競合店調査の目的

自社店舗が成功するためには、競合店よりも多くのお客様に足を運んでもらえる店舗になれば良いわけですが、どうやったら、そのような繁盛店になりうる好条件の貸店舗物件を探し当てることができるのでしょうか?

最初に、ロードサイド店舗を探す際のポイントを、2点確認しておきましょう。

ポイント1
選ばれるお店には、“根拠”がある

繁盛店には、「立地がよい」「車両進入/敷地内転回性がよい」「視認性が高い」など、お客様が足を運ぶ“根拠”が存在します。「なんとなく」という直感頼りの物件探しから脱却し、“根拠”に基づいて物件探しを行うことが大切です。

ポイント2
競合店も他店を研究している

お客様が足を運ぶ“根拠”(=お客様に選ばれるポイント)を揃えても、それで安泰ではありません。なぜなら、競合店も、あなたと同じように“根拠”で武装しているからです。つまり、競合店に勝利するためには、あなたも競合店を分析し、より優位なポジション取り(好条件の物件選び)に努めなければならない、ということです。

以上のポイントを踏まえて、「競合店調査の目的とは?」という質問にお答えすると、その答えは、ずばり、

近隣の競合先を見極め、
“自社のとるべきポジション”=“自社が選ぶべき貸店舗物件の条件”
を把握するための調査

ということになります。

さて、競合店調査の大切さ、理解していただけましたでしょうか? それでは、次に、その具体的な調査方法を示していきたいと思います。

競合店調査の大まかな流れ 

1)競合店を選別・特定する

まず、競合店の洗い出しを行います。

その際に重要なのは、「競合」の意味を間違えないこと。「競合」とは、「同じ商圏内で、同じ顧客を共有している」ということです。同業種であったり、サービス・商品が類似していても、客層が異なっていれば、それは競合関係とは言えません。

また、調査対象の競合店は、ある程度、少数に留めておくのが良いでしょう。対象を絞らないと、調査が複雑化・長期化し、いたずらに時間とコストを消費することになるからです。

2)競合店の情報をまとめる

次に、選別した競合店の情報をまとめます。もちろん商品やサービスの内容・訴求ポイント・Webマーケティングに活用される各種コンテンツなどの分析も大切ですが、ここでは、あくまでも貸店舗物件の選定が目的ですので、主に4つの要素(=「商圏」「立地特性」「店舗与件」「外部環境」)に絞ってまとめていきます。

3)実地調査を行う

ネットや紙面上の調査だけでは、どうしても見えてこない情報があります。そこで、実際に競合店まで足を運び、現地を視察してみることをおすすめします。地図だけでなく、デジカメなどの記録媒体は準備しましょう。

4)フレームワークを活用して分析結果をまとめる

調査で得た情報を4つの要素に分類してまとめていきます。その際に、フレームワーク(SWOT分析、ポジショニングマップ、3C分析、バリューチェーン分析など)を活用して、各要素の分析結果の解像度を上げていくというのも良い手です。

競合店調査のチェック項目

競合店調査の大まかな流れを掴んでいただいたところで、次は、上の(2)(3)の内容を深掘りするかたちで、調査に係る具体的なチェック項目をご紹介していきます。

商圏を把握・分析する

「商圏」とは、「集客できる範囲(ターゲットとする顧客が店舗に足を運べる範囲)」のことを言います。都市部において顧客が徒歩で移動できる範囲はおよそ800m〜1.2km程(徒歩10〜15分程度)とされています。自転車や車利用などを想定すると、それに合わせて商圏の範囲も変わってきます。

【CHECK】

✓ 商圏ボリュームを確認

商圏内における人口や世帯数、年齢別(世代別)構成比率などを把握する。

✓ 出店予定エリアの地図を確認

「商圏を分断するような大きな線路や川などのバリアがないか」など、地理的にマクロで確認できる内容を把握する。

✓ 都市開発計画の有無を確認

新規開発によって、商圏の環境が大きく変わる可能性があるかどうか。それが近日中に起きるかどうかなどを把握する。

立地特性を把握・分析する

「立地」とは、「商圏内での店舗のポジション、位置」のことを意味します。ビジネスの種類によって、「立地」の良し悪しは変わってきますが、一般的に、人の流れ(動線)に乗った「立地」が良いと考えられます。

【CHECK】

✓ 立地は「本角地」か、「半角地」か、「一面」か?

