- 不動産会社向け
特別インタビュー
有限会社レグ(前編)
公開日:2023年5月26日
今回、上野氏がお話を伺うのは、福井県で創業24年になる有限会社レグの代表取締役 中屋敷隆夫様です。同社の特徴は、なんといっても土地活用メニューのユニークさです。コインランドリーしゃぼんのFCをはじめ、当時まだ珍しかったペットと一緒に住める賃貸住宅、どこへでも動かせるトレーラーハウス事業など、他社ではなかなかお目にかからない事業ばかりが並びます。その背景には、100人100通りの地主さんに対して、ベストな土地活用法を提案したいという思いがあるといいます。そして、人口減少が進む地方の中小企業だからこそ、大手にできない事にチャレンジしないと生き残れないという現実も。先進的な事業が生まれた経緯や、安定した利益が得られるコインランドリー事業、土地活用に対するお考えなどを伺いました。
土地活用って面白い!
上 野:中屋敷さんがこの業界に入ったのはいつごろですか?
中屋敷:30年くらい前ですね。ちょうど賃貸管理が無償だったのを有償化に切り替えようとしていた時代でした。
上 野:そうそう。昔は管理料ってなかったですよね。
中屋敷:昔の地主さんは「物件仲介させているんだから管理はただで良いでしょ?」って時代でした。
ザイマックス:圧倒的に貸主側の立場が強かったんですね。
中屋敷:繁忙期には、学生マンションなんて10数人が順番待ちしていましたし、物件がないから「内見なんかしないで、今決めないと(物件)なくなりますよ!」って世界でしたからね。
僕、この業界に入る前は製造業で働いていたんですが、秒単位で製造管理するくらい厳しい会社だったんですよ。それなのに、転職してこの業界に来てみたら1件重説するだけで「ハイ、4万円ね」って売上が入ってくる。「なんて世界だ?!」って驚きましたよ。
それからしばらくして建築営業の部署に異動になりました。平成4年度の税制改革をきっかけに地主さんたちが節税対策でいっせいにアパートを建て始めるようになりまして、大手ハウスメーカーと一緒に地主回りをして「アパート建てませんか?」って営業をしました。
上 野:でも、アパート向きの土地ばかりがあるわけじゃないですよね?
中屋敷:ええ。どうしてもアパートに向かない土地とか逆に店舗向きの土地、色々あります。
そこに土地活用提案の面白さを感じて、数年後に独立しました。その時に始めた事業のひとつが、コインランドリーしゃぼんのFCです。
上 野:御社がFCで?
中屋敷:ええ。しゃぼんは当時から中部近畿一円でボランタリーチェーンを展開していたんです。正規代理店から専用機械を買いさえすれば屋号を名乗ることができて、ロイヤリティは発生しません。ほとんどの場合、運営者は地主さんですが、場合によっては土地だけ借りて自社で建てたり、空き物件に出店したり、色々なパターンがあります。良い店舗なら4年で償却できていました。
上 野:それはすごい!ビジネスとしては高利回りですよね。
中屋敷:うちの標準店舗(約30坪、機械25台設置)の場合、投資額が約4000万円。
“4こいち(※)”のアパート1棟 建てるのとほぼ一緒ですからね。アパートの利回りでいったら5万円の家賃で4部屋、年間240万円。結局、利回り5%も行かないでしょ?
※4こいちとは、2階建てで4戸の世帯が入る軽量鉄骨アパートのこと。雪が多い北陸地方では、技術的に建築基準法を満たす多層マンションを建てるのが難しく、昔から”4こいち””6こいち”と呼ばれる低層アパートが多く建てられていた。
上 野:アパート1棟で表面利益が10%も出ませんよね?それがコインランドリーなら表面利益25%で4年で回収できるんだから、すごく面白い!
