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知識・ノウハウ
工事費高騰時代をどう乗り切るか
公開日:2025年9月19日
近年、資材価格の高騰や職人不足による人件費上昇に加え、円安による輸入什器・照明の値上げ、さらには物流コストの増加などが重なり、工事費は確実に上昇しています。建築費高騰を理由とした中野サンプラザ跡地開発計画の見直し(総事業費額が当初1,810 億円から24年初2,639 億円へ、更に900億円増)なども記憶に新しいのではないでしょうか。このような状況では、単に設計通りに発注するだけでは予算内に収めることは難しく、店舗開発担当者としては設計段階からコスト戦略を組み込むことが不可欠となります。
INDEX

仕様・設計段階での対策
まず、工事費を抑えるために効果的なのは、設計と仕様の見直しです。
什器やカウンター、棚板などを複数店舗で共通の寸法に統一することで、量産効果を生み出し、大工加工費や施工時間を圧縮することができます。また、VE(Value Engineering)の考え方を取り入れ、高額素材を見た目が似た代替素材に置き換えることも有効です。例えば、天然石をメラミン化粧板に変更したり、無垢材を突板+塗装に切り替えたりすることで、見た目の質感を維持しながら大幅にコストを下げることが可能です。
さらに、バックヤードなどの見えない部分の仕様は簡易化し、顧客体験に直結する空間だけを丁寧に仕上げることで、コスト削減と顧客満足度の両立が可能となります。
発注プロセス・施工体制の見直し
次に、発注プロセスの見直しも重要です。設計確定後に複数業者から見積を取り、資材値上げ前に契約することも有効です。施工会社に設計段階から関与してもらうデザインビルド方式を採用すれば、コミュニケーションロスや二重マージンを減らすことができ、現実的なコスト提案を得られます。
また、全国展開する場合でも現地の施工会社を活用することで、出張費や諸経費を抑えることが可能です。内装や什器、厨房設備を分離発注する方法もあります。管理は増えますが、中間マージンの削減を期待でき、一定のコスト削減につながることもあります。
調達・契約の工夫
調達や契約の工夫も無視できません。主要資材は値上げ前に先行購入して確保する方法があります。また、複数店舗分をまとめて長期契約することで、資材単価を固定し、コスト変動リスクを減らすことも可能です。海外製品を多く使う場合には、為替予約によって円安リスクをヘッジすることも有効です。さらに、特定のメーカーに依存せず、複数のブランドや国内代替品も視野に入れることで、供給リスクを分散させることができます。
工期・運営の工夫
工期の工夫も、コスト管理には欠かせません。工期を短縮すれば人件費や現場経費を削減でき、開業の遅延による賃料負担も軽減されます。
プレカットやプレ組立による施工効率化、閑散期に工事を行うスケジュール調整、さらにプレオープンで一部の工事を後回しにするなど、工期やタイミングを柔軟に管理することでコスト高騰の影響を抑えられます。
また、居抜き物件を活用すれば、新装工事に比べて30%から50%ほどコストを抑えられることもありますが、既存設備の耐用年数や故障リスクを事前に確認することが重要です。
まとめ
店舗工事費高騰時代に求められるのは、守るべきコストと削るべきコストを見極める視点です。ブランド体験に直結するファサードや照明演出、サイン計画などは確保しながら、バックヤードなど見えない部分の仕様は思い切って簡素化を検討しましょう。そして、設計初期からコスト戦略を組み込み、調達や発注、工期まで一体でマネジメントすることが、非常に重要といえます。