・本角地:主要幹線道路と主要幹線道路が交わる角地にある立地のこと
・半角地:主要幹線道路と一般道路が交わる角地にある立地のこと
・一面:道路沿いにある角地でない立地のこと

「本角地」「半角地」「一面」の優劣は業種によって異なります。
例えば、視認性を重視する業種(コンビニ、ドラッグストア、ファーストフード店など)は、「本角地」を好む傾向があります。一方、徒歩で移動する近隣住人の動線を重視する業種(宅配ピザ店やミニスーパーなど)は、「本角地」を選ぶ必要性は低いといえます。

✓ 本角地/半角地の場合、信号手前なのか、信号先なのか?

車での来客が多いロードサイド店舗の場合、信号先の立地の方が立ち寄りやすく有利です。一般的には信号手前の立地は、車で入りにくく、かつ出にくいため、不利に働くケースの方が多いといえます。

✓ 店舗看板の視認性は良いか?

ロードサイドの場合、ポール看板の視線性は重要で、ドライバー視線で手前何メートルぐらいから視認できるかを確認。遠くから視認できた方が有利になりますが、これは地形と手前にある建物の配置や大きさにも大きく左右されます。

✓ 前面道路の片側車線数はいくつか?

片側車線数が多すぎたり、車のスピードが出やすい道路の場合は不利に働くケースの方が多いといえます。業種によって異なりますが、車線数は左折専用レーンがなく片側2車線、通行量は1日平均6,000~8,000台程度が一般的に良いとされています。

✓ 前面道路の反対車線からの車両進入は可能か?

反対車線からの車両進入(右折侵入)が出来るような道路の方が良く、反対車線からは入店できない中央分離帯があると不利とされています。

✓ 前面道路に渋滞性はないか?

ロードサイドの場合、朝夕の通勤、退勤時に関わらず渋滞する道路は、なるべく避けて通行したい、出来るだけ早く通過したい、という心理が働くので、一般的に不利に立地とされています。

店舗与件を把握・分析する

「店舗与件(よけん)」というと難しく聞こえるかもしれませんが、要するに、その店舗物件に与えられた条件(その物件が持つ特徴)、と考えてください。

【CHECK】

✓ 間口は十分にあるか?

間口(ここでは、道路に接している敷地面のこと)について、顧客がアプローチしやすい十分な広さが確保されているかどうかを確認します。

✓(既存の)切下げは十分取れているか?

「切下げ」とは、「車道と歩道部分に高低差がある際に、車両を入りやすくするために歩道部分を切り下げた箇所(車両出入口)」のことです。一般的には店舗物件の間口側にイン/アウトとする「切下げ」二か所以上(※)が十分にあるかは重要なポイントとされています。

※「切下げ」がない場合は、自らで「切下げ」の工事を申請することになります(道路法第24条に基づいて道路管理者に「道路工事施行承認申請書」を提出)。「切下げ」箇所は、ひとつの場所・施設につき原則として1箇所しか認められていなかったり、工事の費用も高額に及ぶ場合があるので、「切下げ」の有/無(十分/不十分)については、しっかりと事前にチェックするようにしましょう。

✓ 敷地内での車両転回性は良いか?

ロードサイドにある店舗の場合、敷地内の駐車場で車両がスムーズに移動するには、通常、敷地進入口から店前ラインまで最低でも15メートルほどの奥行きが必要とされています。また、均整な形(例えば、長方形など)の方が変形よりも店舗出店の地型として適しています。

✓ 前面道路と敷地間に障害物等はないか?

ガードレール、植緑帯(街路樹等)も暗渠(覆いがしてある水路)など、敷地と前面道路を隔てる障害物等がないかどうかをチェックしましょう。そういったものがあると、特に運転に不慣れなドライバー心理に影響し、入店を妨げる要因となります。

外部環境を把握・分析する

調査する店舗物件の周辺環境を俯瞰で眺め、その土地のマーケットの傾向を把握・分析していきます。そして、その分析結果を踏まえた上で、自社の出店検討を行います。

【CHECK】

✓ 近隣のインフラや施設との関係性はどうか?

例えば、近隣にショッピングモールなどの大規模集客施設があった場合、施設と相乗効果を生む立地なのか?あるいは施設がバリアになる立地なのかなどをしっかりと吟味しましょう。その他にチェックすべきインフラや施設として、インターチェンジや新幹線駅やターミナル駅、大規模な病院、公園、大学、図書館や役所などの公共施設などがあります。

✓ 周辺住民の状況は?

年齢別(世代別)構成比率、単身世帯率などの人口動態、ライフスタイル、消費行動の傾向、などなど。自社が想定する顧客(ターゲット層)の属性と実際の周辺住民の傾向との間にギャップがあるかどうかも把握していきます。

以上、競合店調査について詳しく解説してきました。競合店調査について理解したら、ご紹介したチェックリストを使って競合店調査を行い、その優劣比較から出店可否の判断をしていきましょう。