- 不動産会社向け
特別インタビュー
株式会社コスギ不動産ホールディングス(前編)
公開日:2023年1月27日
今回、上野所長が訪ねたのは南九州の玄関口、熊本県熊本市にあるコスギ不動産様。管理戸数(※)約17,000戸を誇る熊本トップクラスの総合不動産会社です。今回お話を伺った専務取締役 小杉堅太氏は、東京都内のテナント専門の不動産会社で経験を積んだ後、2011年に同社に入社しテナント課を立ち上げ、現在も事業用不動産の賃貸や売買の分野で陣頭指揮を取られております。
熊本地震から6年が経ち復興が進む現地では、世界最大の半導体メーカーTSMCの誘致や熊本空港のリニューアルなど、大きな経済効果が見込まれるニュースが次々と飛び込んでいるそうです。熊本と共に成長するというビジョンを掲げる同社の、事業用不動産への取り組みについて伺いました。
※賃貸物件管理戸数(2021年2月現在)
震災からの復興、賑わう中心街
小杉さんが東京から熊本に戻ってきて何年になりますか?
もう12年になりますね。前職がテナント営業だったもので、いまだに住居よりもテナントや事業用(不動産)が好きですね。
戻ってきて6年目に熊本地震が起こった、と。
そうですね。当時、震災後1ヶ月間は混乱が続いて、どうやって生きていくか、どうやって管理物件の入居者様に安心安全に住んでもらうかということで精一杯でしたね。
私の印象では、街中は被害が少なかったような。
たしかに被害が大きかったのは益城や阿蘇方面ですが、結構中心部も被害はありましたね。古い物件もありますから。2、3ヶ月経ってやっと混乱が落ち着いてきた頃に、復興需要で各地から人が集まってきて復興バブルに突入したのを覚えています。
さっき中心部を歩いて回ったんですけど、人口に対して商店街が広いんですね。大学が多いから若者も多いし、飲食街も華やかですね。
そうですね。特に夜はビックリするほど人が多いですよ。最近は少し空室が増えてますが、それでも他県と比べたら熊本はかなり頑張ってる方だと思います。
とはいえコロナ禍で打撃を受けたんじゃないでしょうか。
コロナで飲食店が厳しいですから、中心部の入居率は苦戦していますね。
当社のグループ会社でジャナスというテナント専門の仲介・管理会社があるんですが、こちらも入居率は停滞していますから。
テナント専門のグループ会社があるんですね。
はい。グループ会社のジャナスは熊本中心部にある飲食ビルのリーシングと管理に特化していて、コスギ不動産のテナント課はロードサイドなどの事業用不動産がメインです。
中心部と郊外ではテナントの業態が多少違うので、会社を分けています。
テナントと居住用のノウハウの違い
でも、店舗テナントは居住物件とリーシングのノウハウが違うから、やりたがらない不動産会社もいるじゃないですか。
全く違いますね。
居住物件はある程度、手続きや契約がパッケージ化できますから、業務がそこまで複雑ではありません。
でも、店舗テナントの場合、契約書類が案件ごとに全く違うので、文言ひとつとってもオーナー寄りになったりテナント寄りになったりします。例えば、賃料がオーナーの希望より低ければ契約書の内容はオーナー寄りにするとか、バランスを取りながら商談を進めなければいけません。
そういう意味では、店舗テナントの方が幅広い知識が必要だし、時間も掛かります。
テナントの場合は物件によって売り上げが大きく左右されるし、募集賃料も応相談だから商談がシビアになりますよね。
居住物件と違って店舗テナントは相場がないと思います。
例えば、それまで月極駐車場だった土地があるとします。月額5,000円で20台貸し出しても10万円にしかなりませんが、コンビニに貸せば月額100万円で借りてもらえることだって十分ありえる。つまり、その土地にぴったり合うテナントを誘致することで、最大の収益を上げることができます。
住居だったら「隣のアパートが月5万だから、うちは月4.5万円くらいかな」みたいに情報がオープンなため、簡単に相場が決まりますが、店舗テナントはそうはいきません。
その、一番高い賃料を出してくれるテナントを誘致することが難しいじゃないですか。熊本にいたら東京本社の店舗開発部とやり取りするのは難しいのでは?
そこがテナントの一番面白いところかなと思うんですけどねぇ。
出店情報を掴み、オーナーへ直営業
小杉さんは東京都内のテナント専門の不動産会社で経験を積まれていますよね。店舗開発部へのアプローチはその人脈を活かして?
