出店判断に科学的な根拠が求められる時代

前回は、お客様のアタマの中を知って勝率を高めるために「人流調査」が有効というお話でした。
今回はいよいよ、店舗開発のお仕事で「人流調査」をどのように有効活用できるか、ということをお伝えしていきます。

店舗開発のお仕事で最も難しい部分って何でしょう?
おそらく「ここにお店を出すべきか」という出店判断ではないでしょうか。右肩上がりの時代のように、店を出せばどんどん売れる時代ではないので、経営層としても慎重になりますよね。
このため経営層から「ここに出店してホントに長期的に採算が取れるのか?」と根拠を求められることも多いのではないでしょうか。ただ、この出店判断の段階までにしっかりした理論武装ができていないと、社内での了解が得られないまま貴重な出店機会を逃すこととなります。また、出店に漕ぎつけたとしても開業した店舗が不採算店舗になってしまった場合は、ご自身の社内評価低下なども心配されるところです。

でも大丈夫!
「人流調査」は、こうした出店判断用の裏付けや理論武装に役立つデータをいろいろと用意できることが強みなのです。具体的には[立地評価データ]や[競合分析データ]などを人流調査で取得することで、経営層の「なるほど」という一言を引き出しやすくなり、長期的な採算店舗としていく確立を高めることもできます。
ここからは人流調査で[立地評価データ]や[競合分析データ]を取得して、どのように活用していくかを見ていきましょう。

経営層が出店判断する際の根拠となる「人流調査(立地評価データ)」

出店判断で一番重要なことと言えば「立地評価」です。
新規出店を計画する際に、候補地周辺の人流データを分析することで、その場所が商業活動に適しているかどうかを判断できます。具体的には、店舗前通行量や滞在時間、来訪者の属性(居住エリアや性年代別、ライフスタイル判定など)などを把握することで、どれくらいの集客が見込めるかを推測できます。
これらの情報をしっかりと把握することで、出店候補地の選定や賃料交渉にも役立ちます。
各分析データのイメージを見ていきましょう。

店舗前通行量データ(ヒートマップ)

通行量の多い道路をヒートマップ表示できますので、立地条件の善し悪しが地図上で判断できます。選択した道路区画の通行量を平日・休日・時間帯別で表示したり、交通モード(徒歩・自転車・車両)別の通行量を表示したり、通行者の性年代比率を表示したりと、様々な分析データを取得できます。

店舗ごとに設定しているターゲット設定や通行量などから、どのくらいの集客が見込めるかを推測できます。

滞在者分析データ

滞在人口が多いエリアかどうかを表示できます。選択したエリアや期間別の滞在者を時間帯別や性年代比率、居住者/勤務者/来街者判定、居住地分析など、様々な切り口で分析できます。

出店候補地が複数ある場合は、比較しながら検討することも有効です。

指定したエリアの来訪者属性データ

分析エリアは日本全国どこでも自由に設定でき、同時に複数エリアを比較分析することも可能です。たとえば複数のショッピングセンターを出店候補地として指定した場合は、指定した期間(これも自由に設定可能で、2つの期間の比較なども可)に施設へ訪れた来訪者数を日別・曜日別・週別・月別で比較したりできます。また、性年代別や居住者/勤務者/来街者比率などの他、来訪者の居住地を市区町村別や町丁目別でランキング化(MAP化)することも可能です。

また、町丁目単位で「どのようなライフスタイルの方」が住んでいるかといったライフスタイル分析も可能です。

指定した期間に、指定したエリアを訪れた来訪者の属性を把握できます。どのくらいの来訪者がいて、基本属性やライフスタイルはどうかなど、「この場所は自店舗に合っているのか?」という疑問を、複数立地で比較検討することができます。経営層や店舗開発御担当など、知識や経験の異なる人が集まった会議でも、同じデータ・同じ目線で比較検討できるため、客観的かつ合理的な判断で最適解を導き出す可能性が高まります。

経営層に”もう一押”するための「人流調査(競合分析データ)」

出店判断において経営層が知りたがるデータとしては「競合店のデータ」も挙げられます。
もちろんこれも人流調査を通じて、競合店の集客状況や顧客動向を把握することが可能です。
たとえば、競合店に訪れる顧客の属性や来店時間帯を分析することで、自店舗との差別化戦略を立てることができます。これにより、特定の時間帯に集客を強化したり、プロモーション活動を行ったりする際の参考になります。

人流調査では、ここまで見てきたような分析を競合店を対象にして行うことも可能です。指定した1年間で、競合店舗に来訪しているゲストの属性や居住地、ライフスタイルの他、競合店舗前の通行量などのデータを自由に取得することができます。
相手の手の内が分かりますので、あとは自店データと比較しながら、じっくりと戦略戦術を立てることができます。これは武器として強いです。

出店後のマーケティング施策最適化にも有効な「人流調査データ」

店舗開発御担当としては、ここまで御覧いただいた[立地評価]や[競合分析]に役立つ人流調査に興味があるのでは、と思います。ただ、出店後の人流調査データの活用法を頭に入れておくと、その後の社内でのデータ連携などがスムーズになり、より活用できる幅が広がっていくのでご紹介します。

たとえば、大型商業施設の中の1店舗について人流調査データを取ろうとした場合は、ビーコンやBluetoothを用いてデータを取る方法が主流です。
これにより、お客様がどのような動線で店舗内を回遊しているかを把握し、それに応じた商品陳列やサービス提供などで活用されています。たとえば特定の商品がよく売れる場所や時間帯を特定し、その情報をもとに在庫管理やプロモーション戦略を調整することができます。

また特定のイベントやセール期間中の人流データを収集・分析することで、その施策がどれだけ効果的だったかを評価できます。この情報は今後のマーケティング戦略にフィードバックされ、より効果的な施策に繋げることができます。

ここまで御覧いただいた様々な調査方法は、人流調査によって得られるデータを活用し、店舗開発や運営戦略において競争力を高めるための重要な手段となり得ます。

実際に「人流調査」を行う方法

実際に「人流調査」を活用するためには、調査分析の目的を明確にしつつ、提供されるデータの種類や分析サービス内容を明確に把握することが重要です。

データを取得するには、以下の2つの方法が一般的です。
1. 多くの企業が提供する「人流データ分析サービス」と契約する
2.「プロジェクト単位の分析を行える会社」と契約する

1.の場合は年間コストが150万程~500万円以上と幅があります。分析スキル向上サポートを受けることも可能ですが、基本的にはデータ分析を自社で行います。
2.の場合は調査課題を伝えて分析を依頼する形となりますが、依頼できる会社は意外と少なく、コスト感も低額から高額までマチマチです。

「人流調査」を店舗開発業務に有効活用し、あなたの武器にされることを期待しております。