こちらから、あえてヒアリング。
便乗には注意しましょう

「家賃を減額してほしい」テナントの声に耳を傾けて

月末、今回は中華料理屋と洋服店、居酒屋さんが滞納か。あ、塾とクリーニング屋さんも滞納か。困ったなあ。管理担当者の頭を悩ませているのは、入居テナントの賃料滞納だ。昔から入居している飲食店や物販の店舗が多いと、なかには家賃保証会社がついていないケースもある。昔からちゃんと家賃は振り込んでくれている飲食店だから安心、と思っていたらこのコロナ騒動。督促を行う管理会社としては悩ましいものです。

こちらから、あえて状況をヒアリングしてみる

電話をしても、営業は夜スタートというテナントもいます。賃貸管理会社にとっては、そのテナント経営者を電話で捕まえて「賃料、遅れていますよ。払ってください」と言っても、なかなか捕まらない。「今、お店忙しいから後にして」で「忙しいなら払ってよ」といった具合。
ここは、「賃料の支払いが滞ってから連絡する」のではなく、一度、日中から、テナントに「日頃お世話になっています。○○不動産です。コロナですが状況はいかがですか?」と電話をかけてみる。これまでは「それでもなんとか頑張っていますよー」と言っていた店舗も、これだけコロナ禍が長引くとダメージも大きいものです。「久しぶりに状況のご確認で電話をしたのですが」と聞くと「実は、年末年始のかき入れ時なのに予約キャンセルが続いていてね」と状況をお聞きすることができるかもしれません。であれば、「行政の制度で、家賃を補助してもらいましょう」といった話もこちらから事前に提案できるかもしれません。

もっと前に声をかけていれば

「賃料振り込みが滞っていたので連絡したら夜逃げしていた」となると、最悪です。なぜなら、「行方不明」なだけで、まだ解約はしておらず、厨房には道具や設備も入ったままです。契約解約や退去通知はありませんから、公開型の募集広告は出せません。また、設備などの残置物にも手をつけられません。すなわち、「当日発覚した滞納」だけでなく「これから募集して新たな入居テナントを獲得出来ない故の今後の損出」がのしかかります。
まして、不幸にも思い詰めて、店舗で自らの命を・・・、となると、もちろん事故物件。しかも、保証人・相続人を探して、賃貸契約の解除や残置物の廃棄合意をもらわねばなりません。そして、いわゆる「事故物件」となり、オーナーも管理会社も、ずっと困ってしまいます。
だからこそ、「家賃振り込んでいただきありがとうございます。今、状況はいかがですか」と確認をすべき時なのです。手遅れになる前に、日頃から、「コミュニケーションは密」にです。

報道で「賃料がバーゲンセール」と思う便乗犯も

さて、苦境が続く状況ですか、マスコミの報道では「飲食店を経営しているが賃料が払えない」「どこそこのビルでは賃料が減額された」「今は、賃料が払えない人がいても当たり前。オーナーさんは日頃、不労所得があるんだからこんな時には我慢しろ」「大手のショッピングモールでテナント代が減額された」「大手ハウスメーカーが賃料3ヶ月分を猶予した」など様々な情報が流れています。
こうした報道を見て「おっ、別に困っていないけど、今なら賃料下げてもらえるかな」「ちょっと滞納しても目をつぶってくれるかな」と思う人もいるのです。
いわば、便乗犯。景気も悪いといえば悪いし、「テナントの賃料下げてもらえるんでしょ」とアプローチしてくる人もいます。これは、賃貸管理会社にとっては、業務負荷が上がりますし、オーナーとしても避けたい。
見極めは難しいけれど、これも日常のコミュニケーションが大切、本音をどれだけ聞けているかは鍵なのでしょう。

交渉代行人サービスにご注意

そして、困った事に、「家賃減額交渉人」「今なら下げ時」「あなたに変わって、減額交渉します」「着手金ゼロ・下がったら成功報酬で下がった分の25%ください」というような困ったビジネスもあるようです。とんでもないですね。
まだ判例はないのですが、こうした代理交渉は、「弁護士しか出来ない」ので「非弁行為」であると解釈する事も出来ます。少なくとも「契約者本人以外との交渉には応じません」というスタンスが良いと思います。

テナントを守り、オーナーも守る

コロナ禍で、仮に、「店を閉める」となれば「次のテナント誘致も難しい」ということは想定されます。できれば、賃料の支払い猶予や減額などをオーナーに呑んでいただき、事業継続してもらいたいと考える不動産会社は多いでしょう。行政からも賃料補助の制度はありますので、そちらを案内することで、オーナーのマイナスも抑えられるかもしれません。
一方で、不幸にも「お客様が感染者だった」といったことも起こりえます。すると「風評被害で客足が途絶え、もう経営できない」というお店も出ています。
なんとか事業継続を模索する一方で、次の入居希望テナントを探す。オーナーを守り、街を守ることも不動産会社の大切な仕事です。管理と仲介の垣根を越えて、テナントリーシングは今、重大な局面を迎えています。今こそ、全国のテナントを扱う不動産会社の仲間たちと共に会社や地域の垣根を越えて、情報共有していくべきなのです。