はじめに

駐車場の適・不適を確認しないで出店すると、様々な不利益やトラブルに見舞われる可能性があります。そういったことを防ぐために、前もって、次の5つのポイントをチェックしていきましょう。

POINT1 面積・台数、スペックは適切か

(A)面積・台数

駐車場に停められる車の台数が少ないと、機会損失に繋がります。逆に、駐車場が不必要に広すぎてもコストがかさみます。大切なのは、自店の営業に見合う、ちょうど良い規模の駐車場を確保することです。

その規模感は、店舗の立地、業種によって異なります。

例えば、郊外で「飲食業」と「サービス業」を出店する場合について考えてみるとわかりやすいでしょう。以下、簡単な例を示してみます(※)。

※ひと口に「飲食業」「サービス業」と言っても、回転率の違いによって、適切な駐車場の規模感は変わってきます。考え方の一つとしてご参照ください。

■「飲食業」(カフェ・レストランなどの飲食店)が、郊外に出店をした場合

ファミリーや友人同士の来客を想定して、店舗の座席数の半数程度の駐車数を確保するのが良いかと思われます。「都心部」に比較的近い場所で車での来店も見込まれる、というような立地の場合は、総座席数の5分の1程度の台数を用意しておけば安心できます。

■「サービス業」(予約制の美容室など)が、郊外に出店をした場合

予約で来店数が事前におおよそ把握できるため、来店する客数に応じた駐車台数を確保すれば、営業上、問題が生じることはないと思われます。

※ただし、従業員も自動車で出勤するでしょうから、「飲食業」「サービス業」に関わらず、その分の駐車スペースも別途確保しておく必要があります。

(B)スペック

■車室

「車室」とは、駐車場における、一台ごとに決められた区切りのことを言います。その適切なサイズは、一般的に、幅2.4mから2.5m以上、奥行き5m以上とされています。広く取りすぎると、中途半端な位置で停める車が出るなど、トラブルに繋がる場合もあるので、要注意です。

■車路幅

「車路」とは、駐車場内で、車が通行したり、駐車の際に必要な切り替えしを行ったりするために使用するスペースのことを言います。接触事故を防ぐためにも、車路幅は3.5m〜5m程度が必要とされています。

■駐車場の出入り口の広さ、段差

道路からスムーズに入車できるよう、駐車場の出入り口の幅は3.6mほど(道路の縁石6個分ほど)が適当とされています。また、道路から駐車場に入る際の段差にも注意が必要。路面に対してあまりにも段差が大きすぎると、車高の低い車が入れない、といったことが起こり得ます。同様に、「切下げ(※)」の有無も確認しておきましょう。

※「切下げ」とは、「車道と歩道部分に高低差がある際に、車両を入りやすくするために歩道部分を切り下げた箇所(車両出入口)」のことです。「切下げ」がない場合は、自らで「切下げ」の工事を申請する必要が生じます。

POINT2 運用面での注意点は確認したか

例えば、自店舗以外のテナントが同じ敷地内に併設されている場合、運用面でのルールのすり合わせ・事前確認は、非常に大切です。

駐車場スペースが「全面共用」であれば問題はないのですが、「一部共用」といった場合は要注意。ルールや契約によっては、自店舗で使用できる駐車スペースが大きく制限されてしまうこともあり得ます。お客さんが別テナントの駐車スペースに車を停めるなどして、トラブルに発展することも考えられるので、運用面での注意点は事前に把握するよう努めましょう。

POINT3 駐車場にかかるコストは適切か

■家賃だけでなく駐車場代も確認する

当たり前の話ですが、駐車場代も毎月の固定費です。物件を契約する際には、家賃と駐車場代の合算が予算の範囲内に収まっているかを、しっかりと確認しておきましょう。

※駐車場代は家賃に含まれる場合もあります。

■目安の費用(相場)を想定しておく

店舗に併設している駐車場がない場合、その他の場所で、「月極駐車場」や「立体駐車場」「ガレージ(車庫)」などの契約を検討することになるでしょう。駐車場の種類によって、相場も異なってきますので、近隣をリサーチして目安の費用を把握しておくことも大切です。

POINT4 アクセスと周辺環境はチェックしたか

駐車場が必要かどうかは、出店予定地の周辺環境や交通事情により判断していくことになります。周辺の主要道路や公共交通機関からのアクセス、近隣施設の配置状況によって、駐車場の重要性が左右されるので、商圏や立地特性の調査はしっかりと行っておくとよいでしょう(※)。

※(参考)コラム「競合店調査の方法を伝授!【ロードサイド店舗編】」
上の記事の中、「商圏を把握・分析する」「立地特性を把握・分析する」「店舗与件を把握・分析する」の箇所を特にチェックしてみましょう!

POINT5 セキュリティ対策を検討したか

駐車場の中では、接触事故(車同士、対人、物損など)、無断駐車、車上荒らしなど、様々なトラブルが起こり得ます。これらのトラブルの責任に関しては、店舗側が負う法的な義務はないものの、トラブル自体を抑止する対策はあらかじめ講じておきたいところ。

例えば、「防犯カメラ」を設置して事故・犯行の一部始終を記録したり、禁止事項(騒音や排気ガスなどの迷惑行為を抑止するなど)を明記した張り紙・看板を掲出する等も有効な一手です。

張り紙、看板を出す際は建物オーナーの許可が必要なことも。その場合は必ず事前にオーナーへ確認を取りましょう。

駐車場を確保できない場合は、どうする

店舗物件によっては、駐車場が併設されていないケースもあります。そのような場合、来店機会が大きく損なわれる可能性もあるため、他の場所で駐車場を手配する必要が出てきます。その際の対応策としては、以下のようなものが考えられます。

(1)「貸し土地」を借りる

「貸し土地」を駐車場用地として利用するという方法。坪数に応じて賃料がかかってくるため、広く借りれば、その分だけ費用は高額になりますが(敷金、礼金、保証金がかかるケースもあります)、自由度が高いのがメリットです。

(2)「月極駐車場」を借りる

「月極駐車場」を利用して、1台単位の賃料で必要数を契約するという方法。車の利用客が多くない店舗に適しています。併設している駐車場の不足分を補う目的で利用してもよいでしょう。

(3)「コインパーキング」を利用する

「貸し土地」も「月極駐車場」も近くにない場合は、近隣の「コインパーキング」を利用するのも一手です。ただし、駐車料金が利用客の負担になるため、それがマイナス印象に繋がる可能性も否定できません。

(4)「コインパーキングチケット」を用意する

車で来店するお客様には、近隣の「コインパーキング」を利用してもらうことを前提に、パーキングチケットを店側で購入するという方法です。駐車料金は店側の負担となりますが、その分顧客満足度の向上につながります。

まとめ

以上、「駐車場」が、お客様に選ばれるための重要なファクターのひとつであることを理解してもらえたと思います。

お示しした具体的なチェック項目を参考に、みなさまが、店舗物件の「駐車場」に関する課題をクリアしていかれることを、切に願っています。