管理受託好調の理由は?

上野:御社はかなり順調なペースで管理戸数が増えているそうですね。

渡邉:おかげさまで毎年約1,500戸以上のペースで増えています。

上野:これは御社が建築もしているからですか?

渡邉:いいえ、建築はほぼ全部住宅メーカーさんです。当社は地主さんに住宅メーカーをご紹介して、そこから管理の仕事を受託するのが原則です。

上野:でも、住宅メーカーが建てると、グループ会社が管理に入っちゃうじゃないですか?

渡邉:いえ、それはありません。そこは一番力を入れている所ですから。

上野:それはスゴイ。管理を回してくれないなら紹介しませんよ、と。

渡邉:そうですね。住宅メーカーに紹介しても95%以上は当社で管理をきちんと受託できています。

上野:好調な背景には、つくばエクスプレス(以降、TX)開通も要因として大きいのでは?

渡邉:そんなことないんですよ。管理戸数はTX沿線よりも常磐線沿線の方が伸びているくらいです。TX沿線は住宅メーカーさんの一大市場ですから、自らが建築提案して管理までするケースが多い。大手のシェアが圧倒的に高いので、当社のような中堅は入りづらいのです。

上野:そうなんですか!ではなぜ?

渡邉:一番の理由は、管理受託の営業スキルが高い社員が増えてきたことです。
あとは、どの支店長も長年その土地にいますから、地元に人脈が根付いてきたのも大きな要因かもしれません。

上野:地元の人たちの口コミや人脈から受託に繋がることも多いわけですね。まさに、不動産会社的な動きですね。

上野:ただ、ふだん賃貸仲介をしている従業員たちが、地主さんに土地活用の提案をするのはスキル的に難しいですよね。専門の部署があるんですか?

渡邉:専門部署はなく、各支店にいる管理担当者がその業務を担っています。
他社さんの場合、支店には仲介担当者だけを置いて、管理部門は本社に集約するケースが多いと思いますが、地主さんの気持ちとしては、支店に電話して仲介担当者しかいないと不満なんですね。近くの支店に管理担当者がいてもらいたいという要望がある。ですから、営業効率は悪くても、地主さんたちが満足してくださるよう各支店に仲介担当、管理担当、売買担当、それぞれの担当者を配置しています。

上野:それがベストなのが分かりますが、宅建免許が足りなくなりませんか?

渡邉:免許は足りていますが、マンパワーに頼る傾向が強くなるので、退職のリスクが高いのは事実だと思います。
ただ、そういう手厚い体制だからこそ、地主さんから「桂に聞けば何でもわかる」と頼ってもらえているのだと自負しています。

上野:社員としても、管理担当だからといって修繕ばかりじゃなく、土地活用提案など難易度の高い仕事を経験できるのはやりがいにも繋がりますね。

渡邉:それに支店の中に色々な役割の社員がいるので、広い分野の話題が自然と耳に入って知識が溜まっていきます。社員のスキルアップや、一つの案件に対して支店の中で様々な活用案を協議して提案できるという意味でも良いかなと思います。

事業用を糸口に居住用物件の管理受託を取り込む

上野:御社が事業用不動産を積極的に扱うようになった理由をお聞きできますか?

渡邉:我々は今、茨城と千葉に16店舗出していますが、新しいエリアで出店する時にその土地でいかに知名度を上げるかをいつも主眼に置いてきました。そこで有効なのが、大きな街道沿いに自社の看板を目立つように立てる事なんです。車で走った時に「ん?桂不動産って会社の看板、あちこちで見かけるなぁ」という状態にすることで、その土地で実績は少な くても「有力な会社なんじゃないか」と思ってくれるわけです。

上野:新店舗を立ち上げる時、まず沿道に看板を張り巡らせることに注力するわけですね。

渡邉:その看板を建てる街道沿いにある物件って何かというと、店舗物件や遊休地ですよね。そこに「テナント募集 桂不動産」とか「管理地 桂不動産」と書いた看板を立てさせてください、と地主さんを周るわけです。すると自然と店舗物件や貸地の在庫が集まり、出店企業が集まり…という好循環が生まれる、と。

上野:まず沿道の空き地に看板立ててテナントを取ろうと。なかなかその発想は思いつかない!

渡邉:会社の名前を売るために看板を立てるのに力を入れていたら、いつの間にか事業用に強くなっていたという経緯なんです。
看板を立てる時、既に他社の募集看板が貼ってある貸地にも営業しますが、事業用は居住用に比べるとそこまでグリップが強くないので、出しやすいんです。

上野:なるほど。地主さんには看板の設置費用をいくらか払うのですか?

渡邉:いいえ。管理名目で草刈りを無料でするくらいで、設置費用は特に払っていません。

上野:無料で広告を出せるチャンスですね!

渡邉:10数万円かけてチラシをまいても反響が来ないのに比べたら良いですよね。看板を作るのに数万円かかったとしても、看板ならずっと立てておけるでしょう。それに沿道の物件を持っている地主さんは、大口の方が多いんですよ。入口は事業用でも、おいおい住居系の管理を頼まれることが少なくありません。

上野:他社のグリップの弱い事業用を足掛かりにして、そこでテナントが決まったら「うちのアパートの管理もお願いしますよ」となるわけですね。

渡邉:地主さんからすると土地活用として売却や建築するよりも、まずは賃貸で募集する方がハードルが低いですからね。
先祖代々の土地を手放したり借金して建築したりするのが嫌でも、土地を貸すのはいいよと言う方が多くて。どんなに貸すのが難しい土地でも、当社が賃貸で預かるんです。

上野:でも、難しい土地だと借り手を探すのも難しいのでは?