中屋敷:時にはアパートにも店舗にも向かない土地があります。そういう場所に無理やりアパートを建てるんじゃなくて、「ここで何ができるだろう?何ならこの土地が活用できるだろう?」と考えるんです。
上 野:アパート建築しかノウハウがないから、それしか提案しない/できない会社もありますが。
中屋敷:うちのVIPの大地主さんは、アパート、店舗、借地、あらゆる種類の不動産を持ってるわけですよ。だから、必然的に(アパート以外も)全部やるしかない。多くの地主さんは一度信頼関係ができれば、ずっと途切れずに相談を持ち掛けてくれます。だから、それを裏切らないように、あらゆる土地に対して活用案をアドバイスしつづけてきました。
上 野:たしかに地主目線でみれば、事務所や倉庫や店舗など、色々な提案があっていいはずなのに、「うちはアパートしか提案できません」というのはおかしいですよね。
でも、特に都心では、賃貸仲介・管理しかやらない会社が少なくありません。
中屋敷:それは首都圏だからできること。地方では、賃貸仲介と管理オンリーではやっていけません。
ザイマックス:たしかに、車で地方の幹線道路を走っていると、店舗立地として一級品のロードサイドなのに唐突にアパートや賃貸マンションが建っているケースがあって、すごくもったいないと感じることがあります。
上 野:今まで取材した第一不動産さんや桂不動産さんは、もともと賃貸仲介から始まった大きな会社で、住居の延長線上でテナントも扱うようになっていったという順序ですが、御社はちょっと特殊ですよね。
アパートありきではなく、どうすれば土地をより良く活用できるか重視した結果、コインランドリーやテナントなど幅広い提案メニューが増え、アパートも数あるメニューの一つだった、と。
なぜ多くの店舗開発担当者から頼られる存在になれたのか?
ザイマックス:ちなみにテナント仲介についてお聞きしたいんですが、御社は、福井で出店計画のあるナショナルチェーンなどのテナント企業から相談を持ち掛けられることが多いと思います。御社がこの地域で店舗開発担当者から頼られる存在になれたのは、なぜなのでしょうか?
中屋敷:やっぱりしゃぼん(の知名度)のおかげです。あとは、大手メーカーや建築会社が地元の仲介業者向けに開いてくれた交流会。そこで、どういうチェーン店が福井に入ってきたいと思っているのかを学ばせてもらったのと、テナント企業の店舗開発担当者や開発業者と知り合う機会を得られた。テナントの商圏については、しゃぼんを店舗展開するうちにおのずと学びました。
そうやって築いた人脈の中で、「こういう土地あるんですけど、何かできませんか(出店できませんか?)」という形で繋がりが増えていったと思います。
不動産に付加価値をつけるためチャレンジした、ペット共生型マンション
上 野:御社の他のユニークな事業として、ペットと一緒に住める賃貸住宅がありますね。
中屋敷:はい。26年前、県内初のペット共生型住宅を建てました。なぜかというと、普通のアパートを建てても入居者を集めるのが難しい立地だったから。だから、何か付加価値をつける必要があったんです。そのために、うちはあまりよその不動産会社さんがやりたがらないような事にチャレンジしようと。
昔の話ですが、当時はペット、高齢者、外国人は大家さんの立場からするとできれば入居させたくない方々、という価値観があった時代だったんですよね。
上 野:そうですね。ペットだったら、普通、爪を研ぐ、臭い、吠える。いろいろクレームが出るでしょう。
中屋敷:ええ。そこで、ペット共生型住宅のノウハウを伝授してもらおうと、その業界のパイオニアである埼玉県のペット共生型マンションで有名な管理会社さんに飛び込みで弟子入りして、ペットが家族の一員として室内で一緒に住める環境づくりのノウハウを学びました。物件には傷がつきにくい床材を使ったり足洗い場をしっかり付けたり、入居する時にはペット検診もしっかり受けてもらいます。
上 野:そこまでやるんですね!
中屋敷:それでも最初は地元で建築反対運動が起きましたよ。昔はペットは外で飼うのが当たり前でしたから。2年くらい四苦八苦しましたが、少しずつ口コミで問合せが来るようになって、いけそうな手ごたえをつかみました。
上 野:建物が古くなって競争力の落ちた物件だからペットOKにしちゃおう、という発想はよく聞きますが。
中屋敷:そんな発想じゃだめだと、私もその埼玉の管理会社さんに弟子入りしてカルチャーショックを受けましたね。
ペットの病気とか更に詳しい知識をつけるため上級愛玩動物飼育管理士の資格を取ったんですが、これが意外にも高齢者住宅の運営に生かされています。寂しさからペットを飼いたがる高齢者の方って意外に多いから。
上 野:すごい!!じゃ高齢者向けのサービスも?
