日曜休みを可能にし、働き方改革を進めたい

渡邉:事業用の部署は対法人なので日曜休みにしているんです。支店勤務で土日休めないのを理由に退職する社員がいたのですが、日曜休みの部署があるとなれば働きやすさも変わってくるのかな、と。

上野:結婚・出産して土日休めないと嫌というのも、子どもが大きくなるまでの10年間くらいですから、いっときなんですよね。とはいえ、その時間は人生では大事なわけで。

渡邉:ゆくゆくは事業用の案件を増やして、2~4人くらいの部署にしたいですね。日曜休みを希望して異動願を出している社員が既にいますし、働き方改革という意味でも進めたいです。

上野:素晴らしい。業界の中でも日曜休みはまだ一握りですから、ぜひ頑張ってほしいです。 社長は事業用不動産を扱うのに抵抗がないようですが、昔からこういう土地開発をやってきたんですか?

渡邉:ええ。昔から実務として携わってきました。地主さんへの土地活用提案の中には、おのずと遊休地活用やテナント誘致が必ず入ってきますから。

上野:抵抗感がないんですね?自分に経験がないからと嫌がる経営者は多いのですが。

渡邉:僕は地主さんの所にお茶のみに行くのが好きなだけですよ(笑)。息抜きに行くのが。

上野:いやいや、地主開拓ってそういう面もありますよね。いきなり売り買いの話じゃなくて、お茶飲みながら雑談から入って。そういう時間を重ねないといけない。ロードサイドの地主さんは優しい年配の方が多いじゃないですか?「他社で建てたけど儲からないから、桂さんちょっとお願いするよ」みたいな。地主さんと長々話し込むなんてサボってんじゃないか?!なんて言って我慢できない経営者もいますから。社長自ら、地主回りが好きだっていうのはポイントだと思います。

収益性をより高める方法を常に考える

上野:御社のサブリース事業もユニークですよね。

渡邉:実際に地主3人と話をまとめて借り上げて物販店に転貸しているケースでは、サブリースフィーが当社に毎月入ってきます。手間がほぼないのに住居系1,000世帯分を管理するのと同じくらいの管理費用が頂ける計算になります。
例えば、月額50万円のテナント物件があると仮定します。満額で仲介契約して5%の管理費用を頂いて終わるのが一般的ですが、当社の場合は10%のサブリースフィーを生み出すために、管理じゃなくてサブリース契約を地主さんに提案するときもあります。
そういう交渉の仕方が不動産業の醍醐味だと思います。「なんで桂が転貸するの?」と不思議がる地主さんもいますが、個人が法人と直接契約すると、将来値下げ交渉やトラブルが起きても対処できないリスクが高い。うちが貸主の立場になって、地主さんの代わりにいくらでも対応しますよと説明すれば、「じゃあ、桂さん頼むよ」と納得していただけます。

上野:個人の地主さんが多い中、今後、インボイス制度が導入されることを考えると、法人である我々が間に入る方が地主さんの為にも良いと思いますね。法律が変わることで新しいビジネスチャンスが生まれると思います。しかし、多くの会社が苦戦する中、社長就任から6年で管理戸数が倍増していますから凄いですよね。

渡邉:最近はご紹介案件が多いですが、管理戸数を増やす手法は色々あるものです。例えば、管理の買い取りもしています。不動産業を廃業する方から100~200世帯くらいを当社で引き継いで、フィーを年間一括で支払うとか。

上野:会社ごと買うと面倒ですからね。

渡邉:ええ。なので、管理する権利だけを買うわけです。

上野:その辺りが御社は柔軟で上手いと思います。たしか、リノベーション代金を払う時も分割払いできるんですよね?普通なら金融機関を入れて割賦にするじゃないですか。

渡邉:割賦や信販系会社を挟むと、地主さんは嫌がりますので。

上野:借金する感覚になるから嫌がられるんですよね。

渡邉:その商品を出した当時は、物件を買って商品化したくても買取案件がありませんでした。20%の転売益を目指すなら、リフォーム代金を当社が出して工事になれば紹介料が20%くらいは入るじゃないですか。それで工事費用を1~2年で分割返済してもらえれば利益は出てくるので、1年で返してもらえれば年間20%の転売益が出たのと同じ計算になる。買取転売は赤字になる恐れがあるのに対して、この方法なら取り損ねることはないし、家主さんにも喜んでもらえる。物件が住みやすくなれば入居者も喜んでくれて三方よし、と。
ハイリターンハイリスクな買取転売よりは確実だと思います。家主さんに億単位で立て替えるわけですから、工事になれば年間で何千万か紹介料が入る計算になります。

上野:御社がここまでハングリーに攻めの姿勢を続けるのは、近隣にいる競合の存在も大きいのでは?

