レジでもテナントでもなんでも満室にして
仲介も管理も出来る会社が地域を守る

「テナント管理をしてなくて良かった」、コロナで耳にする不動産会社の声に違和感

2回目の緊急事態宣言下、飲食店を中心にテナント経営は厳しくなっており、賃料の減額要請や滞納が続いています。こんな中、耳にしたのが「いや、うちの会社は居住用の物件を仲介も管理も得意にしていてね。やってなくて良かったよ」という声です。たしかに、不動産には土地もあれば、オフィスもあり、売買もあれば賃貸もあり、得意不得意は会社によって様々です。月極駐車場が得意な会社もあれば、民泊で稼いでいる会社もあります。
「テナント物件を扱っていなくて良かった」という声は、「テナント物件」の部分を、例えば「民泊」と言い換えても、コロナ禍では厳しい状況です。「学生物件」「法人物件」と言い換えても、オンライン授業やテレワーク対応でコロナの影響があり、明暗はあるでしょう。

テナント物件を避けて地域で「頼りになる」のか

「運良くテナント物件が少なくてね」という発想の前に、「テナントを避けていて、地域での信頼を勝ち取ることが出来ているのか」という視点に立ってみましょう。どんな街にも飲食店があり、洋服屋さんもスーパーもあります。商店街もあるでしょう。
人が集まる「街」は、「職場」と「住居」だけでなく、「飲食や物販」があって発展するものです。戦国時代では、職場である田畑と、住居である長屋だけでなく、楽市楽座といった商業によっていかに栄えるかが、重要な経済活性化の鍵でした。それは今でも変わりません。
特に地域密着企業であればこそ、テナント物件の仲介や管理を避けていては地元の信頼は得られないものです。

サザエさんの「花沢不動産」、ドリフのコントの「志村不動産」

テレビドラマで「不動産会社」というと、比較的「悪役」であることが多いものです。時代劇では悪代官、現代のサスペンスでは不動産会社が、事件の黒幕というイメージもあり、不動産業界の人気が高まらない事の一因でもあります。
そんなテレビの世界でも、サザエさんのかつおくんの友達である「花沢さん」の家は不動産会社です。かつおくんが遊びに行ってラーメンをすすっていたりするシーンが目に浮かびますが、あるべき不動産会社は、地域の商店街のご意見番で、昔から街を守ってきた雄。地域の祭りで神輿を担ぎ、商店街のいざこざもよく知っている。そんな理想的な不動産会社像が目に浮かびます。当然、「そこの横町に出たラーメン屋さんは、うちが見つけた建物でね」なんて会話が自然にでてくる世界。花沢不動産が「テナント物件はやらないよ」という姿はなかなか想像できません。ドリフのコントが不動産会社のシーンであっても、やっぱりカフェのマスターが訪ねてきたり、美容室を開きたいという女性が訪ねてきたりというシーンがイメージしやすいもの。不動産の原点は「なんでもやる」だったはずなのです。

オーナーはレジもテナントも持っている

さて、管理ではどうでしょうか。テナント物件の管理も設備が特殊であるなどの事情があり、難しさがあがります。「テナントの仲介は頼まれればするけど、管理は受けないようにしている」という会社もあります。
しかし、オーナーからすれば、ラーメン屋さんを開いていようが、居住していようが、収益物件としての資産性は変わりません。テナントに向いた立地なら、テナント物件にして、住宅街なら居住用のレジデンスと、建物の用途よりも、いかにちゃんと利回りが回るかという視点です。
となると、仮に、テナント物件と居住用物件の2棟を持っているオーナーであれば、「あの不動産会社はテナントが苦手」「こちらの不動産会社は両方出来る」となれば、当然、両方出来る不動産会社にお願いしたいと思うものです。
むしろ、難易度の高いテナント物件の仲介・管理を、えり好みせず、しっかり行う事が、地域オーナーの信頼を獲得し、地域密着企業として末永く経営が安定していくのではないでしょうか。

1階がテナントで、2階が居住用という物件も

また、県庁所在地などの中心部や、都心部では1階がテナントで、2階以上が居住用という物件も少なくありません。郊外でもコンビニなどが沢山あります。こうしたケースでも「2階以上の居住用の管理だけ行います」という不動産会社も存在します。しかし、「建物」は一緒ですから、配管トラブル、エレベーターやエントランスの管理、あるいはゴミ問題など、「棟」として管理をしてほしいというニーズは、当然、所有オーナーにはあります。
建物をまるごと管理して、建物価値を高めていく、という発想になると、「1階のテナントが決まらないので、なんだか寂しげで、2階以上も決まらない」「テナントの臭いや音の問題で、2階以上の居住者とのやりとりが発生する」などという事態でも「我が事」として管理が一元化出来るものです。こう考えると、テナント管理も対応してこそ、管理会社たる業務責任を果たせるとも言えるのです。

管理戸数拡大でマーケットシェアを獲得するためにも

現在、賃貸業界は、仲介だけでなく、管理物件を増やしていくことが会社の安定化につながると、みな積極的です。賃貸仲介は、閑散期と繁忙期の売上の差が激しく、売買仲介は、金利や景気、あるいは金融施策などの外部要因で売上の幅が大きくなります。
加えて、「○○くんが独立した」「△△さんが退職した」という事に仲介業績は左右されがちでもあり、毎月安定した収入が得られる賃貸管理は、不動産経営では重要です。
そこで「管理物件拡大」を掲げると、「ほかの会社があまりやらない分野に出る」のは有効な施策です。テナント物件や月極駐車場などはまさに、居住用に比べるとライバル管理会社が少なく、管理物件拡大戦略では地域によってはブルーオーシャンかもしれません。
「○○市内の賃貸管理でシェアをあげたい」といったビジョンや、もっと小さく、「この横町からあそこの大通りまでは、うちの物件を多くしたい」といった目標でも、マーケットでの占有率をあげようとすれば、「テナント物件も加えて」こそ、地域でのドミナントを獲得し、影響力を持つことが出来ます。

社員のキャリアアップのためにも

そして、テナント物件の仲介や管理を取り扱う事は、実は、従業員にとっても取引の単価が大きく、そのテナントの業態を勉強する機会ともなり、居住用にはない経験を積むことが出来ます。
どうしても賃貸仲介・管理・売買仲介等の仕事だと、永年勤める社員の中には慣れが出てしまったり、飽きてしまったり、あるいは独立してしまうケースもありえます。ここにテナント、あるいは法人、あるいは土地活用、分譲といった仕事が加わると、経験の幅が拡がり、キャリアアップやモチベーションにもつながります。
このように考えると「テナントをやってなくて良かった」ではなく、「このコロナ禍だからこそ、ピンチはチャンス。テナント『も』やって、地域貢献する」のではないでしょうか。