それはあまりなくて。
例えば「○○(具体的な屋号名) 店舗開発」とネット検索で連絡先を調べて、直接電話することも少なくありません。
そこは、どぶいた営業なんですね!
そうですね。既に空いている土地は、情報が出回っていてあまり価値がないので、まずは出店意欲の強いテナントの出店ニーズを伺ってから、そのニーズに合うような土地オーナーさんに直接営業かけることが多いですね。
結構大変ですね。
まぁ、でもそこが一番面白いところですし。
それだけではなくて、建貸し案件の際に、借入れを躊躇するオーナーさんに代わり、土地を当社が借りて物件を建てて貸す方式もやっています。
どんな土地や建物に一番価値を感じるのかはテナントによって様々です。あるテナントにとっては魅力的な土地でも、他のテナントにとっては全く関心を持ってもらえないケースもあります。
テナントとオーナーをうまくマッチングすることで当社の付加価値も上がるはずですから。
不動産業の楽しさを味わえるキャリアステップ
とある不動産会社の社長さんは「住宅の方が手間がかからないから、テナント物件はやらない」とおっしゃるんですが。
たしかに事業用不動産は、ひとつの案件に費やす時間が住居よりも長くなりがちなので、案件の収益性は常に考えないといけません。小さい案件を時間かけてやるくらいなら、居住物件のようにある程度パッケージ化された案件を沢山やる方が収益は上がるでしょう。
でも、社員からするとずっと住宅ばかりだと面白くないんですよね。
ええ。何年も同じ業務の繰り返しだと飽きちゃいますよ。
当社の場合、まず新卒は賃貸住居の部署で5~8年経験して、その後、店長になる社員もいれば、より難易度の高いテナント課に異動する社員もいます。
やっぱり大きな金額が動く案件って面白いじゃないですか。時には「この店、俺が誘致したんやで!」って友達や家族に自慢してみたり。
ワクワクしますよね。
やっぱり仕事は楽しくないといけないなと思っているので。
社員からするとキャリアが色々ある方が飽きない。小杉さんと以前からお付き合いしていて感じるのは、社員を大事にしているということ。(熊本から遠く離れた)東北のとある企業のコンサルをしている時に言われたことがありますよ。「うちも小杉さんみたいになりたい」って。
それは嬉しいですね。ありがとうございます。当社のモットーのひとつに「大家族主義」というのがあって。要は、みんなで仲良くやろう、ワクワクすることをみんなでやろうよ、ということを大事にしています。
テナント誘致は地域活性化へと繋がっている
例えば、新しくコンビニやファミレスができるだけで街の景色がちょっと変わるじゃないですか。そういう意味ではテナント誘致はある種の社会貢献という側面もあると思っていて。
そうですね。熊本で事業をしている立場としては、地元の成長がなければ当社の事業も拡大することができません。企業理念のひとつに「熊本と共に成長する企業を目指します」と謳っているとおり、熊本と一緒に成長していきたい、という気持ちが大きいです。
何にもない場所でも、例えばしまむらさんが一軒出店するだけで町の景色が変わるんですよね。他のテナントも出店するようになって、家族連れが出歩くような場所になる。それって地域にとってすごく大事なことじゃないですか。
街が変わるという意味でいえば、10年前に地元企業が所有する約2万坪の土地を売却する話が出た時に、当社が手を上げて購入したことがありました。
約200世帯の住宅分譲と3000坪の事業用地にショッピングモールを開発したのですが、このような街づくりプロジェクトで分かりやすく街は変わりますよね。
イイじゃないですか!まさに醍醐味ですね。
そうですね。 そこが一番楽しいところだと思いますし、社員にもそういう付加価値を高める視点を持ってもらいたいですね。その方が社員自身のスキルも伸びますし。
今回、取材に応じていただいた企業様
株式会社コスギ不動産ホールディングス
- 創業
- 昭和57年7月1日
- 本社所在地
- 熊本県熊本市中央区九品寺2丁目6-57
- 従業員数
- 421名(グループ全体) 2022年8月時点
220名(株式会社コスギ不動産 単体) 2022年12月時点 - 事業内容
- 不動産売買、不動産売買仲介、宅地分譲、賃貸仲介、賃貸管理、不動産証券化、資産運用コンサルタント、第二種金融商品取引業
- Webサイト
- https://www.kosugi-f.com/