取り組みが始まった背景

①職住近接が進み、郊外のオフィス不足が課題に

近年、働き方改革が進む中、長時間通勤の解消やライフワークバランスの実現が企業の経営課題になってきました。更に、コロナ禍をきっかけにテレワークが広く普及したことで、無駄な移動時間を削減し、柔軟な働き方を推進しようとする風潮がよりいっそう強まっています。

それに伴い、賃料の高い都心オフィス街から手頃で環境の良い郊外に本社を移転したり、長時間通勤しなくても働ける「サテライトオフィス」を郊外に開設するケースが増えています。

つまり、家の近くで働くことができる「職住近接」へとトレンドが移りつつあるのです。

しかし、オフィスストックが集中する都心とは違い、ベッドタウンとして発展してきた郊外にはオフィスビルの数は少なく、需給ギャップが生じています。

②吉祥寺エリアの特徴

※2022年7月22日時点

吉祥寺は新宿まで約15分とアクセスが良く、都心へ通うオフィスワーカーのベッドタウンとして高い人気をほこっています。駅周辺には大型商業ビルを含む商業集積が広がりますが、オフィスビルの数は限定的です。「職住近接」トレンドが進む中、タイミングよくオフィスの空室を見つけることが難しいエリアと言えます。

③本取り組みの目的

そこで、株式会社西友が運営する商業施設「西友吉祥寺店」の6階の一部区画を、高まるオフィスニーズの受け皿として、用途を転用する計画が持ち上がりました。

利便性の高い商業施設の中にワークプレイスを設けることによって、ワークライフバランスの実現や、多様な働き方ができる社会の実現に向けた「働き方改革」推進の一助となることを目的としています。

オフィス化の概要

今回の取り組みでは、賃貸オフィス区画と、法人向けサテライトオフィス「ZXY(ジザイ)」、2種類のワークプレイスをオープンさせました。

①賃貸オフィス区画 

商業施設の一画にありながらオフィスビルと同等のスペックを備える、約160坪のオフィス区画です。テナントの希望に応じて最小約10坪からの専用区画として、事務所仕様で貸し出します。

レイアウトイメージ

②法人向けサテライトオフィス「ZXY(ジザイ)」

賃貸オフィスに併設するのが「ZXY(ジザイ)吉祥寺4」です。ZXY(ジザイ)はザイマックスが運営する法人専用の会員制サテライトオフィスです。オフィス区画にご入居いただく企業も、来客時の会議やWEB会議、自社の専用オフィスが満席の時なども、便利にお使いいただけます。

ZXY(ジザイ)の詳細は公式サイトをご覧ください

用途の転用に伴うハードルをどう乗り越えたか

商業施設の一部を賃貸オフィスに転用する、この試みには主に3つのハードルがありました。

①法規制面の対応

〜そもそも、法的に難しくないの?〜

西友吉祥寺店の1階正面入口。一日を通して大勢の買物客で賑わう。

今回のような建物の使い方を大きく変える際には、様々な法規制が大きく絡んできます。

・建築基準法・消防法・まちづくり条例・大規模小売店舗立地法(大店立地法)...

特殊建築物である商業施設の一定以上の面積の使い方を変える場合、建築基準法における用途変更の確認申請が必要かどうか、この点が非常に重要なポイントです。新しい用途に合わせた防災設備や、施設としての防火・防災体制の見直しも必要となります。また、大店立地法の届け出に関しても対応が必要になる場合があるので注意が必要です。こうした様々な法的与件を整理・確認し、所轄の行政窓口と事前協議をしながら、慎重に計画を進める必要がありました。

②運用の調整

〜オフィスワーカーを「テナント従業員」と見るか?「買物客」を見るか?〜

商業施設に入居する店舗テナントの従業員は、搬入口や裏手にある従業員専用口から出入りするのが通常です。しかし、6階のワークプレイスの利用者はどうでしょうか?オフィスワーカーが施設の裏口から出入りするのは違和感があります。

