が一番はまりやすいですね。あとは、立体駐車場の屋上等の一部を畑にした方が収益が見込めるような立地や、近隣にコインパーキングの競合が多くて収益が上がりにくい立地など、営業してご提案しています。

コインパーキングと比べて収益性で見劣りしないと聞いて驚きました。

速水:もちろん、駅前や100坪未満の土地であれば、コインパーキングの方が収益性が高いところがほとんどです。昨今、地域によってはコロナでコインパーキングや月極駐車場の稼働率が悪くなり、固定資産税の方が高くなってしまって、運用に不安を感じる所有者様もいらっしゃいます。各市町村区の判断によりますが、貸し農園にすれば固定資産税、都市計画税が下がるケースもあります。
実際、コロナ以降で、東京・大田区の駅から少し離れたコインパーキングを、シェア畑に変えた事例もあります。

法人の土地所有者様の場合、シェア畑を開園することによる収益性以外のメリットは何でしょうか?

速水:法人の場合、金銭的な動機よりも、地域活性化や地域コミュニティをつくりたい、集客に繋がる特徴的な施設を作りたいというニーズの方が強いと思います。最近ではSDGsやESG投資の文脈から、シェア畑を土地活用の選択肢として挙げていただく企業様が増えています。また、農業・野菜づくりは、絵になるので、マスメディアに露出しやすい側面もあります。

 なるほど。社会貢献的な側面からも注目されているんですね。

速水:あとは、インフラ関連の企業が保有する社宅やグラウンドを収益化しようという時に、単に売却するだけでなく、 地域コミュニティ的な付加価値を付けるため、社宅を賃貸住宅にリノベーションして、敷地内にシェア畑を開園した事例もあります。

面白いですね!他にもコラボ的な事業はありますか? 

速水:まだ、企画段階ですが、商業施設の一角でシェア畑を開園しつつ、収穫した野菜を利用者自らマルシェのような感じで販売するプロジェクトを進めています。

シェア畑で採れた野菜を利用者が販売するのは面白いですね。

速水:はい。野菜類は販売資格がいらないので、誰でも売ることができるんですよ。売るほど採れないケースもありますが(苦笑)、自分で作った野菜を買ってもらえるのが楽しい、と以前単発でやった時には大好評でした。

今後、法人向けの事業展開もありえそうですか? 

速水:企業の健康経営という文脈で、法人様向けの専用農園の事業化を模索しつつ、今後の展開としては、小屋付きの農園や、より都心の狭小地でも開園できるように新サービスの計画を進めています。

数年内に全国300農園を目指し、今後、都心部でも開設を加速

狭小地というと、最小で何坪くらいから開園できそうですか?

速水:現在は、この南船橋が約150坪で最小。川崎市多摩区にある約1,700坪が最大ですが、これから開園しようとしているのが約70坪くらいのコンパクトなシェア畑です。

それだけ小さな面積でもいけるなら出店可能な場所が増えそうですね。

速水:そうですね。今、法律面で協議中ですが、稼働率が下がった立体駐車場を貸し農園に用途変更して開設する計画や、屋上緑化など建築関係の緑化スペースになっている場所を畑に変更して(※)開設する計画もあります。

※自治体により条例が異なります。

駐車スペースが余っている商業施設は増えているので引き合いは多いと思いますが、用途変更は難しいものですか?

速水:引き合いは増えていますが、農地自体も農水省、国交省、税務関係の法令関係が複雑であり、商業施設の駐車場となると附置義務、大店立地法や消防法等と、色々絡みます。ただ、その辺りを、各種実績を基にして、上手くクリアしていくのが当社の強みでもあります。

今後の出店予定は? 

速水:現在は首都圏と関西中心ですが、来春に福岡、1年以内には名古屋圏に出店を予定していまして、数年以内には全国300ヶ所を目指しています。コロナ以降、需要は倍増していますから、かなり積極的に出店していく予定です。

まずは主要都市から、と。確かに地方や郊外では、既に庭や畑がありますからね。

速水:そうですね。特に23区内では農地がある世田谷区、杉並区、練馬区、と、城東の足立区、葛飾区、江戸川区くらいでしか開園できていないので、都心から時間をかけてシェア畑に通っていただいているお客様が少なくありません。ですから、そういった都心部はニーズが高いだろうと感じています。

弊社もそのお役に立てればと思います。本日は貴重なお話をありがとうございました。

速水・竹内:こちらこそありがとうございました。

今回、取材に応じていただいた企業様

株式会社アグリメディア

株式会社アグリメディア

本社所在地
東京都目黒区青葉台四丁目7番7号 住友不動産青葉台ヒルズ
事業内容
農地活用事業/農業HR事業/流通事業/経営支援事業
Webサイト
https://agrimedia.jp/