収益性の高い建築・売買案件にも注力

働く場所や買い物する場所がなければ人口が減って居住物件を借りる人も減ってしまう。だから、そこに関わる醍醐味は忘れてはいけないと思うんですよね。

ただ、うちのテナント課もちょっと伸び悩んでいて。課題のひとつが賃料の低い案件をどうさばくか。

マンションの1階にある、賃料10万円くらいのテナント物件があるんですが、このサイズの物件って労力がかかる割に手数料が少ないという悩みがあります。儲けが少ないからと言って、管理を受託している以上、リーシングしないわけにはいきませんし。

手間の割に儲からないと。

(賃料が)10万円の案件でも100万円の案件でも基本やることは同じなので、生産性は大きく違ってきます。

数万円の物件でもオーナーさんにしたら大事な一件ですもんね。

はい!その通りです。

しかし、もうちょっと効率的な業務を模索しないと、生産性は上がりませんしね!

テナント課は今何人で?

今、2人で、今月(インタビュー時の12月)の契約は17件しているんですよ。

それはきついでしょ⁉

いやぁ、きついですよ!本来ならMaxでも月間5件だと思っているんです。

借地案件は建築を絡めたり、サブリースなどさらなる付加価値を併せて提案しないと不動産業のビジネスモデルが成り立ちません。

そう。建築が絡んでくるとペイしますよね。

例えば、サブリースは一度契約すれば効率的に継続して収益が見込めます。だから、今後はサブリース案件にも力を入れたいなと思っているところです。

世界最大の半導体メーカーが2024年開業、関連企業が相次いで進出

先ほどの例で言うと、1階テナントが空室のマンションってちょっと物騒ですよね。

以前だったらそういう数十坪サイズの物件はコンビニさんが借りてくれましたが、熊本が車社会ということもあって、今は土地が500~600坪、車の出入りがしやすくて店舗面積70坪はないと検討してもらえません。コンビニも大型化してきて、マンションの1階物件ではニーズが合わないみたいですね。

そこで今面白いのが宅配ピザ屋さんですね。

来客メインじゃないので、配達用のバイクだけ駐車できれば良いですからね。

それ以外にも、最近はUber Eats とかに対応したゴースト店舗も増えていますよね。熊本では成立するでしょうけど、例えばこれが人吉だったら難しいというか。そう考えると熊本は町のサイズがちょうど良いですよね。

はい。都心部と自然が近くにあって、人口もほどよく集中していて。

何より最近はTSMC(※)の話題で、盛り上がっていますよ。

TSMC?

そう。世界最大の半導体企業です。設備投資額が約1兆円で、国も巨額の補助金を出して誘致が決まりました。現地の雇用人数は2,000人程度ですが、サプライチェーンと呼ばれる下請け会社もバンバン熊本に来ていて、これはすごい事になりますよ。

東京からも事務所や工場を作りたいと頻繁に相談が来ていて、実際、3~4年前の3倍にまで地価が上がっているエリアもあるくらいですから。

それはすごい!一大バブルになりそうですし、今後はインバウンドも期待できそうですね。

※TSMCとは台湾に本社を構える半導体受託生産の世界最大手。熊本県菊池郡菊陽町で約23haの新工場建設が進んでおり、2024年末に操業開始を予定している。日本政府はおよそ1兆円の投資額のうち約半分にあたる最大4760億円を補助することを決定。既に県内では関連企業の進出が相次いでおり、大きな経済効果と地域活性化が期待されている。
(参考)TSMC、熊本・菊陽町に建設中の工場建物など初公表/日経新聞

情報をいち早くキャッチする努力を怠らない

ロードサイドの状況はいかがですか?

