事業計画書とは?

事業計画書とは、開店・開業を実現するために必要な情報(事業内容、収益見込みなど)が客観的に記された書類のことを言います。

その目的は、内的、外的の2つに大別されます。

(1)内的:自身の事業デザインや方向性を客観的に検証するため

ビジネスとは様々な“具体と抽象”で構成されています。「なんとなく飲食店を開業したい」と思っているだけでは実現の見込みは少なく、

  • ・どんなコンセプトで販売するのか
  • ・何を販売するのか
  • ・誰に販売するのか
  • ・どこで販売するのか
  • ・どれだけ販売するのか

など、数字も含めて、できるだけ緻密に言語化していく必要があります。しかし、頭の中で考えているだけでは、なかなかまとまらないもの。そこで、役立つのが事業計画書。このフォーマットに沿ってアウトプットを重ねていけば、自ずと事業デザインをブラッシュアップしていけるというわけです。

(2)外的:第三者に説明して理解・共感を得るため

第三者とは、大きく分けて以下の2つになります。

(a)資金調達先(金融機関・公的機関)
(b)物件オーナー、お店のスタッフ、家族などの協力者

ビジネスを展開するにあたって、往々にして自己資金だけでは難しく、また、独力では不十分です。そのため、第三者の力を借りる必要が生じてくるのですが、その際にコンセンサス(合意・信頼関係)を形成していくための資料として、事業計画書はとても有用です。

事業計画書に、何を書くのか?

事業計画書に記載する内容として、一般的には以下のような項目を記載します。

  • ・事業内容(業種)
  • ・事業コンセプト
  • ・創業時期(開店予定時期)
  • ・商品やサービスの内容(価格、セールスポイント、飲食店であればメニューなど)
  • ・販売計画(想定顧客、販売先、仕入先)
  • ・人員計画(従業員の状況など)
  • ・借入状況
  • ・資金計画(必要資金と調達方法)
  • ・事業の見通し(中長期の収支計画)

さらに、個人の方の場合は、以下2点を付け加えると、より受け手に伝わりやすくなるでしょう。

  • ・創業の目的、動機
  • ・事業主の経歴(資格)

事業計画書作成にあたり、日本政策金融公庫の「創業計画書」や「企業概要書」のフォーマットを活用するのもよいでしょう。(※1)。必要な項目が網羅されているので、情報を十分に埋めていくことができます。

その他のサイトでも、飲食店・美容室・小売業など、さまざまな種類の事業計画書のテンプレートがダウンロードできるので、使いやすいものを探してみてください。

※1. 創業計画書はその名の通り、創業時における融資審査のための計画書ですが、入居審査の際にも活用できるフォーマットです。

事業計画書に、どのように書くのか?

さて、ここからは、店舗開業を目指すみなさんに向けて、事業計画書づくりのポイントをお届けしていきます。「2. 事業計画書に、何を書くのか?」であげた項目を前提に、

入居審査で特に重要だと思われるポイントをピックアップしました。出店申込書には記載しない内容を中心にまとめています。

(1)どのような店にしたいのかを伝える

・事業内容、事業コンセプトを伝える

どのようなお客さん(顧客ターゲット)に対して、どのような価値を、どのようなかたちで提供するのか。あなたの行う事業について、わかりやすく記載します。

・事業の目的、理念、将来のビジョンを伝える

なぜこの事業を行うのか、社会にとってどのような貢献ができるのか、将来的にこの事業をどのような方向性で成長させていきたいのか。事業を興すあなたの想いを伝えます。

・人間性、人柄を表現する

貸主・借主というビジネス上の関係性であっても、あなたの人間性や人柄は、オーナーの意思決定に少なからず影響を与えることがあります。入居審査で可否の判断を下すのも、オーナーという「人」なのです。仲介会社を通す場合は、面接などで直接オーナーにアピールする機会がないケースもあります。そのような時は、計画書の中に、あなたの人柄を感じられるような表現や想いを、より意識して盛り込んでみるもの良いでしょう。

・業界の動向、競合優位性を表現する

まずは業界の市場規模や動向を伝え、数ある競合との優位性を表現していきましょう(※2)。差別化できる独自のストーリーがあれば、盛り込んでいくと良いでしょう。

※2.競合優位性を確認する方法に「競合店調査」があります。詳しく知りたい方は、コラム「競合店調査の方法を伝授!【ロードサイド店舗編】」をご覧ください。

(2)経歴を伝える

これまで、何に取り組んできたのかを伝えることも大切です。その際、「A業界の企業で勤続20年」など、堅実に仕事を積み重ねてきたことなどを、数字も交えて記述することを意識していきましょう。また、受け手に、より良い印象を抱いてもらえるよう、表現にも工夫を凝らしましょう。例えば、「チェーン居酒屋で、2年間、調理アルバイト」という表現を、「大手チェーン店で、2年間、洋食調理を修行」などに変える、など。

(3)サービスや店舗デザインのイメージを伝える

オーナーとしては、どのような見た目の店舗になるのか、それが周囲にどのような印象を与えるのか、大いに気になるところです。そこで、言葉(テキスト)だけでなく、画像や写真(イメージ)も活用していきましょう。店舗の外観・内装、スタッフのユニフォームなど、インターネットからイメージに近い画像を取得して添付してあげれば、オーナーも判断しやすくなります。

(4)周辺環境への配慮を伝える

近隣トラブルのリスクが少ないことも、しっかり伝えていきましょう。具体的に、「営業時間」や「騒音や臭い」など。近くに、教育・児童福祉・介護関係の施設などがある場合は、特に、細やかな配慮が必要になります。

(5)収支計画の実効性を伝える

開業後、長く安定的に事業を継続させていけるのか。この事業者に物件を貸し出して、大丈夫なのか。そんなオーナーの不安を解消させられるよう、明確な「数字」を示すことで、収支計画の実効性を示していきましょう。特に、物件オーナーが法人の場合は、創業計画書などの書式に沿った収支計画書を提出するように心がけると良いでしょう。

さいごに

事業計画書は最初から完璧なものを作る必要はありません。まずはこのコラムを参考に、頭の中にあるキーワードをアウトプットするところから始めてみましょう。