これまでの日本において、商業施設の使われ方は時代ごとに変化しています。これからの商業施設を考えるための参考として、2000年以降に立地法廃止届が出された137の商業施設(物販店舗面積が10,000㎡以上)について、どのように使われ方が変化しているのかを調査しました。
ただし、廃止届は100%提出されているものではないため、すべての施設をカバーしているわけではありません。また、用途未定施設などは除いています。

商業施設は様々な用途に変化している

下図は、全国における商業施設の使われ方を、その用途によって色を変えて示したものです。

(出所)東洋経済新報社「2016 全国大型小売店舗総覧」および経済産業省データよりザイマックス不動産総合研究所にて作成

青色の点は、立地法廃止届を出す前と後の用途がともに物販小売業中心の商業施設です。全国に90施設あり、構成比としては52%を占めています。
緑色の点は、届出前は物販小売業中心の商業施設であったものの、届出後には商業施設に加えて他用途のある複合施設へと変わったものです。25施設あり、構成比は14%でした。
赤色の点は、届出前は物販小売業中心の商業施設、届出後の用途は物販小売業を含まない他用途施設となったものです。58施設あり、構成比は34%となっています。(灰色の点は2015年時点で営業を継続している既存の商業施設)

届け出後の用途が商業施設および複合施設のものは、関東・近畿・中部地方などの大都市圏に多くあります。一方、届け出後の用途が多用途施設であるものは、地方都市に比較的多く見られます。

多用途施設への変化事例として、もっとも多いのはマンション(19施設)、次いで公共施設(8施設)、パチンコホール(8施設)、ホテル(3施設)、オフィスビル(3施設)などが挙げられます。

関東圏における商業施設の変化の特徴

次に、関東圏(1都6県)に限定して商業施設の使われ方の変化を見てみましょう。

(出所)東洋経済新報社「2016 全国大型小売店舗総覧」および経済産業省よりザイマックス不動産総合研究所にて作成

図によると、立地法廃止届が出された商業施設が様々な用途に変化していることが分かります。また、ターミナル・駅前・駅近に立地している施設が多いという特徴も見て取れます。

今回は、立地法廃止届が出された物件にフォーカスしましたが、ザイマックスグループにおいても商業施設の使われ方の変化に関わる業務を行っており、今後、別のレポートで紹介したいと考えています。

既往研究として、国土交通省が平成24年に発表した「中心市街地の空きビル活用及びリニューアル事例調査」報告書(*3)もありますので、ぜひ参考にしてみてください。

*3 中心市街地活性化資料集・事例集「中心市街地の空きビル活用及びリニューアル事例調査」