長年地元密着しながら経営している分、仲の良い不動産オーナーはいますので、案件がハマれば強いです。ただ、営業力含めまだまだこれからだと思っています。

ロードサイドの場合、「半年後にここが空きそう!」みたいな水面下の情報が得られないと難しいですよね。

なので、リーシングをする時に、必ず管理までいただく努力をしています。

管理を受託できればよりテナントに近くなるので、退去の際も情報をいち早く入手できる。もしテナントが退去したとしても次の客付けがすぐできれば、オーナーの空室リスクも減少しますから。

そこ重要ですよね!早めにテナントの調子の良しあしが察知できれば、次の動きが早めにできる。

そうなんです。調子が悪ければ賃下げ交渉とか何かしらのサインがテナントから来るじゃないですか?そういう情報をいち早くキャッチして、次の動きを取らないと。

素晴らしい。

情報がつかめたら「ここが退去するなら、隣の土地と併せてもっと大きなテナントを誘致できるなぁ!」とか「この広さならあのテナント良いんじゃないかな?」とか、オーナー提案の幅が広がりますよね。なにより、そういう風に戦略を考えることで付加価値が生まれ、私たちも楽しいと感じます。

人材育成・採用にはワクワク働ける職場づくりが重要

そういうことを面倒くさがる方もいますけど、それが不動産業の醍醐味ですよね。

最近、考えているのがKPIをどこに設定するのかということ。

売上げだけを目標にすると目の前の小さな案件に行きがちになるので、僕は“仕事の面白さ”を指標にすべきだと思うんです。それをどう数値化をするのかはまだ考え中なんですけどね。

でも、そういう評価指標があれば、大型案件を狙おうとする発想になりやすいだろうと。

おっしゃる通り、難易度や地域貢献度みたいな評価指標とか目標があっても良いですよね。昔みたいに歩合目標や件数目標だけを10年以上追っていたら社員が煮詰まっちゃいますよ。

今の時代、就活サイトや転職サイトを見れば社員の口コミがすぐ見れちゃうじゃないですか。そういう意味でも、社員がワクワクして働ける状態を作った方が良いと思うんですよね。

私がコンサルをしていて感じるのは、採用時の魅力をどう伝えるかってことなんです。売り上げ目標何年連続達成!ってアピールしても、新卒学生にはピンと来なくて。一方、「どこどこにある大型ショッピングモールは当社が作った」となると、学生たちはすごく魅力を感じてくれる。

確かにその方が学生には分かりやすいし、よりモチベーションの高い求職者が集まってくれるように思いますね。

熊本各地で進む開発、経済効果に高まる期待

中心部も健闘しているとはいえ、商店街からロードサイドにトレンドが移りつつあるのでは?

そうですね。現段階では中心部の空室がちょっと増えて、リーシングに苦戦していますね。

ただ、来春、熊本空港がリニューアルオープン(※)したら、人の流れが結構変わると思いますよ。

たしかに韓国や中国から熊本に直行便が来るようになると変わりますね。インバウンドも増えるんじゃないですか?

熊本が“東南アジアにおけるLCCのハブ”のような立ち位置になることを期待する声もあるようです。空港アクセス鉄道を新設する構想もあるようで、それが実現して県内各地や九州、東京とのアクセスが良くなれば、熊本がそれらの地域とのハブになれる可能性があると思います。

出典 阿蘇くまもと空港 https://www.kumamoto-airport.co.jp/new-airport/

御社の「熊本とともに」というモットーの元、テナント課を軸に街の成長に貢献するということですね。

そうですね。冒頭でお話したように、自分がテナント畑出身なので思い入れが強いですし。事業用不動産の売買にも力を入れて、ゆくゆくはコスギ不動産のテナント課を少数精鋭の強い営業部隊にしていきたいと思います。

本日は貴重なお話をありがとうございました。

こちらこそありがとうございました。

※国内線と国際線を一体化した新たな旅客ターミナルビルが2023年に開業予定。なお、現在、熊本空港からJR熊本駅までは空港リムジンバスで約1時間かかってしまう。このアクセスを改善させるために、熊本空港からJR三里木駅までを繋ぐ空港アクセス鉄道の新設が計画されている。
(参考)阿蘇くまもと空港 新旅客ターミナルビル着工/熊本国際空港株式会社

今回、取材に応じていただいた企業様

株式会社コスギ不動産ホールディングス

株式会社コスギ不動産ホールディングス

創業
昭和57年7月1日
本社所在地
熊本県熊本市中央区九品寺2丁目6-57
従業員数
421名(グループ全体) 2022年8月時点
220名(株式会社コスギ不動産 単体) 2022年12月時点
事業内容
不動産売買、不動産売買仲介、宅地分譲、賃貸仲介、賃貸管理、不動産証券化、資産運用コンサルタント、第二種金融商品取引業
Webサイト
https://www.kosugi-f.com/