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調査・マーケティング ― ポストコロナ時代の商業施設を考える Vol. 2
コロナ禍を経験したことによる消費者行動・価値観の変化
公開日:2022年2月24日
シリーズ第一弾では、ポストコロナの社会情勢が商業施設に与える影響について、いくつかの角度から考察しました。第二弾となる今回は、コロナ禍で消費者の行動や価値観がどう変わったのかを調査し、その結果をもとに予想される商業施設の今後について考えてみました。
INDEX
コロナ禍を経て、消費者行動・価値観はどう変わった?
コロナ禍における消費者の行動や価値観は、ポストコロナの商業施設に様々な影響を与えると考えられています。実際に商業事業者に尋ねてみたところ、以下【図表1】に示した12項目で「影響を受けると思う」との回答が返ってきました。
「影響を受けると思う」と回答した中でもっとも割合が高かったのが「巣ごもり消費の増加傾向が続く」、次いで「テレワーク(在宅勤務など)が今後も拡大」でした。また、2021年に目立って増加しているのが「消費者のSDGsを意識した行動が増える」です。
こうした結果を踏まえ、「テレワークの普及」「巣ごもり消費」「サステナビリティ」という、「コロナ禍による消費者行動・価値観の変化」を象徴的に表す3つのキーワードについて考察してみたいと思います。
テレワークの普及
日本でテレワークが注目され始めたのは、「働き方改革実現会議」がスタートした2016年ごろからでした。以降、大企業を中心にテレワークなどの取り組みが少しずつ進んできています。
2020年4月、第1回目の緊急事態宣言発出に伴い、政府から企業に対して出された在宅勤務要請は、いわばテレワークの大規模な社会実験となり、多くの企業がテレワークを経験する大きなきっかけとなりました。その後も度重なる緊急事態宣言発出を受けて、企業は出社率をコントロールしながらテレワークを続けています。
テレワークの普及は、消費者の行動範囲にも劇的な変化をもたらしました。在宅勤務の増加や全国一斉休校(2020年3月~5月)などもあり、いわゆる「おうち時間」が増加したのです。これにより、消費者の行動範囲はビフォーコロナ時代より大幅に制限・限定されることとなりました。
テレワークを推進する流れはコロナ禍収束後も続き、ビフォーコロナ時代の状況に戻るとは考えにくいでしょう。多くの企業は、今後のオフィス戦略についてコロナ収束後もテレワークを続ける意思を示しています(2021年12月22日公表「大都市圏オフィス需要調査2021秋」より)。そのため、メインオフィスとテレワークを組み合わせる「ハイブリッド型」が定着していく可能性は高いと思われます。
業種業態の特性や企業規模、経営者の判断などで、テレワークができない・しない企業も一定割合はあります。しかし、全体としてはポストコロナ時代においてもテレワークはさらに普及していくでしょう。
巣ごもり消費
Eコマースなどを利用した自宅にいながらのショッピングや、インターネットを活用した音楽鑑賞・映画視聴・ゲームなどは、以前から若者を中心に普及が進んでいました。コロナ禍における多くの消費者は、それらに加えて会議や学校・塾の授業、飲み会、パーソナルトレーニング、旅行体験、病院の遠隔診療などのほか、冠婚葬祭も自宅からリモートで参加・体験することが可能となりました。つまり、今までリアルでしか考えられなかった(それが当たり前だった)サービスや体験までもが、コロナ禍をきっかけに一気にオンライン導入へのはずみがついたのです。
コロナ禍で制限されてきた旅行や外食などのリアルイベントへの消費は、Go To トラベルやGo To Eatなどによる「リベンジ消費」として、一時的に大きく回復する可能性が高いでしょう。
一方、「おうち時間」は引き続き重視され、ビフォーコロナ時代より増加すると思われます。消費者が巣ごもり消費の利便性・快適性を手放すとは考えにくく、巣ごもり消費はコロナ禍による一時的なものにはならないと推測されます。
以下の図表は、家計消費支出の推移です。
2020年の家計消費支出(二人以上の世帯)は、1世帯当たり1か月平均約27万8千円で、2000年と比べると88%に落ち込んでいます。内訳をみると、巣ごもり消費に関連する食料品や身の回り品の支出額は増加しています。一方、これまで増加基調にあった小売関連・サービス(飲食業・娯楽業・サービス業など)、いわゆる「コト消費」と呼ばれる品群の支出額は減少し、2000年対比で97%となりました。また、「アパレル不況」の長期化で支出減少が続く衣料品は、2000年対比で53%まで落ち込んでいます。
2021年も東京都や多くの都道府県で緊急事態宣言などが断続的に発出されていたこともあり、ポストコロナ時代の家計消費の傾向を把握するには、もう少し消費動向を注視する必要がありそうです。
サステナビリティ
サステナビリティやSDGsについては、投資家が「SDGsを目標に取り入れているか」「SDGsにどう取り組んでいるか」を投資判断の材料にするという動きが先行していました。今後は消費者側もSDGsを意識して動くと考える事業者が増えています。
その背景として、コロナ禍によるパンデミック、近年の気候変動、貧困問題などを実際に目の当たりにし、自分事として「今後、何をしていくべきなのか」を考える事業者や消費者が増加していることが考えられます。
以下の図表は、電通が2021年に実施した第4回「SDGsに関する生活者調査」におけるSDGsに関する商品・サービスの今後の利用意向です。
これによると、現状では「レジ袋を使わずに済むよう持参する買い物袋等」がもっとも高く、2位以降の利用意向はそれほど高くはありません。
しかし、今後、消費者のSDGs認知度が向上するに伴い、ほかの項目の利用意向も上昇していくと思われます。