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知識・ノウハウ
貸店舗の敷金・礼金・保証金・権利金の違いや相場を、わかりやすく解説!
公開日:2023年8月4日
「敷金に、礼金、保証金、権利金…。それらの名前はよく耳にするけど、それぞれの違いや相場については実はあまりわかっていなくて…」
賃料以外にかかるこれらのお金については、物件や地域ごとにも違いがあり、テナント企業のみなさんも頭を悩ますことがあると思います。
ということで、今回のコラムではそれぞれの意味の違いや相場に加え、貸店舗契約時の注意点に至るまで、わかりやすく解説していきます。
敷金・礼金・保証金・権利金とは? それらの違いを解説
「敷金」の意味と役割
敷金とは、借主(テナント)が貸主(物件オーナー)に、賃料などの債務の担保として預けるお金のこと。テナントによる賃料の不払いや未払いの補てん、物件の汚損・毀損(傷や汚れ)等の修繕、原状回復などに使われます。ただし、事業用物件だと借主側で原状回復を行うことも多く、他に債務の精算がなければその際は、敷金は全額返却されます。
「礼金」の意味と役割
礼金とは、借主(テナント)が貸主(物件オーナー)に、賃貸借契約が成立したことに対する「お礼」として支払うお金のこと。返還されることがなく、その点は、下で説明する「権利金」と似ていますが、違うのは「対価性がない」ということです。つまり、何らかのメリット(権利)の対価としてではなく、純粋に「お礼」として支払われる金銭である、というのが大きな特徴です。
「保証金」の意味と役割
保証金とは、借主(テナント)が貸主(物件オーナー)に、賃料などの債務の担保として預けるお金のこと。原状回復工事の費用にも充てられます。物件の状態が良好で賃料の滞納がない場合、基本的には、他に債務の精算がなければ保証金は全額返金されます。つまり、「敷金」と用途はほぼ同じですが、西日本でより一般的です。ちなみに、入居時に工事を伴う店舗物件については、テナントが原状回復費用を出せなかった場合のリスクを考慮し、保証金が高額になる傾向にあります。また、業種によっても額が変動することがあります。
※関西地方では、マンションなどの住宅用の賃貸物件でも、「敷金」ではなく「保証金」名目で入居時にお金を預けるのが一般的です。
「権利金」の意味と役割
権利金とは、借主(テナント)が貸主(物件オーナー)に、「権利の設定の対価」として預ける賃料以外のお金のこと。「権利の設定の対価」というのは、簡単に言えば、その物件を借りることで借主が得られるメリット(有利な立地、集客力など)のことを意味します。事業用不動産の賃貸借契約を結ぶ際に支払うものですが、法的な根拠はなく、一種の商習慣として定着しているものです。そして、権利金は基本的には返還されることはありません。
敷引きと償却(敷金償却)の基本知識
ここまででも様々な種類のお金がありますが、さらに混乱させるものとして、「敷引き」や「償却(敷金償却)」というものがあります。一つ一つ、見ていきましょう。
敷引きとは?
敷引きとは、賃貸借契約時に、借主(テナント)が貸主(物件オーナー)に支払った保証金(敷金)から差し引かれるお金のこと。未払い賃料の補てんや原状回復の費用として差し引かれます。「敷金」とは違い、返却されることはありません。例えば、「保証金(敷金)が賃料の6ヶ月分、敷引が賃料の3ヶ月分」という契約の場合では、実質に返還される保証金(敷金)は賃料の3ヶ月分ということになります。契約時に、保証金(敷金)から差し引かれる金額が提示されており、返金額をあらかじめ把握できるのはメリットですが、原状回復費用が敷引きで設定されている金額を超過した際などには、追加請求されるケースもあるので注意が必要です。ちなみに、敷引きは、西日本の賃貸借契約における、独特の商慣習です。
償却(敷金償却)とは?
敷金償却とは、賃貸借契約時に、借主(テナント)が貸主(物件オーナー)に支払った保証金(敷金)から差し引かれるお金のこと。「敷引き」と似通った性質のものですが、「敷引き」が原状回復費用に充当されるものである一方、「償却」は原状回復に充てられない場合がある、ということです。例えば、「敷金が10ヶ月分、敷金償却が解約時1ヶ月分」という契約の場合、原状回復の必要がないほど綺麗な状態で退去したとしても、賃料1ヶ月分は請求されるということ。西日本の商習慣で、賃貸借契約の特約事項に書かれていることが多く、退去時に「敷金が返還されない」とトラブルになる可能性もあるので、注意が必要です。
貸店舗契約に係るお金のまとめ、契約時の注意点
それぞれのお金の違いと相場感を把握しよう
今まで解説してきたことを表でまとめると、以下のようになります。同時に、相場もまとめておきます。
敷金 | 礼金 | 保証金 | 権利金 | 敷引き | 敷金償却 | |
---|---|---|---|---|---|---|
意味 | 債務の担保として 預けるお金 |
契約のお礼として 支払うお金 (対価性なし) |
債務の担保として 預けるお金 |
権利の対価として 支払うお金 (対価性あり) |
債務の担保として 保証金(敷金)から 差し引かれるお金 |
保証金(敷金) から差し引かれる お金に関する特約 |
返却 あり/なし |
あり ※原状回復 差し引きの上 |
なし | あり ※原状回復 差し引きの上 |
なし | 敷引き分はなし | 償却分はなし |
地域制 | 東日本 | 東日本 | 西日本 | ー | 西日本 | 西日本 |
相場 | 賃料の 3~12ヶ月分 |
賃料の 1~2ヶ月分 |
賃料の 3~12ヶ月分 |
ー | 賃料の 2~3ヶ月分 または保証金 10~20% |
賃料の 2~3ヶ月分 または保証金 10~20% |
発生タイ ミング |
契約時 | 契約時 | 契約時 | 契約時 | 解約時 | 解約時 |
契約におけるお金のトラブルを回避するために
借主(テナント)にとって、貸店舗物件の契約時に預けるお金は、実質的な店舗運営にかけるランニングコストとは違い、“資金を寝かせること”のように感じられるかもしれませんが、貸主(物件オーナー)にとっては、物件の維持・管理に必要な担保となるものです。
とはいえ、契約によっては納得のいかない請求がなされているケースもあるので、退去時のトラブルを回避するためにも、今回取り上げた、敷金、礼金等の意味や相場感などに対する理解は、しっかりと深めておくようにしましょう。