消防計画、セルフレジ…無人店舗の意外な苦労

ほんたすの立ち上げで苦労したことは?

沢山ありますが、なにしろ前例がないので消防署から営業許可を得るのが大変でした。例えば、消防計画を出すにしても、人がいない状態でどうやって初期消火をするのかとか。日本では無人店舗がまだ一般的ではないので、オーナー様の理解を得るのも大変でした。
あと、意外に苦労したのはセルフレジです。エラーが出ても従業員が対応する前提で造られているので、無人店舗での導入を想定して設計されていないんです。

普通の書店よりも店内がよく見えるようになっていますが、店舗設計にも何か工夫がありますか?

とにかく事故が起こらないように、また、万が一、何か起きてもすぐに察知できるように、店内の様子がよく分かる設計にしました。
売場づくりでは、“1分でトレンドが分かる “をモットーにしています。本の良さは、正確な情報を提供できること。ほんたすでは、それをいかにスピーディに提供できるかを重視して、店の外からも、その時々のトレンドが一目で分かるようなラインナップにこだわっています。それが毎日変わるだけでもお客さんに刺激を与えられるし、いずれ入店に繋がると期待しています。
また、書店に通い慣れていないライトユーザーでもサクッと商品を手に取れるレイアウトにも工夫を凝らしています。

画像提供:丹⻘社 撮影:PIPS

大きなガラス面や背丈の低い棚、明るい照明等によって、死角を作らず事故が起こりにくい設計にした。

店内をあえて丸見えにすることで安心できる一方、監視カメラで見られることについてお客様の反応はいかがですか?

意外と抵抗感のない方が多いです。自分より先に入店者がいることによって、入りやすくなる心理があるようです。逆に店内の様子が見えないと、いっそう入店ハードルが上がってしまう可能性があります。そこも実証実験店として検証していこうと思っています。

無人店舗のノウハウを既存書店や他業種にも提供

今後の展望をお聞かせください。

1つめは、3年後100店舗を目標にほんたすの出店を進めて、あるべき場所に書店がない現状を打破することです。また、無人書店の認知拡大のためにも超好立地に出店するのが大事だと思っています。
2つめは、既存書店にほんたすのノウハウを提供し、持続可能な経営モデルを築くことで、これ以上、書店を減らさないようにすることです。
自社で無人店舗を出店するだけでなく、ほんたすの仕組みを店員さんが常駐している街の書店にも提供して、省人化を進めることも計画しています。

既存書店を無人化する…ということですか?

完全な無人化ではなく、日中は有人、夜間は無人の「ハイブリッド店舗」モデルを想定しています。どの書店でも人件費を削っていかに売上を維持/向上するか悩んでいるので、ハイブリッドの需要は多いです。店員さんがいる普通の書店ならば誰でも抵抗なく入店してくれます。その状態で省人化の仕組みを導入すれば、ワンオペでも営業できて人件費を削減できる。 
現在、ほんたすは駅ナカに出店していますが、今後は違った立地に出店を進めていく予定です。

書籍だけではなく、他の小売店にも応用できそうですね。

はい。無人店舗への商品輸送と店舗運営のノウハウを他業種でも展開できれば、将来的には雑貨や食品など他業種でも無人小売店ができる可能性があります。 省人化のニーズは、多くの小売業に共通しているはずなので、業種の垣根を超えて仕組みを提供できればと考えています。

他業種でも無人店舗が一般的になれば、ほんたすの認知拡大もいっきに進みそうですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

是非そうなってほしいですね。こちらこそ、ありがとうございました。

今回、取材に応じていただいた企業様

⽇本出版販売株式会社

本社所在地
東京都千代田区神田駿河台4丁目3番地
設立
1949年(昭和24年)9月10日
※2019年10月、持株会社体制への移行に伴い事業会社化
事業内容
1. 書籍、雑誌、教科書及び教材品の取次販売
2. 映像及び音声ソフトの製作、販売、ならびにこれに関する著作権の取得、賃貸
3. コンピュータ機器及びソフトウェアの販売、ならびに情報提供サービス
Webサイト
https://www.nippan.co.jp/