渡邉:そうですね。当然、切磋琢磨はあると思います。

事業用はブルーオーシャン、居住用の受託に繋がることも少なくない

上野:賃貸仲介・管理である程度売り上げが出せると安住しちゃう会社も多いですが、御社は出店エリアを拡大して、常に競争の中にいるわけですね。

渡邉:居住用より事業用の方がブルーオーシャンなんじゃないですか?ちゃんと取り組めば面白い事業だと思います。

上野:皆さんやってないですからね。

渡邉:やっても中途半端になってたり。でも、当社の場合、事業用がイロハのイ。つまり、新しいエリアに出店する時には、まず沿道の事業用を狙うのが鉄則です。新店舗を出したら、まずは売買案件で収益を上げないと店舗経営が回らないですよね。賃貸の売上げだけだと厳しいですよ。

上野:都心の事業用は別の難しさがありますが、茨城のような郊外型は違いますよね。御社の手法は、都心を除けば日本のだいたいの場所で通用するやり方だと思います。

渡邉:そうですね。入口は事業用のテナント誘致でも、出店した企業から社宅のオーダーが来たり、そこから「こういうニーズあるんだけど、どうですか?」って居住用物件の取り込み営業に行けますからね。必ず繋がっていくんですよ。それに一軒のアパートを決めるより、桂不動産がこういう企業を誘致して成約したとなれば、地主さんが進んで周りに口コミしてくれます。

上野:入居率も良いのでは?

渡邉:預かるのは基本的に空室なので、入居率は専任管理でも92%くらいでしょうか。空室を受託する前提で、年間で新規入居戸数をどれだけ増やせるか重視しています。

上野:素晴らしい。空室多い=難しい物件だから社員は嫌がりますが、本来ならそこにリノベーションや建替え提案が出てくる。それが本当は面白いんですけどね。

渡邉:古くて入居率が低い物件でも、資産背景をよく見ると実は良い物件をお持ちだったりするんです。いくら良い物件を受託しても、その物件しか持っていなければそれ以上広がりませんからね。

一人でもいい、担当者を決めて取り組もう

上野:テナントが空いた時にどうしたらいいですかという大家さんからの相談は一番困りますよね。

渡邉:普通に募集して決まらなかったとしても、方法は色々あります。例えば、建物NGで出店できないなら解体協力金(解体費用)をこちらが負担して出店してもらうこともあるし。何かしらやりようはあるはずです。

上野:そうやって色々な方法があるのに、居住用は楽という理由でそちらに引っ張られている経営者が多い。

渡邉:一人でもいいので担当をしっかり決めて、物件の取り込みや企業への御用聞きの電話など、何かしらスタートしないと始まらないですからね。

上野:御社はFCに入らない独立系だから、こういう風にどんどん行ける。それも強みですね。

渡邉:経営の迷いの中でFCもいいな、と思ったこともありましたが、FCには色々縛りがありますし。この辺りは既に他社のFCが出店していて入る余地がなく、独立路線でやるしか選択肢がなかったという背景もあります。

社員をグリップできる会社こそが強い

上野:社長に就任する前と後で会社の雰囲気は変わりました?

渡邉:変わってはないと思いますよ。専務時代から父親である会長と意見を言い合いながら一緒にやってきましたから。今年で創業50年になりますが、自分の代でガラッと変えたことはない。

石垣:社員数はだいぶ増えましたよね。

渡邉:社長に就任する前から採用を担当していたので、今いる社員は基本全員、私が面談して入社した社員達です。

上野:良いですね。

渡邉:本当は人事部に任せても良いのでしょうが、入社と退職の時は、必ず私が面談するようにしています。特に、入社の最終面談では待遇について私から全部説明して、後で聞いた/聞いていないの齟齬が起こらないようにしています。

上野:大事なことですよね。そういう社員のグリップができている会社は強いと思います。

事業用を足掛かりに、県北や千葉にも店舗拡大を構想

上野:今すでに16店舗ありますが、今後の出店計画は?

渡邉:千葉県は新卒で働いた所縁のある土地ですから、ゆくゆくは更に進出したい気持ちはあります。
それに、流山に出店して分かったのが、千葉は多店舗展開している不動産会社が少ないのと、居住用は入り込む余地がないくらい強いのですが、事業用は両手を広げて迎えてくれるという事。グリップのゆるい事業用を糸口に伸ばしていきたいです。

上野:これはチャンスですね。

渡邉:知名度がまだないエリアですから、沿道に看板を立てるのが千葉でも有効かな、と。

上野:茨城県内もまだ出店しそうですか?

渡邉:水戸やひたちなかはあり得ると思いますが、役員たちは「今は採用活動に注力して、社員達をもう少し熟成させてから展開しましょう」と(苦笑)。

上野:ストップを掛けられているわけですね。いや、さすが勢いがあります。本日は貴重なお話をありがとうございました。

今回、取材に応じていただいた企業様

桂不動産株式会社

桂不動産株式会社

設立
桂不動産事務所創業 昭和46年4月6日
桂不動産株式会社改組 平成1年6月20日
本社所在地
茨城県つくば市研究学園7丁目49番地4
事業内容
総合不動産業
Webサイト
https://www.katsurafudosan.com/