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新しい不動産の使い手たち ― インタビュー
株式会社アグリメディア
公開日:2022年1月13日
ユニークな不動産活用で急成長している注目企業を取り上げるこのシリーズ。今回取り上げるのは、手ぶらで野菜作りができるサポート付き貸し農園“シェア畑”を全国110ヶ所以上で運営する株式会社アグリメディア様です。コロナ禍での手軽なレジャーとして、食育への関心の高まりを背景に新規契約者が倍増。また、開設・除却コストが少ない上に、地域コミュニティの活性化やSDGsにも貢献できるとあって、企業不動産活用の選択肢としても問い合わせが増えているといいます。活用しにくいイメージのある農地や耕作放棄地、遊休地をなぜ収益化できるのか。今年の秋にオープンしたばかりの「シェア畑garden南船橋」にてお話を伺いました。
遊休農地を収益化する、サポート付き貸し農園“シェア畑”とは?
御社の事業内容からお聞かせいただけますか。
速水:当社では農地や遊休地をサブリースして、サポート付き貸し農園“シェア畑”としてリニューアルして利用客に貸し出し、収益の一部を土地所有者様にお支払いする事業を行っています。土地所有者様にとっては、農地管理の手間がなくなる上、活用しづらい遊休地や耕作放棄地の収益化が叶います。昨今は、とりわけ活用しづらい未接道地や商業施設の屋上、建物の緑化部分などの未利用地をシェア畑にする法人様も増えています。
農地活用は様々な法規制がからむので難しいイメージがありますが。
速水:農地もいくつか種類がありまして、宅地、農地、生産緑地、調整区域など、それぞれにからむ法令がございます。そのうち生産緑地は数年前の法改正で市民農園として貸し出しやすくなった背景があります。
シェア畑は、どれくらい出店しているんですか?
速水:首都圏と関西を中心に約113ヶ所(※2021年11月現在)開園しており、毎年20~30ヶ所、増えています。関東の開設エリアの目安は、国道16号線の内側が中心。もともとは市街地や市街化区域の農地を中心に開設していましたが、最近は畑の少ない沿岸部や緑地帯、ニーズの高い都心部などにも開設を加速しているところです。
菜園アドバイザーさんから知識を授けてもらえるのもシェア畑の特長ですよね。
竹内:全く知識がない方もいらっしゃいますから、何でも聞いてねと言うスタンスで初心者に対応するのが私たちの仕事です。種の蒔き方から育て方まで実演して教えますと、「あ、そうか!」とわかっていただける。そこそこ収穫もできるから「初めての野菜づくりで、こんなに獲れると思わなかった!」と皆さん喜んでくれますよ。
コロナ以降、新規契約者が2倍に増加
コロナ以降、利用者の変化はありましたか?
速水:問い合わせが約2倍に増えまして、約半分の畑でキャンセル待ちがいる状態です。稼働率6~7割だったのがコロナ後に完売した農園も少なくありません。
竹内:ステイホームが続くと辛いですからね。特にお子さんのいる家庭だとストレスが溜まるでしょうし。近所で三密を避けながらレジャー感覚で楽しめる点に目を付けた人が多かったと思います。今もその流れは続いていて、一時的な流行ではないと感じます。
ファミリー層の利用が増えたイメージですか?
速水:もともと30~60代まで利用者層は幅広いですが、この南船橋はコロナ以降で、30~40代が増えたかもしれません。
竹内:年配の方は、露地の畑の方が親しみがあるのかもしれないですね。
10年前の創立時には、こういう土地活用はあまり認知されなかったと思いますが、当時と比べていかがですか?
竹内:子どもに土と触れあう経験をさせたい、作物を収穫させたいという意識や、食育への興味が強い親御さんがこんなに増えたのかとびっくりしています。シェア畑がきっかけで農業にのめりこんで、もっと広い農地を自分で借りてやっていきたいという、就農予備軍の方も、5%弱くらいはいますね。
開設・除却コストが安く、土地の暫定利用にも最適
ここは、物流施設の敷地内にある畑なんですね。
速水:はい。大手不動産会社様が所有する物流施設内にある約150坪のコンテナ専用菜園で、1世帯に付き2つのコンテナが割り当てられ、1年間(契約延長可)野菜を育ててもらう仕組みです。
土地の所有者様とはどのような契約を結ぶのですか?
速水:全てのシェア畑で固定の賃借料を地主さんに支払い、稼働のリスクを当社が負う形で運営しています。その土地が農地か宅地かによって、賃借契約や業務委託契約など様々な契約種別がありますが、土地を丸ごと借りて収益の一部を支払うサブリースが一番多いですね。
畑と比較したコンテナ式の長所、短所はどんな点ですか?
竹内:利用者にとっての長所は、雨が降っても地面がドロドロにならないから、普通の服で気軽に来られること。雑草抜きや鍬を振って身体が汚れるのが嫌な方でも、ガーデニング感覚で手軽に野菜作りができます。
短所は、畑よりも狭いので作物の収穫量に一定限界があり、大きな野菜は路地の畑と比べると相対的に作りづらいこと。上級者には、少し物足りないかもしれませんが、ここの利用者さんは初心者が大半なのでさほど気にならないと思います。
速水:事業的な長所としては、こういう施設が完成した後に屋上まで大量の土を運んで畑を造成することはできませんが、コンテナなら可能です。2年間位の短期間だけ開園する場合にも、コンテナならば短期間開園にも対応しやすいというメリットがあります。
土地所有者様との契約期間は基本的に何年くらいになりますか?
速水:基本は3年間です。立地や事業性によって、2年~10年程度まで対応可能です。土地所有者様にしてみれば、土地の暫定利用としてコインパーキングを開設するのと同じような感覚だと思います。農園には、土地活用策や建設計画が決まるまでの暫定利用という側面もあるんです。
土地をただ寝かせておくのではなく、暫定的に開園して活用案が決まったら簡単に引き上げることができるわけですね。
速水:はい。例えば、駅前再開発予定地のうち余った土地を2年間限定のシェア畑として検討している事例もあります。まちづくりに寄与する暫定活用という文脈で、鉄道会社様と一緒に検討しています。
3年という短期間で収支が合うのは意外でした。
速水:資材や人件費などのコストはありますが、数百万円で済む程度です。また、3年後も契約延長するケースがほとんどです。とりわけ、農地活用しにくいとか未接道で活用しにくい土地の場合には、ほぼ全て契約更新していただいています。
設備投資も少ないしオペレーションもシンプルですよね。
速水:コインパーキングに比べると管理運営や投資コストが掛かりますが、コロナが追い風になって利用者は増えていますし、それに加えて料金単価も強気に設定しています。
例えば、大田区のとあるシェア畑は月額14,000円/坪ですから、月極駐車場よりも高く貸し出すことができています。
それだけ支払ってでも借りたい方がいるんですね。
速水:そうですね。目黒本町(東京都目黒区)では270世帯分の区画が3週間で完売しました。
今回、取材に応じていただいた企業様
株式会社アグリメディア
- 本社所在地
- 東京都目黒区青葉台四丁目7番7号 住友不動産青葉台ヒルズ
- 事業内容
- 農地活用事業/農業HR事業/流通事業/経営支援事業
- Webサイト
- https://agrimedia.jp/