そのため、オフィスワーカーは、施設の営業時間は「買物客」と同様の動線を使い、早朝と深夜の営業時間外には、ワークプレイス利用者のみが出入りできる専用の通用口を新設することにしました。この通用口を使えば、店舗の売場を通らずに、エレベーターを使ってワークプレイスに辿り着くことができます。

1階正面玄関のガラス壁に、新たにオフィスワーカー専用入口を設置。
カードキー(オフィス利用者用)とQRコード(ZXY利用者用)で入退館を管理し、不正入館を防ぐとともに西友の営業時間外でも出入りが可能になった。

③事業企画

店舗テナントに区画を貸し出す場合、区画内の内装工事はテナントが負担しますが、オフィスの場合、事務所仕様で内装を仕上げた状態で入居いただきます。つまり、オフィスとして貸し出す状態を整えるには、店舗テナントに貸し出すよりも余分に投資がかかるわけです。そのため、用途ごとの需給バランスを見極めるだけでなく、投資コストを適切にコントロールし、それを確実に回収できる事業計画を組み立てることが重要です。

オフィス内部のご紹介

ここからは、新しくできたワークプレイスを写真と共にご紹介します。

①賃貸オフィス区画

賃貸オフィスとZXY(ジザイ)がある6階までは、一般の買物客と共用のエレベーターで向かいます。ちなみに、B1階から6階までの店舗区画にはバラエティーに富んだテナントが入居しています。

エレベーター内のテナント表示板(2022年6月28日時点)

エレベーターを降りて右手に進むと、すぐに賃貸オフィス区画の入口が現れます。
木目調の落ち着いた雰囲気のエントランスから一歩足を踏み入れると、商業施設であることを忘れるくらいに静かで整然としたワークプレイスが広がっています。
それもそのはず、遮音性の高い素材を使った壁をスラブtoスラブで設置し、執務環境に配慮した設計をしています。

西友の共有通路からオフィスを見る。最上階の奥まった場所に位置するので、一般の買物客が入り込む可能性は極めて低い。
 オフィス区画のエントランス

共用廊下の両側には、最小約10坪から分割可能な区画を設けています。共用エリアには、給湯室のほか郵便受けを新設し、入居テナントの使い勝手に配慮しています。

オフィス区画内の共用廊下の様子

各区画は、白を基調としたシンプルな内装のオフィス仕様での引き渡しとなります。個別空調やOA床が設置済みです。

オフィス区画内部の様子

②ZXY(ジザイ)吉祥寺4

オフィス区画から更に奥に進むと、「ZXY(ジザイ)吉祥寺4」が見えてきます。

ZXY(ジザイ)吉祥寺4の外観

ZXY(ジザイ)の内部は、1人で作業に集中する時や、WEB会議でのご利用に便利な個室を中心としたレイアウト。廊下をはさんで1名用個室が21室、6名用会議室が2室、並んでいます。

(左)ZXY(ジザイ)の共用廊下。(右)1名用個室。モニターや電源タップを室内に完備。
(左)6名用会議室。(右)共用スペースには複合機や給茶機 、文房具等が揃っている。

さいごに 

世の変化と共に、生活スタイルが変化し、それに伴って不動産の使われ方にも変化が出てきています。弊社の試みが皆さまの不動産活用のヒントになりましたら幸いです。

SEIYU

施設概要

施設名称
西友吉祥寺店
住所
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-12-10
営業時間
食品: 10時~23時(B1階~1階)
その他売場: 10時~21時(2階~6階一部) 
オフィス区画: 7時~24時(6階一部)
ZXY吉祥寺4: 7時~21時 ※平日のみ
※商業施設営業時間外(7時~10時、23時~24時)はオフィス専用通用口から入退館

今回、取材に応じていただいた企業様

株式会社ザイマックス

株式会社ザイマックス

設立
1990年3月1日(平成2年) 株式会社リクルートより分社独立
本社所在地
東京都港区赤坂一丁目1番1号
事業内容
不動産マネジメント業、サテライトオフィスサービスZXY(ジザイ)の運営等
Webサイト
https://www.xymax.co.jp/