(2)運用の調整

商業施設の屋上で貸農園を営業するケースは国内でも数が限られています。前例がほぼない中、マチノマ側でもさまざまな試行錯誤を続けています。

1. 飛散物の対応

防災・安全上の観点より、常に什器を固定したりブルーシートで保護するなどの対応をしています。特に台風シーズンの前には、施設とテナントとが協力して事前に入念な対策をしているそうです。

2. ルーフドレンの対策

コンテナ栽培の場合、地面に土が落ちたり飛散することはほぼありませんが、土や砂が排水口に流れないよう対策は欠かせません。例えば、ルーフドレン(※)には網目が細かいネットを付けて排水口が土や砂で詰まらないよう工夫をしています。

※ルーフドレンとは、屋上やベランダから雨水を排水するために取り付ける金物のこと。砂やごみが排水口の中に入りこむのを防ぐ役割がある。

また、土の付いた道具を洗う手洗い場には、砂を溜めるトラップを付けています。

万が一、土や砂が溜まって流れてしまうと雨水槽の清掃に支障が出かねない為、特に念入りに対策をしている。

3. 照明の調節

来館者が安全に利用できるよう、屋上駐車場にはたくさんの外灯が設置されています。しかし本来暗いはずの夜間に野菜に照明があたると、うまく育ってくれません。
そのため、駐車場への通行動線に支障がない場所については外灯を消灯し、夜間の暗さを確保しています。

このように、来館者の安全を確保したうえでテナントからの要望をかなえられるよう、その都度対応をしているそうです。

4. 荷物置き場の設置

通常、シェア畑では農業資材や道具を保管するプレハブを設置しています。
しかし、屋上にそれを置くと建築基準法で増築物と判断されてしまいます。
そのため、柵や雨除けのブルーシートを使って資材を保管したり、棚を簡易的な荷物置き場として使ったりするなどの対応をしています。

5. 周辺住宅への配慮

マチノマの場合、至近距離に住宅街や中学校があり、周辺には多くの住民が暮らしています。
そのため、風が吹いても飛び散らないよう培養土の選定に配慮したり、コンテナにネットを付けたりして周辺に迷惑が掛からないよう対策をしています。
また、防鳥ネットを掛けて、住宅街の路上にゴミを漁りに来たカラスが畑を荒らしにくるのを防いでいます。

6. 飛び降り事故の防止

シェア畑には幼児連れのご家族が数多く訪れます。
屋上にはあらかじめフェンスが張り巡らされていますが、子どもの目線から施設を再度チェック。所々に「乗らないでね」など安全を喚起する看板を付けるなど事故を未然に防ぐようにしています。

シェア畑が施設にもたらした効果

2022年9月にシェア畑がオープンしてから約3ヶ月が経ちました。
畑の利用枠は既に1/3が埋まり、栽培可能な野菜が少ないシーズンでのオープンとしては稼働状況は好調です。では、貸主であるマチノマにはどのような相乗効果があったのでしょう?

一番の効果としては、一次商圏にいる住民の来館頻度がぐんと上がったことです。

シェア畑の利用者の中でも、特にマチノマの近くに住んでいる方は「野菜がどれくらい育ったかな?」「そろそろ水やりに行こうかな?」とフラッと立ち寄る方が少なくありません。
このように水やりや除草のために定期的な来館が必要になるので、利用者の来館頻度が自然と上がるそうです。

そして、畑の世話をしにきたついでにフードコートで食事をしたり、スーパーで買い物をしたりするなど、施設への波及効果が表れはじめているといいます。

さいごに

近年、私たちの生活意識が変わるにつれて地域コミュニティーの大切さや、健康・食への関心の高まりを実感する機会が増えたように思います。マチノマのシェア畑がこれだけ盛況を博しているのも、その証といえるでしょう。
“地域コミュニティーを創出する商業施設”をコンセプトに掲げるマチノマとしても、このシェア畑が地域住民の集いの場、縁を繋げるきっかけになってくれるのではないかと期待を寄せています。

マチノマ大森 外観

施設概要

施設名称
マチノマ大森
住所
東京都大田区大森西3丁目1−38 マチノマ大森
営業時間
施設全体 8:00~24:30
ライフ  9:00~24:00
各専門店 10:00~20:00
マチノマキッチン 10:00~21:00
開業
2018年11月
店舗数
37店舗(2022年10月末現在)
公式HP
https://machinoma.jp/

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