長引くコロナ禍ですが、
出店意欲の高いテナントも登場しています

緊急事態宣言、テナント経営への影響は避けられない

2021年1月8日から続いている緊急事態宣言。対象地域は首都圏の1都3県から、14日からは、栃木県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県とエリアが拡大し、飲食店に対する営業時間短縮要請、外出自粛の要請、テレワークの推進などが行われています。飲食店を中心にテナント経営は厳しくなっており、賃料の減額要請や滞納リスクなど、不動産経営でも大きなテーマのひとつです。

退去後の募集も難易度が上がる

営業は20時まで、酒類の提供は11時から19時までという要請は、上記の対象地域に限らず、各都道府県知事からの要請として踏襲されています。例えば、クラスターが年末に発生した広島市では独自に、飲食店や喫茶店・カラオケ店の営業を20時まで、酒類の提供は11時から19時までとしています。この状況下では全国で飲食店などの経営は厳しく、仮に閉店となった場合も、新規開店は難しいのでは無いかと思うのは当然の社会情勢といえるでしょう。しかし、オーナーの立場で考えると、店舗が撤退すれば賃料収入が途絶えます。次の募集をなんかとかしてほしい、というオーダーが不動産会社に寄せられるのは当然のことだと思います。

実はマクドナルドのような業績好調の企業も存在する

テレビ報道などを見ていると、コロナ禍で飲食店は全部厳しい、物販も大変だ、テナント物件の空きが埋まるわけがない、とステレオタイプに感じてしまうかもしれません。
しかし、例えば日本マクドナルドホールディングスは、2020年の業績が1~6月で前年比2.0%のプラス、第3四半期累計(1~9月)でも1.8%のプラス。営業利益は、前年比17.8%。四半期純利益は21.0%増です。多くの外食チェーンがコロナ禍での来店客減に苦しんでいる中、ドライブスルーなどで好調。独自の宅配サービスやUber Eatsを利用できる店舗を9月末時点で1301店舗にまで拡大するなど、「コロナ禍での対応」にシフトしています。

ドミノピザの出店意欲

日本国内でドミノピザを展開する「ドミノ・ピザ ジャパン」社ですが、2008年に100店舗台だった店舗数は、2019年11月には628店舗にまで伸ばしました。そして、コロナ禍でもその出店意欲は衰えず、2020年10月現在では712店舗まで拡大しています。
もともと、「デリバリー」を重要な事業戦略としていた同社は、スマホ対応なども早く、このコロナ禍でも出店意欲は顕著です。2021年2月25日には北東北で初の出店となる「ドミノ・ピザ三沢堀口店」を出店するなど、エリア拡大も継続しています。

厨房だけのゴーストレストランも

また、ステイホームでテイクアウトやデリバリーが進む中、だったらテーブルやカウンターは不要と、割り切った店舗も出ています。都心のオフィス街はテレワークが進み、ランチでの飲食や仕事終わりの一杯という機会が減ったため、完全に「お弁当屋さん」として業態変更をしているお店もあります。
中には、「サラダ専門店」「唐揚げ専門店」「タピオカ専門店」として複数の業態で登録し、実態はひとつの厨房で調理し、Uber Eatsなどで配達してもらう「ゴーストレストラン」なども登場しています

「高級食パン」が人気に

こうした、テイクアウトやデリバリーというニューノーマルだけでなく、小さな間口でこそ成功する「高級食パン」もブームとなっています。ベーカリープロデューサーの岸本拓也さんは、「考えた人すごいわ」「くちどけの朝じゃなきゃぁ!!」「題名のないパン屋」「アゴが落ちた」など奇抜なネーミングな高級食パン店をいくつもプロデュースしています。都心ばかりで無く、新潟県上越市の「おい!なんだこれは!」、静岡県袋井市の「夜にパオーン」、北海道網走市の「パンダが笑ったら」、山形県山形市の「許してちょんまげ」など、様々なエリアで話題に。コロナ対策で入店を絞ることで、かえって、このコロナ禍でも行列が出来て「並んでも買う」という話題性で成功しています。

飲食店だけでなく様々な業態の中で、出店意欲が

こうした、新しい勢力は飲食店以外にも存在します。例えば、インバウンド狙いで中国語や韓国語で店の案内もしていたという家電業界は、いわゆる爆買いブームがコロナで止まり、苦境になっているとも聞きます。ところが、2021年3月期のヤマダ電機の連結業績予想は、売上前年比+3.0%、営業利益+60.5%と好調です。店舗が郊外にあるヤマダ電機は、インバウンド需要よりも、そもそも地域の居住者がターゲット。そして、外出が制限され、自宅にいる消費者の来店が増えます。またテレワークが進むことで、パソコンや関連商材の需要が増加したり、給付金や持続化給付金で家電を買うという購買行動も追い風です。
ニトリホールディングスが、島忠の株を公開買い付けするなどの報道もありました。コロナ禍ですべての企業が消極的となっているわけでなく、実はこれを機会に積極的に展開する企業もあるのです。

「あの立地が空くのなら出店したい」というテナントもいる

実は、「そこが空くなら移転したい」というニーズもあります。
例えば、駅前立地で、月150万円でテナントを借りていたものの、コロナ禍で経営が厳しい。このまま150万を常時払い続けるよりも、より安い賃料の場所で出直したいというニーズもあるかもしれません。逆に、駅前の好立地が空くのであれば、そこで勝負をしたいという大手チェーンやテナント企業もあります。

街の新陳代謝、活性化も不動産会社のテナント担当者の使命

このように「こんなご時世だから募集しても入居が決まらない」とテナント物件で諦めてしまってはいけません。こんなご時世だからこそ、むしろ健全な新陳代謝も必要です。愛する街を元気な街にするためにも、広くニュースなどに関心を持ち、世の中の明暗双方に関心を持ち、広く募集し、そうしたテナントとの人脈形成をしていく事も、不動産会社のテナント担当者として必要なのでしょう。