水面下で先に誘致打診
新築提案時にセットで提案すべき

新築建設は管理獲得の近道、立地がよければ高利回りに

不動産会社の経営では、売買仲介・賃貸仲介だけではなかなか安定しません。売買は金利など外部環境要因が大きく、仮に金利が悪化したり、不景気になると一気に売上が落ち込みます。また賃貸仲介は、繁忙期と閑散期の差が激しく、忙しい1-3月に必要な人員に対して4-12月の仲介手数料収入だけで安定的に給料を払っていくのは難しいものです。
そう考えると、賃貸管理は、毎月安定した収入が見込めますが、そう簡単に管理物件の獲得をする事は出来ません。自主管理の大家さんを回って管理受託を説得したり、他社の管理物件から管理受託したりするのは根気がいる仕事です。一方で、街には月極駐車場や空き地など、そのままでは相続税が高くなってしまう、土地活用に適した土地が沢山あります。ここに新築建設を提案すれば、仮に建設会社を紹介するだけで紹介料をもらえるだけでなく、その物件の管理を受託するチャンスが出てきます。自社に建築部門がなくても、新築の建設を提案する事は安定経営への王道と言えます。

賃貸仲介・売買仲介にも貢献する新築賃貸一棟建設

さて、新築のアパートや賃貸マンションの建設をして、管理を獲得していくことは、管理部門だけでなく、賃貸仲介・売買仲介の部門にとっても波及効果があります。
賃貸仲介にすれば、入居希望者に人気の「新築」を、募集物件としていち早くポータルサイトなどで掲載することが出来ます。築古ばかり掲載していても、物件の反響数を獲得するのは限界があります。新築や築浅は、検索されやすく、反響も入りやすい。例えば、競合他社には募集をさせず、専任で掲載すればそれだけ有利ですし、他社も公開するとしても、先んじて掲載すれば、反響獲得が可能です。いわゆる「引き物」です。
新築物件は反響が多い割に、市場相場よりも家賃が高めです。となれば、来店したお客様が「新築がいいんだけど、もう少し安い部屋はないかしら」「それなら当社の管理物件にはもっと安い物件もありますよ。少し築古ですが、綺麗にリフォームしていますよ」と、既存物件の内覧などに誘うことも出来ます。
また、人気の新築賃貸物件を借りようとすると、実は「購入したほうが、むしろ月々のローン返済金額のほうが安い」ということもありえます。新築賃貸の来店者が、売買の顧客になることもあり、波及効果が大きいのです。

中古車専門店より総合カーディーラーに

部屋探しの話ですが、では、クルマの購入にもたとえて考えてみましょう。管理会社は管理をしているので、どうしても募集物件は築古が多くなります。つまり、カーディーラーに例えれば、「中古車販売店」のようなイメージです。品揃えは、中古車ばかり。一方で新車を販売しているメーカー系列の総合カーディーラーは、最近、新車だけでなく中古も提案出来るようになっています。新車を買いに来て中古車を買う。中古車を買いに来た人が、思い切って新車を買う。となると、「中古車専門」という品揃えは、魅力を失い集客にハンディがあるのではないでしょうか。
と、考えると、毎年、新築を建設していく事は、会社の集客PRのためにも、着実に管理を増やすためにも大切です。

人気の「駅近」なら1階テナントはより高利回り

コロナ禍のテレワーク浸透で、「駅近神話」も薄まっては来ましたが、やはり新築物件は、魅力的な中心部ほど人気です。そして建築費が同額でも家賃は高く設定出来ますから、駅近や中心部ほど、高利回りな物件となります。
そして、駅近や中心部なら、1階はテナント需要があります。コンビニやカフェ、あるいは100円ショップやエステなど、様々なテナント需要が期待できます。居住用より高い家賃設定が可能で、長期入居が見込めるテナントは、新築建設では居住用と組み合わせると提案の幅が拡がります。

居住用で不人気な1階はテナントに人気

特に、居住用で空室になりやすいのが1階。特に交通量が多い繁華街では、人通りからの視線が居住者には気になりますし、盗難などのリスクもあると思われがちです。女性は1階の居室を避ける傾向があり、空室対策でも悩みの種となります。
一方、テナント企業側には1階は路面店として人気です。2階以上となると、いわゆる空中店舗となり、飛び込み客が少なく、1階は売上に影響するため家賃設定が高くなります。

新築建築時にはテナント誘致の内諾があると強い

さて、ここまでの考察でおわかりのように「すでに1階にテナントが入る事がある程度確実」という状況で、新築の居住用の賃貸マンションなど提案する事は、かなり有効です。なにより、「ほかの会社も提案に来ているよ」というケースでは、確実に「当社のほうが高利回りです」と言えるはずです。
地主を回って土地活用を提案している部署とテナント課が、「案外疎遠」という会社も少なくありません。テナントの専任をおいておらず、各店舗でたまにやるだけだとなおさらです。しかし、建設でコンペに勝つためにも、テナント担当の役割は「そこに出店したいというテナントの目星をつけてくる」事に他なりません。

水面下で、誘致打診を

こうした際は、「建築が当社に決まってから、出店するテナントを探す」という順番では、賃貸経営に大きなリスクが伴います。地主としては、「この1階に入るテナントを見つけてきてくれれば、おたくの提案で勝負してみるよ」と言うはずです。
となると、通常の募集では難しくなります。以前取引のあったテナント側の方に、「どこそこ街に新築の話があるが、出店の意向はありますか」と打診するほうがいい。あくまで水面下のアプローチです。そういうことをするためにも、日頃から、沢山のテナント企業のキーマンと情報交換やメールアドレスの取得をしておくことが望ましい。できるだけ、幅広く情報掲載をし、仮に成約とならなくとも礼を尽くしリレーションを確保していく。
建設案件のキーマンとしてテナント担当者が活躍していく会社は、管理物件を増やし、仲介の業績にも貢献できるのである。そうなれるよう、テナントの仕事を極めて行きましょう。