そもそも事業用定期借地権とは?

特徴①
使いみちは事業用だけ!

事業用定期借地権が設定された土地は、店舗やオフィス、工場などの事業用の目的だけに使いみちが限定されます。賃貸マンションやアパート、住居などの居住物件は、たとえ投資目的だとしても建てることができません。
そのため、人が住むには不向きなロードサイドや、交通量の多い幹線道路沿いの広大な土地にショッピングモールやファミレスなどの商業施設や店舗を建てる際によく用いられます。

特徴②
契約期間は10年~50年未満

契約できる期間は、10年以上50年未満と定められています。
そのため、将来的な土地活用のプランや事業計画に応じて契約期間を定めることができます。

特徴③
必ず公正証書で契約する

事業用定期借地権の契約は、必ず公正証書でしなければなりません。
公正証書以外の契約書では無効になります。
一般的な契約書に比べて時間や費用はかかりますが、公正証書にはより強力な証拠力があるため、トラブルを未然に防ぐことができます。

他の定期借地権とは何が違うの?

そもそも「定期借地権」とは、契約期間が終わると土地が必ず返ってくる借地権のことです。そして、定期借地権には事業用定期借地権を含めて全部で3種類あり、それぞれに特徴があります。

①事業用定期借地権②一般定期借地権③建物譲渡特約付借地権
契約期間10年以上30年未満、
30年以上50年未満
50年以上30年以上
土地の利用目的事業用だけに限る制限なし制限なし
契約書式必ず公正証書で契約公正証書等の書面により契約規定なし
契約期間が満了した場合期間満了で終了
更地にして返還
期間満了で終了
(更地にして返還)
貸主が建物を買い取る
建物買取請求権原則なし原則なしあり

オーナーにはどんなメリットがあるの?デメリットは?

土地を貸し出すオーナーにはどんなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

メリット

建物を建てずに地代収入が得られる

ショッピングモールやスーパーマーケットなど店舗物件を建てるには莫大な建設費がかかるだけでなく、テナントが撤退した後の空室リスクが常に付きまといます。
しかし事業用定期借地権ならば、建設だけでなく修繕、撤収までテナントが費用を出してくれるので、オーナーは初期投資や空室リスクを回避することができます。
つまり、自分で物件を建てて賃貸するよりも、低いリスクで地代収入を得ることができるのです。

契約期間を選ぶことができる

契約期間が10年以上50年未満のため、土地活用計画やライフプランに応じて期間を設定できます。

短期で契約するメリット:一般定期借地権(50年以上)や建物譲渡特約付借地権(30年以上)に比べて比較的契約期間が短いと言えます。短期運用を考えているオーナー向きです。

長期で契約するメリット:30年以上50年未満の場合には、特約を付ければ契約更新と建物買取請求権をなしにすることができます。※契約期間が10年以上30年未満の場合には、契約更新も建物買取請求権もありません。

テナントの撤退リスクが低い

物件の建設費が高くなればなるほど、初期コストの回収に時間がかかります。事業用不動産の新築には莫大な資金が必要になるため、万が一テナントの営業状況が悪くなっても、簡単には閉店することはないはずです。つまり、撤退する可能性が低いといえるでしょう。

相続税が軽減できる

借地権は相続税の課税対象ですが、定期借地権の場合には、その残存期間に応じて相続税評価額が減額されるというメリットがあります。

デメリット

用途が事業用だけに限定される

商業施設やオフィス、工場など利用目的が事業だけに限定されるので、事業用定期借地権に向いている土地は限られてしまいます。また、住居と違ってある程度まとまった敷地面積が必要になるケースがほとんどです。

テナント倒産のリスクがある

契約中にテナントが倒産し、建物がそのまま残されてしまった場合、オーナー負担で建物を解体しなければならないかもしれません。
ただし、建物はテナントの資産なのでオーナーの意思だけで撤去工事や売却することはできず、法的な手続きが必要になる可能性もゼロではありません。

中途解約ができない

契約中は、オーナー側から中途解約することができません。
特約があればテナント側から中途解約することはできますが、オーナーは特約を設けたとしても認められません。
長期間、土地を貸しても将来的に問題が発生しないか、契約段階で確実な計画を立てる必要があります。

固定資産税等の減税がない

土地の所有者には毎年、固定資産税や都市計画税がかかります。
その土地に住宅やアパートなどが建っていれば住宅用地と見なされ、面積に応じて固定資産税が最大1/6、都市計画税が最大1/3に軽減される優遇制度を受けることができます。
しかし、事業用地はこの減税制度の対象から外れてしまいます。

テナントにはどんなメリットがあるの?デメリットは?

土地を借りるテナント側のメリットとデメリットを見ていきましょう。

メリット

希望通りの物件が建てられる

土地も建物も理想通り!なんて物件を見つけ出すのは、かなり難しいですよね。
建設費が自己負担である点を差し引いても、使い勝手の良いオーダーメイドの物件を建てられるのは大きなメリットです。

デメリット

建物がテナントの資産になる

建物がテナントの資産になるということは、修繕や管理、撤去などの費用も負担しなければならないということでもあります。
ちなみに、事業用定期借地権と比較されることの多い「建設協力金方式」の場合、建物の所有者はオーナーになるため、修繕や管理、撤去などの費用はオーナーが負担してくれます。

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更地にして土地を返さなければならない

契約満了時にはテナント側が建物を撤去して更地に戻し、土地を返還しなければなりません。そのため、解体費用を最初から想定しておく必要があります。

まとめ

事業用定期借地権は、低リスクで長期間地代収入が期待できるのがオーナーにとって何よりのメリットでしょう。また、テナントとしても、希望通りの物件を建てて長年同じ場所で営業できるのは魅力的です。オーナーとテナント、お互いにとって良い選択となるよう、メリットとデメリットをよく理解して商談にのぞみましょう。