中屋敷:はい、地元の介護会社と提携して、入居者の見守り業務をお願いしています。高齢者が増えている今の時代ですから、行政の方からも好評なんですよ。
中小こそ大手のやらない事をやらなくちゃ!
上 野:お話を聞いていると、どれも大手のやらない事をやっていますよね。
中屋敷:そうなんですよ!ブランド名のない中小企業が大手と同じことをしても、商圏を取り合って苦労するだけ。
だから、大手が面倒くさがってやらないことにチャレンジしようじゃないかと。
上 野:大手だと、管理戸数や店舗数、とにかく数自慢の人もいらっしゃいますが。
中屋敷:正直私はそこに興味ないですね(笑)。
上 野:何を建てるかの提案は、とにかく場所ありきだと。
中屋敷:そう。僕はとにかく土地活用がしたいんですよ。(アパートだろうがテナントだろうが)ゴールがただそこだったというだけ。
上 野:大手がやらない事というと、戸建て賃貸もそうですね。
中屋敷:中型~大型犬を飼うにはどうしてもスペースがいるということで、提案しはじめたのが戸建ての賃貸住宅なんですよ。
上 野:戸建て賃貸、今ようやく増えてきましたけど、昔はハイリスクだからと市場にあまり出回りませんでしたよね。
子どもが走っても怒られないとか、物音が気になるからマンションは嫌だとか、昔も今もニーズはあるんですが。
中屋敷:そうそう。最近、アパートが売れなくなってきたから、どの会社もやり始めましたけどね。うちでは既にペットOKの戸建て賃貸が120棟あります。それを1Kに置き換えたら何戸になります?そう考えると、管理戸数ランキングにあまり意味を感じなくなります。
コンテナ事業 ~動かせる不動産、その名も”可動産”~
ザイマックス:御社はコンテナ事業もされていますが、居住用のトレーラーハウスだけじゃなくてテナントなんかもできるんですか?
中屋敷:ええ、チェーン店のメロンパン屋さんや美容室、とあるピザ屋さんはこの前はイベントで東京まで持って行きました。
コンテナにタイヤを付けたトレーラーハウスなら自由に動かせますからね。将来的に賃貸に出したいとか、相続で売却しないといけなくなったとか、開発に巻き込まれそうだとか、何かしら事情が発生した時に簡単に動かせるのが魅力です。
上 野:それは面白い!
中屋敷:それで名付けたのが、不動産じゃ絶対できない土地活用ということで”可動産”。
不動産の最大のデメリットでもあり、絶対にできないのはロケーション変更です。動かすことができるトレーラーハウスなら、売上が悪かったり、商圏が変わったりしたら、タイヤがついているので動いちゃえばいいですからね。
例えば、この左の写真の土地はなかなか借り手が見つからなかったんですが、発想を変えてトレーラーハウスで募集をかけた所、ピアノ教室さんの入居が決まりました。子供向けのピアノ教室って、6年くらい習って子供が大きくなると辞めちゃうんですよね。そうなったら、ヤドカリ戦法で子供のいる商圏にまた動けるじゃないですか。
上 野:これはすごいですね。トレーラーは初期費用が安いので、個人で商売を始めたい人にはちょうどいいのかもしれませんね。
中屋敷:そうそう。テスト的に始めてみて、ダメだったら売り払っちゃえばいい。
上 野:中屋敷さん自身が仕事を楽しんでるのが伝わってきますね。3年前にお会いした時、「いまコインランドリーやってるんだよ」ってスマホで監視カメラの画像見せられた時は「なに言ってんのかな、この人?」って思いましたけど(笑)。
今回、取材に応じていただいた企業様
有限会社レグ
- 創業
- 平成11年10月15日
- 本社所在地
- 福井県福井市北四ツ居1丁目25-20
- 事業内容
- 不動産仲介業、コンテナハウス事業、不動産コンサルティング業等
- Webサイト
- https://www.reg.co.jp/