渡邉:ええ。お預かりしても8割がたは借り手が付きません。でも、長い間、借り手がつかなければ貸す選択肢がなくなりますよね。営業報告を続けていくうちに人間関係が構築できますから、ようやくそこで売却や建築提案に入っていくわけです。

上野:土地を預かって看板立てて桂不動産の宣伝をしつつ、「なかなか借り手がつかない。どうしましょう」となって、建築・売却提案に繋げて、違う形で収益化していくわけですね。

渡邉:息の長い話ですが、それをコツコツやってきたから今があるのだと思います。

収益性が高く管理の手間は低い、事業用不動産

渡邉:なにより居住用と事業用物件の大きな違いは、一件の収益性が非常に高い割に管理の手間がかからないことです。
当社の約1,400世帯ある居住用物件から出る収益と比較しても、事業用物件は218軒でそれに引けを取りません。今後も事業用の管理物件を増やしていく計画です。

上野:経験ない方は「事業用は難しい、エアコンだって業務用のものを付けなきゃいけないでしょ?」なんて言いますけど。

渡邉:そんな事ないですよ。設備はテナントがやってくれますし、契約の中で誰が何を負担するか事前に決めれば揉めることはほぼありません。

テナント専門担当者を任命し、開発担当者との人脈構築に注力

上野:いくら高収益で手間がかからないといっても、テナント募集の手間があるから避ける会社が多いのが現実。御社はどうしていますか?

渡邉:テナント誘致は、支店統轄と事業用不動産を兼任している石垣と、各支店の管理担当者が連携を取りながら日々やっています。

上野:そうなんですね。

石垣:私が出店候補企業のリストを蓄積していて、解約予告が半年前に来た時点で、全ての企業に一斉にメール送信して営業をかけます。条件面のすり合わせはありますが、そこで大体は具体的な候補が上がってきます。

上野:おお。そのリストは財産ですね。

石垣:もちろん新規ルート開拓もどんどん進めていて、茨城県内だけでなく全国にいる店舗事業者たちを捕まえている状態になっています。

上野:でも開発担当者に入れ替わりがあるから、価値のあるリストを維持するのは難しいのでは?

石垣:おっしゃる通りそこが重要なポイントで、開発担当者との人間関係構築を一番大切にしています。

上野:開発担当者って出店フェーズが終わると、連絡が取れなくなるケースもあるじゃないですか。いつの間にか担当者が変わっていました、みたいな。それはどうカバーしていますか?

石垣:担当者が変わる時には後任の方と引き合わせてもらえる関係性がほとんどの企業としっかりできているので、その心配はありません。

上野:人脈を丁寧に築くってことですね。例えば、顔を合わせるとか年賀状を書くとか。ザ・不動産業的な動きが大事なんですね。

渡邉:石垣が専属でテナント企業を担当するようになってから、関係性は強化されましたね。

上野:最近はテナントの動きはどうです?

渡邉:動きは多いですよ。コロナ禍でも動く会社は強いし、普通なら空かない物件が今だからこそ募集になるケースもありますから。

上野:しかも茨城は車社会だから、より一層ロードサイドがアツいですよね。むしろ県庁所在地の方が厳しいのでは?

石垣:そうですね。ビルインは厳しいので、やっぱり今はロードサイドですね。

不動産業の醍醐味を感じられるから、やりがいが生まれる

上野:石垣さんは最初から事業用物件を担当されていたのですか?

石垣:いいえ、今年で入社15年目ですが、最初は支店に配属されて仲介や管理を担当していました。

上野:賃貸仲介や管理だけでなくテナント誘致なんかもできると、楽しいというか学びが多いのでは?

石垣:そうですね。不動産業の中でテナント誘致が一番好きなので、楽しいです。

上野:会社によっては何年経っても賃貸仲介だけで仕事がつまらなくなって独立しちゃうケースが多い。でも、自分が誘致したお店を見ると嬉しいですよね。街を作っている実感を味わえるし、不動産業の醍醐味を感じられる場面も多いのでは?

石垣:そうですね。

渡邉:この前はスーパーを誘致して、かなりの額の建築紹介料を頂きました。管理も受託できましたし、仕事の大きさを考えるとやっぱり醍醐味がありますよね。

上野:でも、特有のノウハウが必要ですから最初は難しくないですか?例えば、ロードサイドだと中央分離帯があると入りづらいから出店NG!とか。

石垣:そういった事はテナントさんが教えてくれるので、自然と分かるようになりましたし、不利な立地でも幅広くあたれば意外に食いついてもらえます。
この前は、ほとんどのテナントが立地NGだった物件にディスカウントスーパーさんが入居してくれた事例がありました。

上野:でも、居住用と違って事業用は建物付きで借りるとか、建物は自前で建てるとか、色々なパターンがあるから面倒に感じませんか?

石垣:楽しいですよ。

上野:それは意外な答えでした(笑)。こんな風に働けたら毎日刺激的で楽しいですよね。今後、事業用不動産を極めた先の目標は?

石垣:いつかは複合商業施設のような大きな商談をやってみたいですね。

上野:こういう志を持ちながら働けると会社への愛着が湧きますよね。お話ししていると、茨城県を元気にしたい、そんな気概も感じます。

今回、取材に応じていただいた企業様

桂不動産株式会社

桂不動産株式会社

設立
桂不動産事務所創業 昭和46年4月6日
桂不動産株式会社改組 平成1年6月20日
本社所在地
茨城県つくば市研究学園7丁目49番地4
事業内容
総合不動産業
Webサイト
https://www.katsurafudosan.com/